立山連峰 4/20
タワーくずし 4/23
訪問販売 4/24
カニ・ミソ 4/27
ハルト君のケン玉
ケン玉づくり 4/29
「令和」初日の昼飯ご膳 5/1
音の会 5/1
立山連峰
4月20日(土)。梨の花を見にいった帰り道、めずらしく立山連峰がきれいに見えました。クルマの助手席から、スマホのシャッターを切りました。
タワーくずし
4月23日(火)。午後、「機能訓練」のフロクとして、「タワーくずし」のゲームをしました。テーブルの上に紙コップを伏せた姿で5段ほどの高さまで積みかさね、タワーをつくります。このタワーを目がけて、正面の指定席から、ポケット・ティッシュをすべらせ、タワーをくずすゲームです。ティッシュ一個では軽すぎる感じで、なかなか一発勝負ではきまりません。あまり気負いすぎて、ティッシュがあらぬ方向へ飛んでいったりするところがアイキョウです。
いずれにしても、スタッフのひとたちが、「カネをかけず」、「ありあわせのモノだけ」使って、つぎつぎゲーム(めぐみ版)づくりをすすめておられること、まさに天才的だと感心しています。
訪問販売
4月24日(水)。午後、9fで、パン・ビスケットなど、食品の訪問販売がありました。ホームで生活していると、めったに「買い物」をするチャンスがありません。ママゴトあそびの感覚で、小銭を使ってみることにしました。どれもこれも、おいしそうなモノばかりで、しばらく迷ったあげく、「コクトウボウ[黒糖棒]」と「骨になる奴(食べる小魚)」の2点をえらびました。「コクトウボウ」は、モジどおり、黒糖の棒。わたしの歯(総入れ歯)には、すこしカタすぎる感じもしますが、わたしはこの味がスキです。「骨になる奴」については、「それはコマーシャル。実態は?」とウタガイながらも、「すこしはプラスになるだろう」と期待しています。食べるまえに電子レンジでチンするなど、ヒトテマかけたほうが、カリッとして食べやすいかもしれません。
パソコンの特訓など
4月26日(金)。午前中に入浴。午後2時から、Ysd先生にきていただき、パソコンの特訓第2回。ちょうどワードの原稿が仕上がったところだったので、おそるおそるブログへコピー。そしてプレビューで点検。ほぼ正常な状態と判断できたので、そのまま「公開」することにしました。これでどうやら、今後もブログをつづけてゆけそうで、まずは一安心です。
5時ごろ内科検診。これで、気ぜわしい1日が終わりました。
信子の月命日
4月27日(土)。午前10時半から、長念寺住職志田常無さんにおいでいただき、信子月命日のお勤めをすませました。
午後、西田規子さんが来訪。3月16日の3回忌には出席できなかったけど、どうにか仕事の段どりをつけて、富山へかけつけたとのこと。夕方、藤木さん(Mioriさんのご主人)が運転するクルマで立山町の「鮨処、板はし」へ移動。4人で会食。
規子さんからは、まえに中西進さんの『わかる日本語』
(新潮文庫)を贈っていただいたこともあり、わたしにとっ
ては絶好の話し相手です。あすは、ご主人の尚信さんやハル
ト君にも会えると聞かされ、さらにうれしくなりました。
この日,わたしの体調も順調だったので、ふだんいただかないお酒までいただくなど、よく飲み、よく食べました。寿しもおいしかったですが,さいごに出たカニ・ミソは見た目にもおもしろく、視覚と味覚両方で楽しませてもらいました。
ハルト君のケン玉
4月28日(日)。午後,尚信さんとハルト君が来てくれました。ハルト君は、こんど小学2年生に進級したばかり。いまケン玉あそびにはまっているとのことで、そのワザの一部をヒロウしてくれました。
規子さんから、小学2年の国語教科書もみせていただきました。低学年の国語教科書では、たしかにワカチガキをとりいれているようです。なぜワカチガキにしたのでしょうか?
カナモジばかりでベタガキしたのでは、どこでイキツギすればよいか分からず、読みにくいからです。
せっかくワカチガキをとりいれ、読みやすくしたのですから、そのまま高学年の教科書でもワカチガキをつづけるべきと考えられますが、なぜヤメタのでしょうか?文科省としては、「高学年では、漢字の出番がおおくなり、ひとりでにワカチガキの効果をもたらすので、わざわざワカチガキする必要はなくなる」とお考えのようです。このような国語観・言語観が、まず問題だと思います。
21世紀、令和元年の日本語文を見るかぎり、たしかに「漢字の出番がおおく、ひとりでにワカチガキの効果をもたらす」状況になっています。そこで、文科省当局におうかがいしたいのは、「国語政策として、このさき50年~100年先まで現行の表記法(漢字の出番など)をつづける予定ですか?」という問題です。
朝鮮半島では、韓国でも、北朝鮮でも、数十年まえに漢字を廃止し、左ヨコガキのハングルにきりかえました。漢字の本家中国では、1970年代に「簡体字」(徹底した略字化)を実施。コドモたちは、小学校入学当初から中国語ローマ字つづりを学習し、そのローマ字つづりで漢字の全国共通語(北京語)の発音を習得できるようにしました。同時に、国語教科書をはじめ公文書・新聞・雑誌・単行本などをすべて左ヨコガキに統一しました。こうした情勢変化について、日本の文科省はどのように分析・判断しておられるのか、おたずねしたいのです。世界の中で、日本人だけガ「ハダカの王さま」になっているという心配はありませんか?客観性・合理性のある反論を聞かせていただけますでしょうか?
