悠学会研修会 4/22
k-t,
k-s音の擬声・擬態語
k-t音の 動詞
k-s音の 動詞
立山が くっきり …5/5
魚沼神社蔵『大般若経』に ついて(五十嵐 俊子
さんが 報告)
4月22日(金) 午後、豊栄稲荷神社で 日本海文化悠学会の 研修会が あり、五十嵐 俊子さんが「魚沼神社蔵『大般若波羅蜜多経』に ついての 私見」と 題して
報告されました。当日 配布された 資料に よれば、この 経文は1386年から1396年に
かけて、越中 宮川庄地域で 書写された もの ですが、「1573年に 上杉 謙信が 富山城を 包囲し、稲荷・岩瀬・二宮・押上に
陣して、神通川 以東を 制圧…この 地に あった 七社宮から 大般若経を 戦利品として 持ち帰った」と されて います。新潟県の 魚沼神社 所蔵で、2001年に 県文化財に 指定 されて います。
五十嵐 さんは、「写経に かかわった 人々=寄進者と 執筆者」を くわしく 調べて、一覧表に まとめると ともに、宮嶋(寄進者右馬次郎らの 住所)の 所在に ついて、「現 小矢部市 地域の
宮島保では、写経の 場所から 遠すぎる ので、おなじ 神通川 流域の「現 富山市
婦中町 宮ヶ島」と 推定する 方が 合理的だろうと、結論づけて います。
歴史学には 門外漢の わたし ですが、文献資料を まじめに・ていねいに 整理して ゆく ことで、歴史の 真実を さぐりあてようと
する 報告者の 姿勢に 敬意を 表したいと思います。
じつは この日も、報告や 討論を きき ながら、そこで かわされる コトバ(用語)の 意味を おいかけて いました。とりわけ 気に なった のが、「越中 宮川(河)庄(莊)」・「宮嶋」・「宮ヶ島」・「宮島保」などの
ミヤ[宮]と いう 語音です。ミヤは、ふつう 漢字で [宮]と 表記される ため、神を まつる 宮殿を 連想する ことに なりますが、ヤマトコトバの感覚と しては もともと「ミ[御]+ヤ[矢]」の 構造を
もつ コトバです。
ヤ行音(ヤ・ユ・ヨ)は、母音iから
他の 母音a, u, oなどに 変化する 語音で、拗音と 呼ばれ、「ヨル・ヨジレル」感覚を ともなう ことに なります。ヤジリを「イする」姿が
ユ[斎]・イル[入・射]。「イル・イレル・イク・ユク もの」が ヤ[矢]。もとはヤジリだけ でしたが、やがて ヤガラや ハズを とりつけた
もの、さらには 発射装置 ユミに セットする ものも ヤ[矢]と
呼ばれて います。
それだけでは ありません。ヤジリに ヤガラ・ハズ・ハネなどを セット した ものを ヤと よんだ 古代人たちは、ヤダケ[矢竹]などを 組みあわせた 構造物(=家屋)も ヤ[屋・舎]と よぶ ことに なります。
さらに、さらに、タニ・サワ・カワなどと 呼ばれる 地形に ついても、おなじく ヤ[谷]と 呼んで います。クマガヤ[熊谷]・シブヤ[渋谷]・ヨツヤ[四谷]・ヒビヤ[日比谷] などの ヤ[谷]が そうです。山と 山との スキマを 縫う ように ツキススム 水の流れを 「矢が イク[射來]・ユク[行] 姿」と 見る 人たちが 生みだした 用語と 考え られます。
日本列島は、○○プレートと 呼ばれる ものが ひしめき あって できた もので、単純な 構造では ない そうです。地震や
ツナミは こまりますが、全国 いたる ところに 温泉が ある とか、四季 それぞれの 楽しみ方が できる とか いう ことも あります。日本列島の 住民も、けっして
単純な 民族構成では なく、世界 各地 から それぞれ 独自の文化を もつ 人たちに よる 複雑な 構成だったと 考え られます。
おなじ 一つの 地形に ついて、タニ・サワ・ヤなど 多数の 地形名が つかわれて いると いう ことを どう 解釈すれば
よい でしょうか?それぞれの 用語が 生まれた 背景に、それぞれの 視点や 音韻感覚が ある はずで、どれが 正しく どれが マチガイと いう 問題では ありません。日常の
生活で、たがいに 話しあう とき、同一の 事物に ついては 同一の 用語を 使う 方が たがいに 便利だと いう ことも あります。しかし、こうした 機会に、タニ・サワ・ヤなどの
語源に ついて 考え、「同一の 事物に ついても、視点・発想の ちがいで、まったく ちがった 語音の コトバが 生まれる」ことが 理解できると いうのも 悪く
ないと 思います。
「k-t音語と
k-s音語の 系譜」に ついて
5月1日(日)午前、豊栄稲荷神社で 『古事記』を 読む 会の
研修会が あり、イズミから 「k-t音語と k-s音語の 系譜」に
ついて 報告させて いただき ました。
