2011年9月6日火曜日

ナデシコと「五七五」とアバレ川 


ナデシコ


 奥村さんのブログ「五七五」


 イカラシ川増水
asahi.comより借用

アッパレ、ナデシコ ジャパン
717日、「なでしこジャパン」がFIFA女子ワールドカップ決勝でアメリカを破って初優勝。くらいニュースがつづく中で、日本全国民に勇気と感動をあたえました。アッパレです。そしてさっそく、こんどはオリンピックをめざし、アジア最終予選でタイ(9/1)と韓国(9/3)に連勝しました。それにしても、ナデシコとか、ヤマトナデシコとか、よく聞く名前ですが、実物を見た記憶がありません。どんな花か、じぶんの目でたしかめたいと思いました。
それから数日、町内の中島松鶴堂さんまえの花壇で見つけました。かわいい花で、つつましい感じ。ひとめ見るなり「これがナデシコではないか」と直感。すぐさまケイタイのカメラにおさめました。あとで奥さんにたずねましたが、まちがいなし。「花が咲いているのは数日だけ」とのことでした。念のため、ナデシコをネットで検索してみました;
①ナデシコ科の多年草。山野に自生。夏から秋、淡黄色の花を開き、花びらの先は細く裂けている。秋の七草の一。とこなつ、かわらなでしこ、やまとなでしことも。
②襲(かさね)の色目の名。表は紅梅、裏は青。一説に、表裏ともに紅色。夏に用いる。
③紋所の名。ナデシコの花と葉を取り合わせて図案化したもの。
④撫でるようにしている子。愛児。植物のナデシコと「撫でし子」を掛けことばにしていうことが多い。

アッパレ、アワレ、「五七五」
奥村隆信さんのブログについては、このブログでも数回(5/24, 6/21, 7/19)ご紹介しましたが、わたしはずっと毎日奥村さんのブログをのぞいては、一喜一憂しています。とりわけ「五七五」(俳句風作品)を読むのが楽しみです。アッパレで、アワレです。奥村さんの8/28ブログ「五七五」(「癌日記」より)の中からかってに数句えらんでご紹介します。
6/22 大患(たいかん)の身はさりながら蚊のかゆみ
7/22 生きる意味問はるる夏を過ごしをり
   思ひきや 点滴スタンド 夏の供(とも)
   かくなれどもう二夏(ふたなつ)も生きばやな
   夏の花 生老病死(しょうろうびょうし)うつしけり
   生き生きて夏 死に至るは どの季節
7/26 遠花火(とおはなび)がん患者にも届きけり
   葬列のイメージしきり夏深更
8/13 爆と発。HiroshimaNagasakiFukushima
   生きるとは 死ぬとは何か せみしぐれ
   アルプス席 いくたりありや 癌患者

アワレ、アワレ、アバレ川
つぎつぎ災害報道がある中で、いまやっととりあげる失礼を、お許しください。
729日からの記録的な豪雨で、新潟県三条市の五十嵐川や魚沼市の破間川などの堤防決壊が相次ぎ、流域の住民に避難指示が出されたとのこと。被災者のみなさまに、おくればせながら心からお見舞い申しあげます。
実は、テレビで新潟県水害発生のニュースを見ていて、画面に「アブルマ[破間]川」、「イカラシ[五十嵐]川」と表記されているのを見たとたん、「あっ、これは?」と思いました。 
「アブルマ[破間]」も「イカラシ[五十嵐]」も、もともと人間と自然災害との戦いの中で生まれた地名ではなかろうかと気づいたからです。さっそくウェブで調べてみました。

