2013年3月28日木曜日

「宮川」と「神通川」の話 

 
梅がサイタ
 
 
立山がキレイ
 
 
 
悠学会総会





梅がサイタ
317日、晴。ひさしぶりで散歩にでました。とはいっても、しばらく雪見橋のランカンにもたれて、まだ黒々とした土手の桜並木をながめたり、くらい水面の中にかすかに動く黒鯉の姿を見とどけたりしただけで、すぐひきかえしました。日が照っていても、まだまだハダ寒い感じです。
それでも、一つだけ楽しい発見がありました。雪見橋のたもと、本田和裁学院よこの梅の木が、桜にさきがけて白い花を満開させていたことです。
 
立山がキレイ
322日、晴。悠学会研修会に出席するため、千石正三(会長)さんの車に便乗させていただき、会場の豊坂稲荷神社へむかいました。
途中、呉羽山頂上の展望台で車をとめ、立山をながめました。新幹線の工事も完成している様子。なによりも、立山連峰がまっ白な雪にかがやいてキレイでした。
 
五十嵐敏子さんの研究報告
午後1時半から、悠学会第10回研修会。五十嵐俊子さんが「宮川莊についての一考察…任海宮田遺跡の発掘調査報告書を読んで」と題して報告されました。
汚染田の改良工事が終了した平成24年、富山県立イタイイタイ病資料館がオープンした。そこには、神通川で潤された台地での生活が描かれていた…改良事業に伴って該当地域の埋蔵文化財調査があった…汚染田地域の広い範囲で発掘調査がなされ、古代。中世にわたる人々の生活の跡が窺える遺物が発見された。ここでは、富山県文化振興財団埋蔵文化財調査事務所から刊行された「任海宮田遺跡発掘調査報告Ⅲ」を読み、中世「宮川荘」について考えてみた。(レジメ「はじめに」より引用)
 
ミヤ[]()は、もとミヤ[御矢]河か
五十嵐さんは、「徳大寺家文書」「多久比礼志神社社史」などの記述から、「神通()の古名やはり宮川であった」と推論しておられます。わたしも、ヤマトコトバの音韻感覚からみて、かねがねジンヅウ[神通]という名前はミヤ[]川を漢語風に翻訳しての命名」と推定し、主張してきました。これまでの推論に具体的なうらづけ資料がえられたと感謝しています。
ヤマトコトバのには、いろいろな[矢・八・谷・屋・家]がありますが、つまるところは[](ヤジリ・ヤガラ)の姿です。[]はイク(ユク)[射来・行]ものであり、タニガワ[](渓谷)やヤネ[屋根]・オネ[尾根]の稜線などもおなじ姿です。地名イチガヤ[市ヶ谷]・シブヤ[渋谷]・ヒビヤ[日比谷]・ヨツヤ[四谷]などのヤ音に漢字[]が当てられているのも、当時の日本人が、谷間を縫うように流れユク川(渓谷)の姿を[]と見ていたことの証言でしょう。
 
悠学会総会
研修会が終わったあと、ひきつづき日本海文化悠学会総会がおこなわれました。名前だけ見ると、「○○学会」と かたくるしそうな感じですが、じっさいは女性の会員もおおく、だれでも気楽に発言できる研究サークルです。昨年4月に発足、この3月で第10回の研修会をすませたばかり。会則も第13条までと簡潔。決算・予算の規模も5万円前後で、「審議」するというほどの時間はかかりません。
この日の出席者は20名たらず。人数は少数ですが、みなさん熱心な人たちばかりです。一人一人が自分の得意な専門分野をもち、一家言をもっているという感じです。
総会では、2013年度の活動計画についても話しあいました。年度はじめの4月例会は「八尾町野積谷現地研修会(422)。「野積谷の鉄遺跡を調査し、中近世の渡辺氏の活動との関連を考察して、日本海文化形成に果たした役割を解明する」のが目的。「少雨実施に備え、雨具・長靴などの装備必要」とのこと。残念ながら、93歳老人は参加見送りです。
5月の研修会は中島信之さん、6月はイズミが研究報告するなどの日程もきまりました。
 
 
 


2013年3月16日土曜日

『a, bさんご』を読む

 
a b さんご(A)
 
 
a b さんご(B)
 