ケン玉づくり
4月29日(月)。午後、「機能訓練」のフロクとして「ケン玉づくり」に挑戦しました。材料は、古新聞紙1㌻分、紙コップ2個、ヒモ約50㌢、あとはカザリ用着色テープ、接着用無色セロテープ少々。
あつかいやすいよう、新聞紙を2枚に切り分け、2枚ともモミクチャにしておきます。その1枚分をまるめて小さな玉をつくり、その表面にのこりの1枚分をかぶせ、にぎりしめて玉の形をつくります。その玉の内部にヒモの一端を埋めこみ、セロテープで球全体の形を固定します。また、2個の紙コップは、底と底とをつきあわせ、セロテープで接着・固定したあと、着色テープでカザリつけます。できあがったカップの胴体に、ノコリのヒモの一端を結びつけることで、「マイ・ケン玉づくり」の完成です。
その場で、さっそくケン玉を使ってみました。カンジンな玉がすこし軽すぎる感じで、うまくカップにしずんでくれません。その点はザンネンですが、たったこれだけの簡単な作業で、これだけの機能をもつものをつくれるとは思っていなかったので、それだけ大きな達成感を味わうことができました。もし、もういちどチャンスがあるとしたら、こんどは玉用の新聞紙の分量をへらし、小石かアズキでもつめこむことにすれば、ずっしり安定感のある動きになるかもしれない、と想像したりしています。
「令和」初日の昼飯ご膳
5月1日(水)。「令和」元年の初日ということで、「めぐみ」の昼飯ご膳にも「赤飯とテンプラと黄桃羹」がならび、「祝、新元号令和」のカードがそえてありました。
ゴチソウをいただけるのは、たしかにアリガタイことですが、「10連休だ」、「令和元年だ」、「万葉集ゆかりの元号だ」など、お祭りさわぎの毎日ということになると、ぎゃくに「こんなことしとっていいの?」と心配になってきます。
北朝鮮に拉致された人たちを帰国させる問題は、まだ解決のメドが立っていません。全国各地で起こった自然災害の復旧も不十分です。そもそも、日本国内だけでしか通用しない元号(年号)制度は、世界共通の西暦と換算するのにテマ・ヒマがかかるだけ。なんのメリットもないと考えるのですが、まちがっているでしょうか?
こんなことをいうと、「ひねくれた考え方だ」、「年金受給者として、分をこえた発言ではないか?」などと、しかられそうな気もします。しかし、最近の世間の流れを見ていると、昭和のむかし、「天皇」の名前で「一億国民総動員」の号令をかけ、「大東亜戦争」に突入したときの状況と、まるでソックリなことに気がつきます。一度あることは、二度ある…?心配するなといわれても、それはムりです。
いまの憲法では、立法府(国会)・行政府(内閣)・司法府(裁判所)の3権分立となっており、法律公布にあたっては、国会で可決された時点で法律として成立し、そのあと内閣から天皇へ奏上、「御名御璽」を表記することになっています。このばあい、天皇はこれを「表記」することはできますが、「表記を拒否する」ことはできないとされています。「拒否」することは、とりもなおさず「政治に関与する」ことになるので「許されない」とのこと。なるほどと思います。しかし、そうだとすれば、「表記」する行為も同様に「政治に関与する」行為となるはずだと考えられるのですが、どんな論理で「許される」のでしょうか?また、国際法上では、どのような解釈になっているのでしょうか?やがて、ひょっとして日本が「戦争ができる国」となったばあいなど、天皇が「表記」をしないですむ唯一の道は「退位」を申しでることなのでしょうか?よけいな心配と笑われるかもしれませんが、いろんなことが気にかかっています。
音の会
午後2時から、9fで開かれた「音の会」に参加しました。この日の曲目は、「始まりの歌」、「君が代」ではじまり、「鐘の鳴る丘」、「鯉のぼり」、「背くらべ」、「ちゃっきり節」、「みかんの花咲く丘」とつづき、「肩たたき」でオシマイ。季節にあわせて、カブトかざりをもちこんで陳列したり、スタッフを総動員して鯉のぼりの吹き流しを演出するなどのフル・サービスでした。ほんとに、おつかれさまでした。
k-k音語の系譜…日本語の系譜(第3回)
3月9日号ブログで{a-a音語}について報告したあと、しばらく中断しておりました。おくればせながら、今回は「k-k音語の系譜」をとりあげます。
まずは、擬声・擬態語をひろってみましょう。
