2011年4月12日火曜日

コク[扱]・コク[穀・谷]・COCK








センバコキ[千歯扱]








モミスリ



脱穀



黒部峡谷



おんどり







ウチガネ[撃鉄]










コクな話、レベル7
「政府は12日、東京電力福島第1原発について、原子力施設事故の深刻度を示す国際評価尺度(INES)で、最も深刻なレベル7に相当すると発表した…史上最悪と言われた年のチェルノブイリ原発事故(旧ソ連)と同じレベルに並んだ…」(毎日新聞)。




東電や政府当局のこれまでの発表の仕方にたいして、一般市民が「政府当局の発表は、あまり信用できない」と感じはじめました。とりわけ老人たちは、むかしの「大本営発表」のニオイを感じています。動物的・本能的なカンですかね。




「せっかく菅さんたちが一所懸命やっておられるのに、まわりから批判したり、あれこれ注文つけたりするのはコク[酷]だよ」といわれるかもしれません。しかし、もともと国家の危機管理指導者というのは、ザンコクな課題にシゴカレ、民衆にコキ[扱]つかわれるのが宿命です。それがイヤなら、1日も早く選手交代するしかありません。





コク[扱]姿がコク[酷]
さて前回は、カキ[柿・牡蠣・垣]の語音をころがしてみました。今回はコク[扱・穀・谷・酷]の語音をころがしてみます。
たとえば、イネの穂をセンバコキ[千歯扱]にかけ、モミ[籾]だけをコキおろします。これがダッコク[脱穀]作業です。だから、コクモツ[穀物]とは「コク[扱]もの」なのです。
立場を変え、イネの身になってみれば、せっかくのミノリをコキ(シゴキ)とられるのですから、なんともコク[酷]な話です。



コク[穀]もコク[谷]も、コク[扱]姿
現代漢語では、コクモツ[穀物]のことを[谷物]と書きます。ただ単に「同音で、文字の画数がすくないから」ではありません。
コク[穀]は、「固いカラでカコム」姿。コメ・ムギ・アワ・キビ・マメなどの穀物。モミガラ・サヤなどでカコム・ククル・シゴク姿です。
コク[谷]は、「八字型にカコム」地形。アナ[穴]。両がわを岩壁がカコム・ククル・シゴク姿。また、その中をクグリぬける姿です。
コク[穀]とコク[谷]は、もともと「同じ姿」だから「同音」で呼ばれるだけの話。[谷物]と書いても[穀物] の意味を表わせるというわけです。


コク・コケ・コケル・やせコケル
コキおろされ、カキむしられ、シゴキとられた姿という点では、コケ[苔・鱗]やコケラ[鱗](うろこ)もおなじ姿です。新築劇場の初興行をコケラオトシ[柿落]といいますが、このコケラ[柿]も「コキ[扱]にカケラレ、シゴカレ、うすくなった木片」、つまり屋根ふき用の木材のカケラ。コケラ[鱗]とおなじ姿です。
人間の肉体も、コキつかいすぎると、やせコケて、コケラ・カケラ状態になります。



コク[酷]は、コキ[濃]酒
コク[酷]は、「酉+告」の会意兼形声文字。[酉]は、水や酒をいれるカメ。[告]はツゲルですが、もとは「牛の角に制御棒をククリツケル」姿。つまり、「牛をコキつかう」装置です。コク[酷]は、「コキ[濃]酒が舌をシゴク・ヒッカク」感覚。そこから「残酷・冷酷」などの意味用法が生まれました。コク[梏](手かせ)も、おなじ感覚のコトバです。


コクのある話
料理やお酒について「コクがある」などといいます。それは、「味がコク[濃]、舌の味覚神経をコク・シゴクはたらきがある」という意味です。
そんなふうに考えてくると、ヤマトコトバのコク[扱・濃]と漢語のコク[穀・谷・酷]が、音義ともみごとに一致していることが見えてきます。
かなり「コクのある話」になってきました。「世紀の大発見」みたいですが、じつは、一部中国語研究者のあいだでは、なかば常識ていどの話。イズミの独創ではありません。
ただし、ここで「漢語(音)」といっているのは「日本漢字音」、つまり「上古漢語音のカナ表記」であって、現代漢語音ではありません。念のため。



COCKは、もと擬声語
ついでに、k-k音の英語をひろってみます。Cake(お菓子), cook(料理する), cookie(クッキー)などのほか、cock(オンドリ)、cockroach(ゴキブリ)などがあります。
Cock は オンドリ[雄鶏]のことですが、もとはその鳴き声からの擬声語とされています。
そういえば、ヤマトコトバのカケ[鶏]や漢語のケイ[鶏]も、もと擬声語です。ニワトリの鳴き声は東西とも、人間の耳にはk-, k-k音として聞こえていたことがわかります。
Cockには、その生態から「カシラ・親分・大将」、「クサビ型栓」、さらには「(銃器の)ウチガネ[撃鉄]」などの意味用法もあります。擬態語といってよいでしょう。



COCK=コク[扱]もの=コク[穀]
Cockは、ノドをコキつかってk-k音で鳴き、メンドリに精子をコキ[扱]いれ、そのメンドリが有精卵をコキンとコキおとします。やがて、その卵のかたいカラ=カク[殻]をカキやぶってヒナドリが生まれます。この過程は、コクモツ[穀物]をコク[扱]過程とよく似ています。 cockroach (ゴキブリ)がcock-音をもっているのも、古代人がゴキブリの生態を観察して、なにかcockとの共通点を見つけたからかもしれません。

2011年4月5日火曜日

「常識」が交替する時代



カキ[柿]




