北日本新聞記事3/26
北日本新聞記事3/29
「郷土史研究会結成」の記事
3月26日の北日本新聞に「郷土史もっと学びたい…日本海文化研、市民講座OB、28日に研究会結成]という見出しで、つぎのような内容の記事がのっていました。
2011年3月に廃止された富山市日本海文化研究所の市民講座で学んだ受講生の有志が28日、郷土史などを独自に研究する会を結成する。学びの場を復活させ、専門家とは異なる視点で研究や学習活動を進める。
同研究所は日本海側の独自の文化をさぐる機関として、市が1986年に市民俗民芸村(同市安養坊)内に設置…市の事業見直しにより11年3月で廃止された。
多くの受講生から「学び続けたい」という声が上がったことを受け、元県立図書館長の仙石正三さん(66)=同市明輪町=を中心に会を結成することにした。「日本海文化悠学会」と名付け、教員や会社員ら約10人が集まった。
メンバーは、県内の寺社仏閣や祭礼の起源、立山信仰などをテーマに設定する。仙石さんは「郷土史では分かっていないことがたくさんある。市民の目で新たな発見ができたらいい」と話す。
28日の設立総会に合わせ、メンバーで割烹「まる十」(同市千代田町)店主の経澤信弘さん(52)が同日午後2時から、同店を会場に公開講座を開催。藤田富士夫前市埋蔵文化財センター所長が講演する。
郷土史研究は、もともとだいすきなテーマですが、ここしばらくはコトバの研究に熱中していて、ずっとゴブサタ状態でした。この記事を見て、ひさしぶりに心をゆさぶられる思いがしました。なにより藤田富士夫さんの講演が聞けるというのが魅力でした。
コシ[越・高志・古志]のはなし
28日の「越のまほろば」講座に出席してみました。会員個人のお店の一角を、しかも営業時間中にお借りしてというあたり、いかにも仲間同士手づくりの研究会という感じでした。
この日の藤田さんの講演内容については、29日の北日本新聞記事が要領よく伝えています。
藤田富士夫前富山市埋蔵文化財センター所長が「出雲国風土記の中のコシ文化について」と題して講演した。出雲国風土記には北陸地方を指す「コシ」について「越」、「高志」、「古志」の三つの表記があると説明。学説では同義で使われているとの見方もあるとした上で、「使い分けがあったと考える方が自然。大宝律令が制定された8世紀初頭以前は『高志』や『古志』、それ以後は『越』に統一されたと考えられる」と解説した。
[越]でも[高志]でも[古志]でも、その意味するところはただひとつ、コシ(の国)でしょう。しかし、3通りに書き分けられていたことも事実。その事実経過をたどろことで、その表記法をえらんだ当事者たちの意識(願望や決意をふくむ)のちがいをさぐることができるはず。藤田さんの、そういった実証主義的な研究姿勢を見せつけられ、よい勉強になりました。
設立総会・行事予定など
公開講座のあと、「日本海文化悠学会」の設立総会が開かれ、会則・役員・事務所・会費などが決められました。会の代表は仙石正三(富山高専講師)さん。事務所は豊坂稲荷神社(富山市茶屋町)内。年会費3000円。
当面の活動予定;4月27日(金)13:30、豊坂稲荷神社に集合。婦負国の王墓をめぐる現地見学会。5月17日(木)14:30~15:30.まる十(千代田町)で「越のまほろば」公開講座。『原発被災地に生きる越中人』(相馬移民の足跡をたずねて)講師、太田浩史氏(浄土真宗大谷派大福寺住職。となみ民芸協会会長)。
郷土史研究とコトバ
べつに郷土史に限ったわけではありませんが、研究と名のつくものはすべてコトバにたよるほかありません。コトバヅカイをいい加減にしていると、話の内容が正確につたわらなくなり、説得力がうしなわれます。
郷土史研究にはその土地の方言研究も必要になりますし、考古学で日本と中国の文化交流の歴史をたしかめようとすれば、中国語の研究も必要になるでしょう。そういえば、藤田富士夫さんも、そしてまた藤田さんの後任者の関清さんも、富山外專の中国語コースに通っておられたことが思いだされます。
藤田さんはコシ[越・高志・古志]の表記法にこだわって話をされましたが、わたしの場合は「コシkosiという語音は、どうしてコシ[越]を意味することになったのか」、「コシ[越]はコシ[腰]やコシ[輿]とどうちがうのか」、さらには「コシ[越]は、カシ[樫・枷・貸]・キシ[岸]・クシ[串・櫛]などとどんな関係をもつコトバか」などの問題にこだわることになります。
富山県の地名メヒとネヒ[婦負]、ニフカハとニヒカハ[新川]などについては、このブログでも自分流の解釈をまとめて発表したことがあります(2010年9月21日。「メヒ郡・ネヒ郡・ニヒ川郡」参照)。
手づくりの研究会
たったいっぺん会合に出席しただけでこんなことをいうのは失礼かもしれませんが、たしかに「仲間同士手づくりの研究会」という印象を受けました。まず、郷土のことが好きでたまらない人たちの研究会なので長つづきすることが期待できます。さらには、藤田さんのような指導者をかかえていることから、内輪の仲間同士で楽しむだけでなく、会員一人一人の歴史や民俗を見る目そのものがきたえられることも期待できそうです。次回の会合が楽しみです。
0 件のコメント:
コメントを投稿