カアカア・ガアガア・カカ・カッカ・カッカッ・ガッカリ・カッキリ・ガックリ・ガクン・カックン・ガックン・カッコウ・キイキイ・ギクギク・ギクシャク・クッキリ・ゴクゴク・コクリ・ゴクリ・コックリ・ゴックリ・コクン・ゴクン・コケコッコウ・ココ・コゴ。
ご覧のとおり、かなり多数成立しています。これらのうち、カカ(①鳥の鳴き声。②水などを勢いよく呑み込むさま)・ココ(猿の鳴き声)・コゴ(ものをすりあわせる音)などについては、上代語としての用例も見られます。
音形と基本義との対応関係
くどいようですが、あらためて、k-k音語の音形とその基本義との対応関係について確認しておきましょう。
いっぱんにヤマトコトバの単語は、音節・音素の段階まで分析することができ、それぞれ音形に対応した、独自の基本義を表わすことになります。いいかえれば、単語の意味は、「構成要素である音形が表わす基本義の総合」というわけです。
k-k音語のばあいは、これにふくまれる語音がk子音(g,
ng, hをふくむ)と母音だけなので、どれだけ分析しても、他の子音(m, n, p, r, s, t)の基本義がまぎれこむ心配がありません。それだけ、k音が表わす基本義をたしかめやすいという特長があります。
カ行音が表わす基本義
「子音k+単母音」の構造をもつ音節をカ行音と呼んでいます。具体的にいうと、カ・キ・ク・ケ・コ(およびその濁音)、5個の音形に分かれます。5種類の音形にあわせて、5種類の意味が表わされるわけですが、それら全体に共通する意味(事物の姿)を「カ行音の基本義」と呼ぶことになります。
子音k-が表わす基本義…k-を発声するとき、「発声器官に生じる感覚」がそのまま「基本義」となります。具体的に考えてみましょう。肺にたまっていたイキを口からハキ出そうとして、途中ノドにひっかかったが、かまわず一気にハキ出すことで生まれる語音なので、カ行音には「カク(ヒッカク)・キク(キコエル)・「コク(シゴク)」などのイメージがつきまとうことになります。
母音が表わす基本義…ヤマトコトバの母音は、基本的にア・イ・ウ・エ・オ5段にわかれます。音形のチガイは、口の中にたまったイキをハキ出すとき、どんな口形でハキ出すかによって、ほぼ決定されます。話し手の口もとを見ていれば、その口形から、どの段の母音か判断できます。
ヤマトコトバの母音ア・イ・ウ・エ・オは、どんな基本義を表わしているか?ざっと見ておきましょう(『時代別国語大辞典・上代編』による。略称『上代編』。各項、*印以下はイズミの責任)。
ア[嗟]感動したときに発することば。ああ。*ヤ[矢]の威力を見ての感動。
ア[畔]田と田との境として土を細長く盛り上げたところ。アゼの古形か。*ヤ[矢]の姿。
ア[足]足。独立して用いられた例は少ない。⇒アガク[足掻]。・アユヒ[足結]・アブミ[足踏]。*ヤ[矢](イク・ユクもの)の姿。
ア(網)網。単独で用いられた例はなく、すべて複合語を構成する。*ヤ[矢]もしくはワ[輪]の姿。
ア[我・吾]一人称。【考】アレ・ワ・ワレと同類の一人称代名詞。ア・ワに接尾語レがついて、アレ・ワレができた。ア・アレはワ・ワレにくらべて、単数的・孤独的な意のものだとする説もある。*「ヤyaのy-音脱落」、「ワwaのw-音脱落」、ともに考えられる。
イ[胆]きも。*イ[射・入]の姿。
イ[眠・寐]ねむること。ねむり。【考】ねむる意の動詞イヌは、このイに動詞ヌ[寝]が複合したもの。*イ[射]の姿。
イ[汝]二人称。いやしめていう。【考】もともとこのイは反射指示を表わすものであろうとする説がある。*イ[射]の対象。
イ[五十]五十。【考】すべて借訓仮名として見え、そこから帰納されることば。五十の意そのものとして使用された例を見ない。⇒イカ[五十日・烏賊]・イカダ[五十日太・筏]。
*イ[射]の姿。モモ[桃・百]をワリコム姿。
イ 接頭語。動詞につく。⇒イシク[及]・イクム[組]・イムカフ[向]。*イ[射]の姿。
イ 接頭語。斎・忌の意。ユとも。おもに神事に関する名詞について、忌み清めた、神聖なものであることをあらわす。⇒イカキ[垣]・イクシ[串]・イクヒ[杭]・イクミダケ[組竹]。*イ[射・忌・斎]の姿。
イ 擬声語。馬の鳴く声。*イ[射・忌・斎]の姿。