カキ[牡蠣]




カキ[垣]




カギ[鍵]




カゲ[影]



東電さんの「常識」


「東京電力は3月24日、復旧作業を再開。3号機のタービン建屋でケーブル敷設作業をしていた男性作業員3人が被ばく」(北日本新聞3/25)と報道されました。被ばくしたのは東電協力会社の作業員。東電は「本人の意思を確認しながら作業にあたってもらう」と説明。つまり、東電さんの「常識」どおりにやると、こういう事故が起こるというわけです。 自衛隊や消防庁などが放水作業をした時の装備や作業手順にくらべて、あまりにもずさん。東電さんの「常識」は、世間一般からいえば「非常識」そのものです。


「常識」は変化する


「常識」とは、なんでしょうか?それは、ある特定の社会で通用する、一種の「仮説」です。科学的に証明された「真実」や「真理」とは、別のものです。


「常識」の内容は、時代や地域によって変化します。たとえば、むかしは「天動説」が常識でしたが、いまは「地動説」が常識です。また、日本ではリンゴといえば、赤い色を連想するのが常識ですが、外国では青い色を連想するのが常識というところもあります。


そのほか、家族・職場、あるいは年齢層や規模の大小(巨大企業と零細・下請け企業など)によって、それぞれの常識が生まれ、常識同士でケンカしている現象も見られます。


新旧の「常識」が交替


こんどのように、非常事態が発生して、ふるい常識が通用しなくなることもあります。そんな時には、常識破りの対策が必要になります。 じっさいに被災地が復興するまで、何年かかるか見当がつきません。「一時的・部分的な例外措置」という感覚では、ほんとうの復興計画にならないでしょう。 いまやるべきことは、これまでの「常識」をいちどゴワサンにして、より正確な情報資料にしたがって、必要かつ十分な復興計画を立て、自信をもって実行することです。 日本人はいま、そんなふうな意識変革を求められているのだと思います。そうする以外に、日本列島に住む日本人が21世紀を生きぬく道はなさそうですから。


ここで休憩、頭の体操でも


毎日地震・津波・原発事故のことばかり見たり、聞いたり話したり。だれだって、疲れてくると思います。長期戦ですから、疲れはて、倒れてしまわないうちに、ちょっと休憩したり、かるい体操をしたりすることも必要でしょう。深呼吸・腹式呼吸・頭や手足などの曲げ伸ばしなど。じぶんの体調や場所にあわせて、自己流でやればいいと思います。


やがて、平常心をとりもどし、災害に立ち向かう元気がわいてくることでしょう。


コトバの球ころがしゲーム


ここで、「イズミ流、頭の体操」として、「コトバの球ころがしゲーム」を提案させていただきます。 「コトバの球ころがし」に道具はいりません。辞典もノートも無用。じぶんの頭の中にある辞典だけで十分です。姿勢も自由。寝そべって、目をつぶったままでもできます。


カキって、なあに?


たとえば、そこに柿の実が一つあったとします。以下、自問自答してみてください。


「これ、なあに?」  「それは、カキ」


「カキって、なあに?」  「カキは、くだもの」


「カキって、くだものだけ?」  「貝のカキや、カキネのカキもあるよ」


「まったく別物なのに、どうしておなじ名前なの?」  「…?」


「そもそも、どうしてカキって名前がついたの?」  「…?」


さて、さいごの2問、あなたならどう解答されますか?


カキは、カクこと(もの)


ご参考までに、イズミの解答をしるします。 日本語の「カキ」には、ほかにもカキ[掻・書・描・欠]や、漢語の「下記・夏季・夏期・火器・火気・花器」などがあります。ただし、漢語(外来語)までとりあげると話がややこしくなります。さしあたり、ヤマトコトバだけについて考えることにします。 カキ[掻・書・描・欠]は、もともと動詞カクの語尾母音が-iに変化したもので、連用形と呼ばれます。同時にまた、「カクこと」という意味の名詞形としても用いられます。英語動詞の現在分詞や動名詞とソックリおなじ用法です。⇔write>writing, draw>drawing.


カギ型にヒッカク


動詞のカク[掻・書・描・欠]は、どんな動作でしょうか? すべて「カギ型にヒッカク」姿です。 名詞のカキ[柿・蠣牡・垣]は、どんな姿をしていますか? それぞれ、木の枝や、岸壁や、地面に「カギ型にヒッカク・ヒッカカル」姿です。


そういえば、カギ[鍵]やカゲ[影]も、みんな「ヒッカカル・ヒッカケル」姿ですね。


つまり、「k-k音タイプのコトバは、「カギ型にヒッカカル・ヒッカケル」姿を表わすと考えてよいわけです。


発音と意味の相関関係


それでは、どうしてk-音が「ヒッカケル姿」を意味することになったのでしょうか? 「意味」の定義が問題ですが、ここでは「事物の姿」と考えておきましょう。 k-音を発声するときには、「息の流れが、ノドの奥をヒッカキながら出てクル姿」が見られます。つまり、「音声」(k-)と「発声器官の姿」(カク・キクなど)が、一定の対応関係にあると考えられます。


そこで、k-音語の基本義は「k-音を発声するときの発声器官の姿」ということになります。 以上がイズミ流の解答です。ご納得いただけたでしょうか?頭の体操になったでしょうか? ぎゃくに、頭の中がこんがらかったでしょうか? このメイ[名・迷?]解答は、イズミ個人の仮説によるものです。学界で承認された議論ではありませんし、なんの権威もありません。それでも、やがて公認される日が来るかもしれません。