アブルマ[破間]川 新潟県魚沼市を流れる一級河川。信濃川水系魚野川の支流。
アブルマ[破間]川ダム 魚沼市(旧北魚沼郡入広瀬村)、破間川に建設されたダム。高さ93.5メートルの重力式コンクリートダム。洪水調節・不特定利水・水力発電を目的とする。新潟県営。魚野川は急流…古くから水力発電所の建設が進められていたが、治水に関して堤防整備以外は行われておらず水害が頻発。とくに19698月の集中豪雨で深刻な被害…新潟県が多目的ダムを破間川に建設することを計画。1973年に着手、1986年に完成。
イカラシ[五十嵐]川  新潟県三条市を流れる一級河川。信濃川水系。イカラシと発音する。7年前の豪雨でも決壊。死者2人、不明4人。名称の由来:三条市下田地区周辺は、第11代垂仁天皇の第8皇子「イカタラシ[五十日足]彦命」が開拓したと伝えられ、その子孫が「五十嵐」をなのるようになった。「五十嵐」は、豊作をもたらす「五風十雨」を意味する。五十嵐神社の祭神が「五十日足彦命」。神社の立つ丘が「五十日足彦命」の陵墓とされる。また、アイヌ語由来説もある。物見をするような見晴らしの良い場所を「インカルシベ」といい、北海道遠軽町などの地名として現在も残っている。流域の小山「要塞山」が「インカルシベ」だろう。

地名にこめられた意味を考える
こんどの水害は、「破間川」や「五十嵐川」という地名と直接関係がないともいえます。しかし、アブルマ川に[]が当てられ、イカラシ川に[]が当てられていることから、もともと洪水災害との関係をしめす地名だったことも想像できます。
<イズミの解釈> 「アブル」も「イカラシ」も、いちおうヤマトコトバですから、ヤマトコトバの音韻組織原則にしたがって解釈する方が、合理的で、わかりやすいと思います。アブルマはアブル[][]で、「(川の堤防が)ヤブレ、(水流が)アフレル空間」。アブルaburuは、アフル[]afuruと同源で、またヤブル[破]yaburuの語頭y-音が脱落した音形とも考えられます。いずれにしても、「矢がフレル、フエル、flolwする」、「ヤブレル、アバレル、breakする」姿です。ア=ヤ[矢]=飛ぶもの、流れるもの。ヤマトコトバでは、川(の流れ)・峡谷なども「ヤ」と呼んでいます。たとえばイチガヤ[市谷]・カリヤ[刈谷]・クマガヤ[熊谷]・シブヤ[渋谷]・ヨツヤ[四谷]など。
 イカラシ=イガラシ=五十嵐。動詞イク[射来・行・生]から、イカ・イカル・イカラス・イカラシなどの派生語が生まれたと考えられます。漢字は、すべて当て字。参考にはすべきですが、コトバの意味を決定するものはコトバの発音そのものです。イカ[烏賊]は、イクもの。水中を矢を射るようにイク生物。人工のイカがイカダ[]イカ・イカニ・イカサマなどのイカ[如何・何如]は、「矢が鋭く速くイク[射来]」姿へのおどろきから、疑問の意を生じたもの。イク・イクツ・イクラ・イクバクもおなじ。イカヅチは、イカのチ[霊道]で、カミナリのこと。また、イナビカリのことか。太陽を「空をイク矢=イカ」と見れば、イナビカリ=イナヅマ=イカヅチ=太陽光線。[五十日]と書いて、イカと読むのは、ヤマトコトバと漢語・漢字とのアソビ(カケアイ漫才のような)。漢語で[五十]は[百]の半分の数。モモカ[百日]をイク[射来](割りこむ)ことで、イカ[五十日]になる計算。モモ[桃]とイカ[烏賊]という珍味の食材をひっかけたコトバ遊び。
さきほど引用した解説に<「五十嵐」は、豊作をもたらす「五風十雨」を意味する>とありましたが、それは順調な気候をいのる立場からの解釈でしょう。<現実には天のイカリ[怒]がアラシ[暴風雨]となり、作物をイカラス[射枯]というアワレな事態になったことを記憶し、警告するもの>と解釈することもできると思います。もちろん、イカラシ「五十嵐・射枯」が洪水につながり、そのあとに広大で肥沃な田地が生み出され、そこを「イカタラシ[五十日足]彦命が開拓した」というアッパレな事実もあったことでしょう。

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