ウ[卯]十二支の第四。【考】月では二月、方位では東、時間では卯の刻(午前六時ごろ)、五行では木に、動物では兎にあてる。子も動物は万葉東歌にヲサギとみえ、中央でも多分ウ・ヲサギの両形があったか。*ウ・ヲサギとも、ワ行音のコトバ。ウ[得・鵜・居・座]の姿。
ウ[鵜]水禽。う。鴨よりやや大形で羽色は黒く、万葉では「水鳥」とも記されている。水中に潜って巧みに魚を捕えてのむので、鵜飼いに用いられる。*ウ音を発声するときは、口をすぼめて発声する。この姿がそのまま「ウ[鵜]がヱサ[餌]をエル[得]」ときの姿勢に通じる。
ウ[居・座](動。上二)居る。すわる。上一段にも活用してヰルとなる。*ウ[鵜・得]の姿。
ウ[得](動。下二)①得る。手に入れる。わがものとする。②補助動詞として、~することができるの意を表わす。*ウ[鵜・居・座]の姿。
エ 感動のことば。エエとも。*アアに近い。エを発声するとき、アゴをマエにツキダス姿になる。ウがヱサをエルときの姿勢に通じる。ア[嗟]の母音交替と考えてよい。
エ[榎]えのき。にれ科の落葉高木。小さな黄赤色の実は甘味があり、鳥や人が食べる。中国の「榎」はエノキとは別。*エ[枝・得・兄]の姿。
エ[荏]えごま。しそ科の一年生草本。実から油をとるために栽培する。インド・中国原産。形態はシソに似て独特の香りがあり、葉は浅緑色。果実は細かく胡麻に似ている。*エ[得・兄・江・枝]の姿。
エ[得](副) ウ[得](動。下二)の連用形に由来し、可能を示す。よく~しうる。*エ[榎・兄・江・枝]の姿。
エ[兄]年上。年長。オトの対。*エ[榎・得・江・枝]の
姿。
エ[江]湾。入江。海や湖の陸に入りこんだところ。*エ
[榎・兄・得・枝]の姿。
エ[枝]本体からわかれ出たものをいう。エダとも。①草木
の枝。②手足。③器物の柄。
エ[役]公用の課役。エタチとも。ア行かヤ行か不明。*自
分の根拠地(自宅など)をはなれ、権力者の命令にしたがってヤラされるシゴト。エタチは、「エ[役]+タチ[立]」の構造。エ[枝・兄・得]の姿。
分の根拠地(自宅など)をはなれ、権力者の命令にしたがってヤラされるシゴト。エタチは、「エ[役]+タチ[立]」の構造。エ[枝・兄・得]の姿。
オ[?]
ここまで、ア行単音節語を見てきましたが、最後のオ音については用例が見あたりません。どうして、オ音だけ用例ゼロなのか?それも問題ですが、そのまえにヤ行・ワ行の単音節語を見ておかなければなりません。
ヤ行の単音節語
ヤ[咄](感動)①呼びかけの語。ヤアとも。②はやし詞。*ヤ
[矢]の姿。
ヤ[屋・舎]家。*[矢]の姿。3本の矢の頂点近くでしばり、
脚を三角形にひらけば、たちまちヤネ[屋根]・テント・イエ[家]の姿となる。
ヤ[矢・箭]①矢。②車のコシキから輪に向かって出る放射状
の棒。*ヤ[矢]の姿。
ヤ[八・弥]①八。②多数。*矢は、いつでも使えるように、
多数まとめて用意されていたことから、「漠然多数」の意
を表わすようになった。ヨ[四]は、その母音交替。
ヤ接尾語。ヤカ・ラカなどと同様に情態性の体言を構成す
る。*ヤ[矢]の姿。
ヤ[弥](副)いよいよ。ますます。イヤ[弥]の約。*イヤ[射
矢]の姿。
ヤ(助)①詠嘆。②疑問。③反語。*イヤ[射矢]の姿。野球で
いえば、牽制球などの姿。
ユ[湯]①湯。熱した水。②温泉。*イヤ[射矢]の姿。熱箭。
熱線。
ユ[弓]弓。複合語を構成している例のみ。アシ[足]のア、ヌ
マ[沼]のヌなどと同類。*矢の発射装置。形状言ユ[斎]の
名詞用法と見てよい。
ユ[斎] 形状言。接頭語的に用いられ、斎み清めた・神聖な
の意を添えて美称をなし、またユユシ・ユマフなどの語幹
となっている。【考】同様の意のイがあり、それにもイツ
[斎]という形がある。ユム[斎]はイムともいう。ユとイと
の転換例は、ほかにもユクーイクなどがある。
ユ(助動下二)動詞の未然形に接続する。①受け身の意を表わ
す。②可能の意を表わす。③自発の意を表わす。
ユ(助)体言、あるいは体言に準じる語につく。①動作の行わ
れるところ、経過するところをあらわす。②動作の起点を
あらわす。③手段をあらわす。④比較の基準となる物、あ
るいは事柄をあらわす。*ヤ音とユ・ヨ音は、語尾母音が
交替関係になっている。y-スル者=ya(矢).
