a b さんご(A)
a b さんご(B)
『a, bさんご』を読む
芥川賞の最年長受賞者黒田夏子さん(75)の「abさんご」が、発売から5日で発行部数14万部に達したということで、わたしも読んでみたいと思いました。表題作(横書き)のほか、1963年(昭38)に「第63回読売短編小説賞」に入選した「毬」や、「タミエの花」「虹」(3篇とも縦書き)の全4篇が収録されています。
とりわけ「全文横書きで平仮名のやまと言葉を多用』といううたい文句に興味をひかれ、「それなら読みやすいにちがいない」と期待して読みはじめました。ところが、2~3ページもすすまぬまま、その期待はみごとにハズレ、挫折感だけがのこりました。
読みにくくてバンザイ
とにかく読みにくいのです。「ひらがなのヤマトコトバを多用」しているのに読みにくい。なぜ?どうして?ひらがなばかり長々とつづいて、単語と単語のキレメが分かりにくい。それに、ひとつのセンテンスが長すぎて、ひといきでは読めません。途中で一服も二服もしたくなり、そのうち文脈がつかめなくなってしまいます。作品全体のストーリーどころではありません。くやしいけど、バンザイです。
「ヒマができたら、もういちど読みなおすことにしよう」と思いました。
ネット上での評判
それにしても「14万部」購読者のみなさんは、ほんとうにこの作品を読みおわり、たのしめたのでしょうか?気になって、ネットで『a, bさんご』の評判をさぐってみました。
*母のリクエストもあって買ってみた。読み始めてすぐに、私には相性が合ったようだ。生ぬるい海の中を漂うようなじんわりとした感触。一見難解に見えるが、慣れればするすると入ってくる平仮名の羅列。半世紀前のデビュー三部作も素晴らしい。
* 挫折しそうだったが、最後までよめてよかった。
*文藝春秋に収録のものを機内でよむ。 横書き、ひらがな多用の文体が難しくて理解できなかった。
* 文学だからそれでいいとおもうが、好みでない。
*横書きの文章は大丈夫だったが、重要な部分はひらがな、かぎかっこもなし、なので速読できず、一文字一文字を理解するのに苦労した。
単語も一つのものを回りくどく書いていて謎解きのように読んだ。
*私は日本語が好きです。平仮名と片仮名(外来語)と漢字と(数字とアルファベット)が混じった文章がすきです。外国人から見れば、難解で複雑な文章なのかも知れませんが、日本人から見ればそうであるからこそ読みやすい文章だと思うし、日本語の進化の結果だと思う。
*読むことで精一杯になってしまいました。 小説ってもっと読みやすくて娯楽的なものであってほしいなぁ
『a, bさんご』の読者たちから、賛成・反対いろんな感想や意見がよせられていることがわかり、ほぼナットクできました。
「横書き小説」の出版は画期的
わたしは、文学の世界のことはよくわかりません。しかし、日本語の文書表記法の歴史については関心があり、外国語の表記法とも比較して、問題点を考えてきました。その結論として、現代日本語にとって第一の緊急課題は「国語教科書・新聞記事・文学書のヨコガキ」だと考えています。日本は科学技術などの面ではまちがいなく先進国だろうと思いますが、いちばんカナメになる文書表記法の改善、とりわけ「タテガキからヨコガキへの改革」という点では、中国や北朝鮮・韓国よりもおくれているといわざるをえません。
その意味で『a, bさんご』の出版は、日本語の歴史にのこる画期的なできごとです。著者・出版社はじめ関係者の勇断をたたえたいと思います。
つぎは、ワカチガキの作品を
ひらがなばかり並んだ文章では、読みにくいのがあたりまえです。しかし、それはひらがなの罪ではありません。単語ごとにワカチガキをしていないからです。表音モジで文章を書こうとすれば、いやおうなしにワカチガキが必要になります。
たとえば、つぎの英語の文章をごらんください。
onedaymyfriendtakashiandiwenttoseeamovietogether.
これは、2013年度富山県立高校入試問題(英語)の中の1文をワカチガキせず、ベタガキしたものです。このベタガキ英文をスラスラ読める中学生はめったにいないでしょうが、ワカチガキした英文なら、たいていの生徒がスラスラでしょう。
One day my friend Takashi and Ⅰwent to see a movie together.
いままでは、「文芸作品はタテガキ」が常識でした。その常識の一角がくずれ、「文芸作品もヨコガキ」の時代になるかもしれません。
そしてつぎの課題は「ひらがな多用と読みやすさ」です。ベテランの作家だけでなく、できればわかくて野心的な作家たちの中から「ひらがなのワカチガキで読みやすい」作品が生まれてくることを期待したいと思います。
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