 
 
a, bさんご』を読む
芥川賞の最年長受賞者黒田夏子さん(75)の「abさんご」が、発売から5日で発行部数14万部に達したということで、わたしも読んでみたいと思いました。表題作(横書き)のほか、1963(38)に「第63回読売短編小説賞」に入選した「」や、「タミエの花」「(3篇とも縦書き)の全4篇が収録されています。
とりわけ「全文横書きで平仮名のやまと言葉を多用』といううたい文句に興味をひかれ、「それなら読みやすいにちがいない」と期待して読みはじめました。ところが、23ページもすすまぬまま、その期待はみごとにハズレ、挫折感だけがのこりました。
 
読みにくくてバンザイ
とにかく読みにくいのです。「ひらがなのヤマトコトバを多用」しているのに読みにくい。なぜ?どうして?ひらがなばかり長々とつづいて、単語と単語のキレメが分かりにくい。それに、ひとつのセンテンスが長すぎて、ひといきでは読めません。途中で一服も二服もしたくなり、そのうち文脈がつかめなくなってしまいます。作品全体のストーリーどころではありません。くやしいけど、バンザイです。
ヒマができたら、もういちど読みなおすことにしよう」と思いました。
 
ネット上での評判
それにしても「14万部」購読者のみなさんは、ほんとうにこの作品を読みおわり、たのしめたのでしょうか?気になって、ネットでa, bさんご』の評判をさぐってみました。
*母のリクエストもあって買ってみた。読み始めてすぐに、私には相性が合ったようだ。生ぬるい海の中を漂うようなじんわりとした感触。一見難解に見えるが、慣れればするすると入ってくる平仮名の羅列。半世紀前のデビュー三部作も素晴らしい。
* 挫折しそうだったが、最後までよめてよかった。
*文藝春秋に収録のものを機内でよむ。 横書き、ひらがな多用の文体が難しくて理解できなかった。
* 文学だからそれでいいとおもうが、好みでない。
*横書きの文章は大丈夫だったが、重要な部分はひらがな、かぎかっこもなし、なので速読できず、一文字一文字を理解するのに苦労した。 単語も一つのものを回りくどく書いていて謎解きのように読んだ。
*私は日本語が好きです。平仮名と片仮名(外来語)と漢字と(数字とアルファベット)が混じった文章がすきです。外国人から見れば、難解で複雑な文章なのかも知れませんが、日本人から見ればそうであるからこそ読みやすい文章だと思うし、日本語の進化の結果だと思う。
*読むことで精一杯になってしまいました。 小説ってもっと読みやすくて娯楽的なものであってほしいなぁ
a, bさんご』の読者たちから、賛成・反対いろんな感想や意見がよせられていることがわかり、ほぼナットクできました。
 
「横書き小説」の出版は画期的
わたしは、文学の世界のことはよくわかりません。しかし、日本語の文書表記法の歴史については関心があり、外国語の表記法とも比較して、問題点を考えてきました。その結論として、現代日本語にとって第一の緊急課題は「国語教科書・新聞記事・文学書のヨコガキ」だと考えています。日本は科学技術などの面ではまちがいなく先進国だろうと思いますが、いちばんカナメになる文書表記法の改善、とりわけ「タテガキからヨコガキへの改革」という点では、中国や北朝鮮・韓国よりもおくれているといわざるをえません。
その意味で『a, bさんご』の出版は、日本語の歴史にのこる画期的なできごとです。著者・出版社はじめ関係者の勇断をたたえたいと思います。
 
つぎは、ワカチガキの作品を
ひらがなばかり並んだ文章では、読みにくいのがあたりまえです。しかし、それはひらがなの罪ではありません。単語ごとにワカチガキをしていないからです。表音モジで文章を書こうとすれば、いやおうなしにワカチガキが必要になります。
たとえば、つぎの英語の文章をごらんください。
onedaymyfriendtakashiandiwenttoseeamovietogether.
これは、2013年度富山県立高校入試問題(英語)の中の1文をワカチガキせず、ベタガキしたものです。このベタガキ英文をスラスラ読める中学生はめったにいないでしょうが、ワカチガキした英文なら、たいていの生徒がスラスラでしょう。
One day my friend Takashi and went to see a movie together.
いままでは、「文芸作品はタテガキ」が常識でした。その常識の一角がくずれ、「文芸作品もヨコガキ」の時代になるかもしれません。
そしてつぎの課題は「ひらがな多用と読みやすさ」です。ベテランの作家だけでなく、できればわかくて野心的な作家たちの中から「ひらがなワカチガキ読みやすい作品が生まれてくることを期待したいと思います。