ヨ[夜]よる。ゆうべに始まり、あしたに終わる、暗い時間の
全部をいう。ヒ[日]の対。ヨは複合語を作ることが多く、
ヨルは独立形。*ヤ[矢]の語尾母音交替。イク[行・往]と
ユク[行・往]が語頭母音の交替関係で同義だとすれば、イ
ム[忌・斎]と同義の動詞ユム[忌・斎]を仮設することもで
きそうです。そうなれば、イム[忌・斎]は、もとイム[射
産(埋)](矢を射込む)の姿。ユム[忌・斎]は、もとユム[湯
産](湯を浴びせる)の姿。ついでにいえば、ヒム[秘]は、
もとヒム[日産(埋)]で、「太陽光線を射込む」姿。
ヨ[代・世]①生涯。一生。②寿命。とし。よわい。③年代。
時代。年月の一くぎり。④世の中。世間。この世。【考】
葦・竹等の節間の意のヨと関係ある語であろう。*ヤ[矢]
がユク[行]・ヨル[寄]姿。
ヨ[節]竹や葦の茎の、節と節との間。*ヨ[代・世]と同源。
ヨ[四]複合語構成にのみ用いられ、独立の用法としてはヨツの形がある。*ヤ[矢]とともに「漠然多数」の意を表わす。
ヨ(助)形状言。よいさま。形容詞ヨシの語幹。*モノゴト
の行方がヨイ方向へヨル[寄]・ヨセル姿。
ワ行の単音節語
ワ[輪・曲・勾]①輪。まるい形をしたもの。わがねたもの。
②助数詞。*ワwa音を発声するときの口形が、まるい輪の
形。⇒オモワ[面輪] ・クツワ[轡]・ハニワ[埴輪]。
ヰ[井・堰]井戸。湧き水や流水を堰きたたえて、汲むことが
できるようにしたものもある。*地下水がウキデル・ワキ
デル姿。⇔well(井戸).
ヰ[猪]①いのしし。肉は食用とされた。鹿とともに代表的な
猟獣で、シシといえばこの二つを総括していうのが普通。
*ウヱ[飢]をしのぐ食品。
ヱ[画・画]絵画。字音語か。*グワhueg画hua.//ヱ・クワイ
huad絵hui
ヱ[餌]えさ。*ウヱ[飢]をしのぐ食品。
ヲ[諾](感)承諾や肯定をあらわす応答のことば。*ヲ
[尾]を振って応答する姿。
ヲ[雄・男・夫]メ[女]の対。①おす。②男。③夫。④陽。陰
の対。⑤接頭語的に用いて、勇ましい・男らしいさまを表
わす。*ヲ[尾・緒]の姿。
ヲ[峯]①尾根。タニ〔谷〕の対。②山の小高いところ。峯。
丘。*ヲ[尾・緒]の姿。
ヲ[尾]鳥や獣の尾。
ヲ[緒・絃]①緒。糸状の細長いもの。②楽器や弓のつる。
絃。③細く長く絶えないで続くもの。つながり。④命。生
命。【考】ヲ[麻]と同源。
ヲ[麻・苧]麻。また、麻や苧麻の繊維。*その繊維をつむい
で糸にする。ヲ[尾]の姿。
ヲ[小]接頭語。名詞に冠する。小さくかわいいもの。*ヲ
[尾]の姿。
カ・キ・ク・ケ・コが表わす意味…*「k-子音の意味」と
「各母音の意味」との総合。事物が移動する(ク・クル・
ユク)姿。また、そのときナニかにヒッカカル・ヒッカケ
ル・カツカル姿。
カ[鹿]しか。*角をもつ動物。その角で、カク〔掻・懸・
欠〕・クク〔漏・潜〕コク〔扱〕などの動作をすることに
よる呼び名か。
カ〔髪〕髪。ケ[毛]の交替形か。複合語として、シラガ[白
髪]の語の中に認められるが、カザスのカもあるいはこれ
か。
カ〔梶〕かじ。舟を動かす櫓や櫂の類。複合した例しかみえ
ない。*水をカク[搔]・コク[扱]・コグ[漕]道具。
カ〔瓫〕容器類の総称。ケ[笥]の交替形か。複合した例の
み。
カ〔蚊〕か。*人の皮膚にカブリつき、クヒ[食]コムもの。
カ〔香〕かおり。におい。主として植物の香について用いら
れる。梅や橘など。*鼻からクヒ[食]コム(嗅覚器官を
kickする)もの。
カ〔日〕時間の単位としての日。ほとんどの場合数詞に接し
て用いられる。名詞ケ[日]の交替形。
カ(代名)三人称。カレに同じ。
カ接尾語。場所を意味する。【考】ココ・ソコのコ、イヅク
のクと同源。⇒ウミガ[海処]・オクガ[奥処]・ヲカ[丘]。
カ[彼・此](副)このように。こう。*カ=ka=k-するもの。
