満山紅葉
白骨温泉・露天風呂
泡の湯旅館前で
10月6日(日)午前、豊栄稲荷神社で「古事記を 読む 会」の
研修会が あり、「マキムクの日代の 宮」に ついて 報告させて いただき
ました。要約すると、こういうことです。
『古事記』に よれば、第12代 景行天皇の 皇居 所在地の ナマエが マキムク[巻向・纏向]です。そして 第21代 雄略天皇の 項で、あらためて
「マキムクの 日代の 宮…」(記.
100)の 歌が 記録されて います。さらに、『萬葉集』の中に
柿本人麿が マキムクを 歌った ものが 計11例 採収されて います。わたしは これらの 資料 から、「マキムク」という
コトバに こめられた 意味(情報)を さぐると ともに、この コトバが
生まれた 時代社会の 状況との 対応関係を たしかめたいと 考えました。その 結果、いちおうの 結論を まとめて みました。「マキムクの 日代の 宮…」の 歌は、前方後円の 巨大古墳を きずいた 大王たちへの
賛歌で あり、基本的には 柿本人麿の 「児らが 手を 巻向山…」(萬.1093)の
世界観に 通じる もの だと 解釈した わけ です。
古墳時代の 歴史に
ついて まったく 門外漢の わたしの 報告 でしたが、みなさん 熱心に きいて いただき、いろいろ 質問や 意見を 出して いただき ました。おかげさまで、じぶんの
勉強不足だった ことが よく 分かり、さしあたりの 課題も 見えて きました。
課題1.「おなじく 古墳時代と いっても、前期・中期・後期・終末期の 区別が ある」ことを 指摘され ました。『古事記』や『萬葉集』に みられる マキムクの 用例が、古墳時代の どの 時期と どう 対応する のか? 具体的に 提示する ことが できれば、もうすこし
説得力のある提案に なる かも しれません。
課題2.今回は、マキムクと いう 地名を 手がかりと して m-k音語の 面から 古墳時代の 人びとの 生活実態や 意識を さぐろうと しました。この 試みは ある 程度 成功したと
思います。このつぎは、地名に あわせて 人名を、つまり 古墳時代の 天皇と
される 人たちの 呼び名に こめられた 意味(情報)を さぐる
方が より 効果的 だろうと 考え られます。具体的に いえば、12代 景行=オホタラシヒコオシロワケ[大帯日子淤斯呂和氣]。13代 成務=ワカタラシヒコ[若帯日子]。14代 仲哀=タラシナカツヒコ[帯中日子]。34代 舒明=オキナガタラシヒヒロヌカ[息長足日広額]。35代 皇極=アメトヨタカライカシヒタラシ[天豊財重日足]。37代 斉明(=皇極天皇 重祚)。いずれも、「タラシ(ヒコ・ヒメ)の ナノリを もって います。そのため、7世紀 前半に 在位した
ことが 確実な 舒明・皇極(=斉明) 以前の タラシヒコ天皇(景行・成務・仲哀)は 後世の 造作と する 説が ある ほど です。さらに
いえば、この タラシを [帯](古事記)と 書くか、[足](日本書紀)と 書くかの 問題も あり、クサカ[日下・草香]と ならんで、いろいろ
議論が 分かれる テーマだと 思われます。
10月19日(月)、東京から 伊藤夫妻(信子の 姪と ご主人)が 来富。20日
午前11時、伊藤さんの 愛車に のせて いただき、砂町を 出発。途中 飛騨の 紅葉を 鑑賞しながら、信州 白骨温泉(松本市)へ 向かい ました。泡の湯 旅館で
一泊。山の 奥ふかく、あたり一面 紅葉に かこまれた、しずかな 温泉宿。やたらと 広い 野天風呂が あり、乳白色の温泉に つかって いる 人の 姿が、部屋の 窓からも
見えました。ここは 桃源郷。シャバの 生臭い 生活を わすれ、おとぎ話の 世界に 移り住んだ 気分に なりました。
温泉の 成分は、硫化水素(硫黄分)と カルシウム。それで、わき出した 時には 透明な 湯が、時間が たつと 白く なる のだ そう です。シラホネ温泉と いう ナマエの 由来も、ほぼ
推測できます。いまどき、温泉地名と して 売り出すと したら、わざわざ シラホネ[白骨]と 命名する ことは まず ない でしょう。しかし、シラフネ[白舟]と いう 表記法も ある そうで、天然に できた 温泉の 姿が「白い ユブネ[湯船]」と よばれた ことは 想像 できます。
それに しても、シラホネ[白骨] などと いう エンギでも ない 地名表記の ままで、おおくの 観光客を
呼びよせる ことが できて いる のは、ナゼで しょうか? いろいろ あるで しょうが、やはり「白い ユブネ[湯船]」が もつ イヤシ(治療)効果の 実力に よるもので しょう。
そう いえば、ホネも
フネも p-n音語 です。英語 でも 骨の ことを boneと いい、これもp-n音の コトバ
です。英語boneの つづりを 日本ローマ字式に よめば、ボネ[骨]と なります。人間や 魚の ばあいは
ホネ(骨格)の まわりに 身・肉 が ついて いますが、カニ・エビや
フネの ばあいは ホネ(骨格)が 身・肉の まわりを カコム 姿に
なって います。ホネ(骨格)のおかげで、生物の体形が造られ、ホネ(関節)のおかげで、いろいろな動作が
できる わけ です。ホネとboneとの 対応関係は、日本語・英語双方の 音韻感覚の 中に 共通する ものが あった
から 起こった 現象だろうと 考えられます。
シラホネ温泉の
成分は 硫化水素(硫黄分)と カルシウム との こと。カルシウムと いえば、ホネを
つくる 成分で、色は シロ[白]。硫黄は 英語でsulfur。シロ[白]も
sulfurも、s-r音語(s-l音を 含む)です。Sir-音の 日本語は、動詞 シル[知・令知]を 中心に シラ[白]・シラキ[新羅]・シラギヌ[白絹]・シラク(白くなる)・シラグ(白くする)・シリ[後・尻]・シル[汁]・シロ[白・代・城]・シロカネ[銀] などの 単語家族が 組織されて います。このsir-(sil-)音は、英語のsilk(絹), silver(銀)にも
通じる ものと 考えられます。 S-は マサツ音。S-r音は、スル・サスル・コスル・セセル・ソソル姿を
連想 させます。袖触れ合うも、他生の縁。だれかの 情報を シリたければ、なんとかして スル・サスル(接触する)ほか ありません。大根の 味を シルには、スリおろして、その シルを ススル のが、いちばんの 近道 でしょう。
シラホネに かぎらず、この辺、中部山岳 いったい、いや、日本全国 いたるところに シラ・シロの ついた 地名が あり、シラヤマ[白山]神社が 分布して います。このことも、むかし
ヤマト朝廷が 成立した ころ、シラギの 国 から 金属を シラグ(精錬) 技術が もたらされ、山師たちが 鉱石を もとめて 日本列島を かけめぐった、その 足跡の ようなものかと 思われます。しかし、その話は また つぎの 機会に まわす
ことに します。
10月 26日、伊藤さん から どっさり 写真が とどきました。その中から 3枚だけ、この ブログに
使わせて いただきました。