経澤さんの研究発表
仙石さんの報告
日本海文化悠学会公開講座
2月28日 午後、富山市 千代田町の 割烹まる十で 日本海文化悠学会 公開講座が 開かれ、経沢信弘さんが「大伴家持の 春巡行の 鵜飼」に ついて 研究発表を されました。
経沢さんは、家持が 鵜飼を よんだ 和歌(万.
4023, 4156)に ついて、じっさいに 巡行したのは 春で
あり、鵜飼に 適当な 時期と される 夏とは 季節が ずれて いる こと
から、「この 鵜飼は 実用的な 漁では なく、鵜と 鮎を つかって 天候や
イネの 出来高を占う 鮎占の 一種だった のでは ないか」と 解説されました。論旨が
明快で、裏づけ 資料も 豊富。なるほどと ナットク させられ ました。
アユの語源について
鮎の 話が 出た ついでに、アユの 語源に ついて 考えて みたいと 思います。ヤマトコトバの
アユには さまざま あります。名詞では アユ[鮎・年魚・安由]と アユ[安由](アユの風)。動詞では アユ[零] (下二。こぼれ 落ちる)と
アユ[肖]( 下二。似る。あやかる)。語源に
ついても 諸説 ある よう ですが、わたしは アユは もともと「ヤ[矢]を イル[射]」姿と見て います。「水中を 矢の ように ユク[行]魚」が アユ[鮎]。その
姿が みんな おなじ姿に 見える から、アユ[肖]。「血や 汗が
(矢の ように)流れ したたる」 姿も、アユ[零]と いう ことに なります。
風位名と される アユの 風 も、もとは「矢を 射る ような、はげしい 風」の 意味 だった ものが、結果的に 風位名に なったと 考える べき でしょう。
アヤ[綾]や アユム[歩] なども アユの 同族語と 思われます。タテ糸に ヨコ糸の 矢を 通す 織物が アヤ[綾]。綾織の 技術を 伝来した 人たちが、 アヤヒト[漢人] です。
アユム[歩]は、人が アルク 動作を「弓で 矢を 射る」姿に 見たてた コトバ。ヒザ関節を カナメに、足を「くの字」に
くねらせて 前進する 姿は、まさに「弓で 矢を 射る」姿 です。
「アユ[鮎]は、動詞 アユ[肖]の 名詞用法」と 解釈する
ことも できます。ハル[張・墾]と ハル[春]、タツ[立・起]と タツ[竜] などと おなじ 造語法 です。
漢字では [鮎・零・肖] などと 書き分けられる ので、それぞれの アユが もつ 意味の チガイが 分かって、便利と いえば 便利です。そのかわり、それだけ 意味の チガイが あり ながら、ナゼ
同音の 1語で 表わす ことに なった のか、その ナゾを とく 手がかりが 見えにくく なる という 不便さ も あります。
コトバは、時代の 流れと ともに うまれ、はやったり すたれたり します。アユ[鮎・零・肖]と いう コトバが 生まれた のは、ヤマト朝廷が 成立した 時代。ユミ[弓]と ヤ[矢]に たよって
生活する 時代でした から、コトバの 面でも ユミ[弓]・ヤ[矢]に ちなむ(アヤカル)コトバが つぎつぎ 生まれました。ヤマトコトバに
かぎらず、コトバの 意味用法を たしかめる には、まず その 同族語と つきあわせ、その 語音が うまれた 時代社会の 生活環境 との 関連を つきとめる ことが
必要かと 思います。
なお、アユに あてた 漢字 ネン・デンnam鮎nianは ナマズ[鯰]で あって、アユ とは 関係 ありません。アユに あたる 漢語は [香魚xiangyu]です。
さらに いえば、ネン[鯰] という 漢字は いわゆる「国字」(日本製の
漢字)です。ただし、ぎゃくに アユ[鮎]を「国字」とする 説も あります。どうして こんな ややこしい ことに なった ので しょうか?
『古事記』では
アユを [年魚]と 表記し、『萬葉集』では [安由・年魚・鮎] などと 表記して います。漢語の 感覚 では ネン[鮎・年・念]は ほぼ 同音で、共通して「ネバリツク」姿を もって います。鮎=藻場に ネバリつき、独り占め
しよう と する。年=稔=ネバリを もって きた 穀物=ミノリ。念=ネバリづよく イノリ[祈]、唸り声を 出す。
はじめに ネン[年=稔](ネバル、ミノル)の 感覚 から[年魚]と
表記されて いた ものが、やがて ヤマト朝廷の「鉄器(スキ・クワ)に よる イネ農耕推進」戦略に あわせて [鮎]と 表記する ように なった のかも しれません。漢字 ネン[鮎]は「魚+音符占(=粘。ネバリツク 姿)」の会意 兼 形声 モジ。ただし、この ネン[占]は、[占卜・占領]の センでも あります。ウラナイの セン[占]は
「卜(うらなう)+囗」の 会意モジと 解釈されて いる よう ですが、ボク[卜]の 原義は「(ウラナウ ため、牛骨・亀甲 などに)ポクッと アナを
あける=矢を 射こむ 姿」と 解釈する ことも できます。
ヤマトコトバの ウラナウも「ウラ[浦・裏]+ナウ」の 構造で、「矢を
射こみ、アナを あける」が 原義です から、やがて アユの 姿 にも 通じます。
仙石さんの 報告
経沢さんの 研究発表に さきだって、仙石正三さんが「牛首と 牛ヶ首の 間」という テーマで
報告され ましたが、時間の つごうで(?)、質疑応答も ない まま 退席されました。この テーマに ついては、「日文悠 ニュース」でも 予告されて おり、この日「牛ヶ首用水の 由来 伝承」に ついて 討論される ことを 期待して いた ので、ザンネンです。いつか
あらためて とりあげて いただきたいと 願って います。
「古事記を 読む 会」の こと
2月28、悠学会の 席で、会員の 中から「古事記を 読む 会」発足に ついて 案内が ありました。「古事記を
はじめ から 最後 まで 読んで みたい!」そんな 仲間の 思い から スタートした との こと です。
4月6日(日) から 毎月 第1日曜日 午前、豊栄稲荷神社 社務所で 開催(8月、1月を
除く)。テキストは、『古事記』(小学館、新編日本古典文学全集1)を 予定。ただし、音読する 部分を 毎回 コピーして
おく ので、いそいで 購入する 必要は ない との こと。
『古事記』を 音読する と
いうのが 気に いりました。どんな 人たちが 集まるか?どこまで 真実を よみとれるか? 21世紀を 生きる ために、『古事記』から どんな 教訓を 学び とれるか?わたし
自身、はたして 毎回 参加できるか どうか、体調に あまり 自信が もてない のですが、まずは 4月6日の 会合を 楽しみに して います。
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