カ[歟](助)①自問的な詠嘆。②疑問。③反語。④願望。希
求。*カ=ka=k-するもの。
ガ[蛾]が。糸状または羽毛状の触角をもつものが多く、夜、
燈火を慕って集まる。ヒヒル・ヒムシともいわれたが、字
音語ガも用いられたかもしれない。
キ[酒]さけ。サケが普通で、単独に用いられたキの例は少な
い。【考】キ[酒]は単独では甲類であるが、シロキ[白
酒]・クロキ[黒酒]などと複合語になると、乙類であるこ
とが多い。
キ[杵]きね。【考】接尾語ネを伴ったキネの形が普通だった
のではないか。穀物を臼に入れて舂きしらげるのに用い
た。奈良県唐古や静岡市登呂などから木製の杵が出土。奈
良県三輪からは土製の小型のものが出ているが、これは醸
造に用いたものらしい。すべて棒状で中央部が細くなって
いる。
キ[割]。きざみ目。断絶。複合語もしくは訓仮名の用例の
み。【考】キルはキの動詞化したものか。長さの単位とし
て用いられるキ[寸]も同源であろう。
キ[寸]長さの単位。曲尺の寸にほぼ該当する。もともと食指
の関節の間隔を目安とした単位という。
キ[木・樹]①木。樹木。②植物一般。③材木。
キ[城・柵] 柵をめぐらして区切った一郭。外敵の侵入を防
ぐためのとりで。
キ[棺]人の屍を納める木造のはこ。ヒトキ・ヒツキとも。
キ[牙]犬歯。糸切り歯。象や猪の牙も含む。キ[牙]バ[歯]の
意。
キ[葱]ねぎ。ゆり科の多年生草本。管状の緑色の葉を食用に
した。【考】ネギはネ[根]キ[葱]か。このキの甲乙の決定
はしばらく保留する。
キ[黄]黄色。いまいう黄色よりも、もっと漠然としたもの
で、赤とある程度重なる面があったらしい。単独例はな
い。甲乙不明。*キ[杵・牙]の姿。
ク[句]詩文や歌の部分をなす一まとまりをいう。歌や詩をい
う。*もともと字音語であり、ヤマトコトバではない。
ク[所]場所の意を示す。単独では用例をみない。
ク[消](動下二)①消える。②しぼんでしまう。③死ぬ。
ク[来](動カ変)①来る。②行く。③補助動詞として、ある状
態が次第に程度を強めることを示す。
ケ[異]形状言。普通でないこと。形容詞ケシの語幹となり、
ニを伴って副詞に用いられる。
ケ[占・卜]うらない。【考】ユフゲの形でしか用例を見な
い。事柄を予知するために自然現象もしくは人為的行動の
結果から意味を見出そうとする言動もしくは方法とも、予
知された事柄とも考えられる。あるいは事柄を暗示する具
体的な現象そのもの、すなわちカタを意味するのかもしれ
ない。
ケ[木]樹木。
ケ[笥]入れもの。容器。おおむね食器をさす。【考】正倉院
には、銅器・須恵器・彩釉陶器・漆器・木器・瑠璃器な
ど、さまざまな材料によるものが収蔵されているが、一般
には、木器もしくは土器が用いられたものと考えられる。
ケ[食]食物。
ケ[毛]毛。⇒ケモノ・ケダモノ・ケモモ。
ケ[気]あるものから発する精気。ものの気配。【考】漢語
[気]の音(名義抄に「気イキ・キハヒ・禾ケ」とある)に由来
するといわれる。平安時代にはその複合語の種類も多く、
独立しても用いられたが、上代では用例が少ない。
ケ[日]時間の単位としての日。日かず。②ひる。昼間。
【考】フツカ・ミカなどのカと一連のものであり、コヨミ
[暦]のコもこれにつながるものであろう。
コ[籠]かご。竹を編んで作った容器の総称。*カク・クク
ル・クグル・コク姿。
コ[子・児]①子。親の対。②幼児。
コ[子・児]①愛称。②ある職業に従事する人、その職業に関
係深いものの名の下につける。
コ[蚕]かいこ。桑の葉で飼うので、桑子ともよばれた。また
カヒコとも。
コ[粉]こな。粉末。
コ[濃]形状言。濃いこと。ウス[薄]の対。
コ[小]接頭語。主として名詞に接する。ほぼ同義の接頭語に
ヲがある。①小さい意もしくは程度の軽い意をつけ加える。②親愛の気持ちをあらわす。
コ[此・是]近称。①ココに同じ。②前出の事項または語を指示する。【考】近称代名詞のいわば原形で、ココレ・ココ・コナタ・コチなどを派生する。指示副詞カとも通じ合う面をもつ。
コ[木]キ[木]の交替形。樹木。
コ接尾語。場所を意味する。⇒ココ・ソコ。【考】ウミガ・オクカのカやミヤコのコなどと同源であろう。
ゴ[五]五。字音語。
ゴ[碁]碁。囲碁。字音語。
2音節動詞の音形と意味
上代k-kタイプ2音節語として、カク・カグ・キク・クク・コク・コグなどが成立しています。ここで、その音形と意味(事物の姿)との対応関係を考えてみましょう。
カク[掻](動四)掻く。①ひっかく。②かきまわす。③とりすがる。【考】搔いて削りとる・そぎ取るの意もあったか。次項カク[書]もこの掻クと同源であろう。
カク[書・画](動四)書く。色を塗りつける。【考】語源は掻クであり、材木や石などに掻ききずを作るところに発している。英語のscriveなど、印欧語の書記行為を表わす行為の結果、可視的な形が作り上げられる。
カク[懸](動四)①かける。②張りわたす。垣を作る。カキ[垣]は子の名詞形。③関係づける。
カク[懸](動下二)①かける。ひっかける。②張りわたす。③心にかける。目にかける。④関係づける。
カク[欠・闕](動下二)欠ける。不完全になる。ヒッカキ・トル姿。
カグ[嗅](動四)においをかぐ。*ヒッカキ・トル姿。
キク[聞・聴](動四)①聞く。耳にする。②聞いて従う。聞き入れる。*ヒッカキ・トル姿。⇔kick=ki[杵]+k(u)[来]=キク・キコエル。
クク[漏] (動四)くぐる。間を抜け出る。*ヒッカキながらク[来]・クル[絡]・ユク[行]姿。このまま語尾にルをそえて、ククル[潜]となり、視点を変えれば、ククル[括・縛]・ククム[裹]・ククモル(包まれる)姿でもある。
コク[揃・擿・扱] (動四)しごく。*固い素材でカコミ、ヒッカク・シゴク姿。⇔コク[谷・穀・酷]。
コグ[漕] (動四)漕ぐ。*舟のロやカイを水中でヒッカク・コク・シゴク姿。
2音節の名詞など
2音節動詞のまわりに、たくさんの名詞など上代2音節語が成立しています。その主なものについて、「音形とその意味との対応関係」をたしかめてみましょう。
カカ擬声語。①鳥の鳴き声を表わす。カカナクの形で用いられる。②水などを勢いよく飲み込むさまをあらわす。
カガ[利]利益。*本体にヒッカカリ、生まれるもの。
カキ[垣]垣。垣根。カク[懸](動四)の名詞形。
カキ[蠣]かき。塩分の少ない海岸の石に固着して生活する貝。*固い岸壁をヒッカク姿。
カキ動詞につく接頭語。動詞カク[搔]の連用形が接頭語に変化したもの。指先でする動作を表わす動詞に接することが多い。⇒~挙ぐ。~数ふ。~着く。~鳴らす。~分く。
カキ[部曲]ベ[部]の一種。豪族の私有民。限られた一区画の意で、私有地を指し、さらにそこに住む特定者をもいう。カキベとも。*カク[掻・懸]・カギル[限]姿。
カキ[柿]かき。果樹として広く栽培され、また干柿としても食用に供した。材質は緻密で器具を作るのに用い、また、材を長儒水に浸しておくと黒色に変ずるが、これを黒柿と称し、黒檀の擬材として珍重する。*ヒッカク・カキツク姿。
カギ[鍵]かぎ。門や倉の戸をあける道具。ギの甲乙不明。*カク・ヒッカク物の姿。
ガキ[餓鬼] 餓鬼道に落ちた亡者。逝去者・父祖の意を持つ梵語を意訳した字音語で、それがそのまま日本語中に取り入れられた。貪欲の報いとして飢餓に苦しむもので、寺には餓鬼の像が置かれていた。【考】「鬼」の字は、字音としてはいわゆる合拗音となる文字である。和名抄で和名をガキとしている点からみて、かなり早い時期に国語化したと考えられる。キの甲乙については、乙類であったといえよう。
カク[此・是・如此](副)①こう。こんなに。②こんなふうであると。かくかくと。*動詞カクの副詞用法。
カケ[鶏]にわとり。鳴き声に基づく語。
カケ[懸]かけること。心にかけたり、口に上せたりること。懸ク(動四)の名詞形。
カゲ[影・陰]①光。②姿。③投影。④実体のない姿。⑤かげ。光線をさえぎって、物体の背後にできる薄暗い部分。⑥ものに隠されて、光の当たらない部分。ものかげ。⑦ものに覆われて、日航の直射や雨を避ける建造物。御殿。
カゲ[冠]かんむり。冠り物。【考】頭を上から蔽うので、前項カゲの⑥から出来た語であろう。さらに、次項カゲと関係があるかもしれない。
カゲ[蘿]ひかげのかずら。山地に自生する常緑草本。茎は長く地に這い伏し、杉のような葉をつける。茎を飾りに用いる。*クキの線(条)のクギリ目がクッキリきわだって見える姿。
カコ[水手]舟を漕ぐ者。水夫。船頭。カ[楫]コ[子]。*カク[搔]コ[子]。
カコ[鹿子・鹿児]しか。また、鹿の子。
キク[菊]菊。字音語。賞玩用の菊も、それを賞でるこよも中国から渡来した。野菊などは日本にも古来あったであろう。
クガ[陸]陸地。クヌカとも。*クガ=クヌカ=ククするカ[処]。クッキリ突き出るトコロ。
クキ[岫・洞]そそり立つ峯、もしくは両側にがけをそば立てた隘路。または洞穴。
クキ[茎]茎。*クッキリ、ツキタツ・クグリヌケル姿。
クギ[釘]くぎ。*クッキリ、ツキタツ・クグリヌケル姿。
コケ[苔]①こけ。陰地や湿地の地表を蔽ったり、古い樹上や石上に生育する。密生し、法師によって繁殖する。②さるおがせ。地衣類の一種の糸状地衣とよばれる植物で、深山の樹枝に生ずることが多く、網もしくは糸屑のような形で垂れ下がる。【考】コケは、木の交替形コとケ[毛]の複合によりできた語といわれる。*ヒッカク・ヒッカカルものの姿。
ココ擬声語。猿の鳴き声を表わす。
ココ[此・此間]近称、場所をさす。①ここ。コとも。②この点、この所。③その時。
コゴ擬声語。ものをすりあわせる音を表わす。*固いものでヒッカク・コク・シゴクときに生じる音。⇒コゴシ(岩などがゴツゴツしてけわしい)・コゴル[凝]。
ここまで、日本語のk-k音について、「音形とその意味との対応関係」を追求してきました。「コトバの音形は発音を表わすだけで、意味とは関係ない」という言語観はマチガイであり、音形こそが、そのコトバの意味を決定する根源ではないか。そう考えて、ここまできましたが、まだコトバ足らずの点もあったと反省しています。ご通読いただけた方からのご教示をお待ちします。
漢語・英語の中のk-k音との比較については、次回とりくむ予定です。現代漢語の簡体字では、コクモツ[穀物guwu]のことをコクモツ[谷物guwu]と表記しています。日本人の感覚ではかなりの違和感があると思いますが、中国語としては上古漢語以来の同音語であり、「まわりを固いもの(モミガラ・岩石)でカコマレル姿」、「コク[扱]・シゴク姿」という基本義を共有しています。[穀]の画数がおおいこともあり、民間ではずっと以前から[谷物]と書いて通用していたものを、いまの政府になってから公式の文字表記として認知したという経過があります。漢語コクモツ[谷物]の表記法については、ヤマトコトバの感覚にあわせて直訳し、「(岩石やモミガラで)コク[扱]モノ」として説明したほうが、「違和感」がうすくなり、ナルホドと分かっていただけるかもしれません。
共通基本義ということになると、日本語のコクには「ウソ・クソをコク」のような意味用法があり、そこまでくると、漢語のコク[告]や英語のコックcockまでからんできそうです。トサカをふりあげ、首すじの気道をコキしぼってコケコッコウとさけぶのがcock(おんどり)。そのセンコク[宣告]をキキ[聞]きながら、コックリ・ゴクリ、一個ずつタマゴをコキおろすのがhen(めんどり)というわけです。試行錯誤をくりかえしながらも、日漢英音韻感覚の共通点・相違点をしらべあげることによって、3言語相互間の対応関係や位置関係なども、すこしずつ目に見えてくるのではと期待しています。