もともと 昨年9月の 研修会で 服部 征雄 さん から『古事記』の 中の 医療関係記事として、「カツラ[桂・楓・香木]と キサカヒ[𧏛]」に
ついて 報告された のを うけて、イズミが これを「k-t音語とk-s音語」の
例として 研究する ことを 提案し、この ブログ(4月27日号)でも とりあげて きたと いう 経過が あります。
こんどの 報告では、『古事記』に かぎらず、現代日本語を ふくめて「k-t音語とk-s音語」に ついて 考える
ことを めざし、資料を 準備しました。配布用 資料「k-t音語とk-s音語の
系譜」(k-t音語とk-s音語を 対照できる ように 配列した
もの)の ほか、掲示用 資料を3枚 用意しました(画像参照)。
① k-t音語と k-s音の 擬声・擬態語。
(a)カタカタ:カサカサ// キッチリ:ギッシリ// クツクツ:クスクス など、k-t音語とk-s音語が 一種の 音感覚を 共有しながら 整列して いる 感じが する。また、k-t音・k-s音
発生の 順序に ついては、はじめに k-t音語が うまれ、おくれて k-s音語が
生まれたと 考え られれる。理由は、省エネの 法則。破裂音 t-にくらべ、摩擦音 s-の ほうが、話し手も
ツカレが すくなく、聞き手の 耳にも やさしく ひびく。
(b)「擬声語は、音を 表わす だけで、意味とは 関係が ない」などと いう 人も おられる よう だが、それは 擬声語の 実態を 知らない 人の 発言では なかろうか?たとえば
カタカタは、「カタナ[刀]・カタ[型]・カッター などで カットする」ときに 発生する 音。調理を
はじめ、モノづくりの 基本作業を 連想させる 音で、カタカタの 語頭 子音が
清音から 濁音に 変化すると、この 作業が ガタついて きた ことを 表わす ことに なる。
(c)擬声語は、そのまま
擬態語と しても 使われる。擬態語に ついて、「意味は ない」と いう人は いない ようだ。ただ、擬態語の おおくは、名詞や 副詞と して 使われて いる のが
実態。
(d)k-t音語としての 基本義は 共有し ながら、母音の
ちがいで 意味の ニュアンスの ちがいを 表わす。たとえば、クツクツ・クスクスは、「口の 開きを おさえ ながら 笑う」姿。ケタケタ・ゲタゲタは、「ケタ ちがいに 大きく口を 開いて 笑う」姿。
② k-t音の 動詞。
(a)上代語の 段階で、2音節 動詞 カツ[合・搗・勝]・クツ[朽]・ケツ[消す]が
成立して いる。その先に、カタス[鍛]・カタル[語]・クダク[砕]・クタス[腐]などの 動詞が
再生される。
(b)k-t 2音節 動詞の 基本義は 大同小異。やがて、漢語 カツ[割]や 英語 cutにも 通じる。人類語と
して 世界規模で 共通する 音韻感覚を もつ コトバと いえる。
(c)動詞 クツ[朽]は クサル[腐]の 意に 専用されて いる ようだが、もとは カットする(クダク[砕・擢]・クヅス[崩])姿。クタ[芥]・クチ[口]・クツ[沓]・クヅ[屑]は、その 名詞形と 考え られる。
(d)クツ[朽]に ついては、漢語 クツ[屈・掘・窟](くぼめる、カットする 姿)を 参考。また、ケツ[消]に ついては、漢語 ケツ[穴・決・抉・決・玦・缺](カットする
姿)を 参考。
③ k-s音の 動詞。
(a)上代語の 段階で、2音節 動詞 カス[借・貸]・キス [著・服]・ケス[蓋]・コス[越・超‣漉](越え させる)が 成立して いる。
(b)カス[借・貸]は、Aの 持ちものの 一部を カット(カチワル)して
Bに 渡す(カツケル・クツケル) 姿。カサ[笠]・カシ[枷]・カセ[枷・桛]・カゼ[風]は、その 名詞形で、「カス[貸] もの」。カス[糟・滓]は「カットされた もの」の 意で、動詞 基本形が そのまま 名詞形と なっている。カシ[徒歩]は、「カチ[歩・徒歩]の 東国語と されるが、「両足を コンパスの ように 動かし、地面を 一歩ずつ カットする」姿。英語caseの つづりを ローマ字ふうに よめば カセと なり、カセ[枷・桛]に 通じる。
(c)キス[著・服]は、着物を キセル[着]姿。キシ[岸]は
波が 砂浜や 岩に 衣服を キセル[着] 姿。また、kissする(唇を キセル[着]) 姿。
(d)ケス[蓋]は「動詞 キル[着]に
尊敬の 動詞語尾 スが 接した もの」と 解説されて いるが、漢語 ガイ[蓋]は、上古音kab、現代音gaiで、「フタ。カサ。カブセル」の
意。また、「全体に カバーを カブセ、おおまかに 考える」の 意。日本語の 文脈では、副詞ケダシ・ケダシク[蓋]を 成立させた。ケタ[桁]は、[柱の 上に 板を カブセル]姿。ゲタ[下駄]も おなじ 姿。ケス[消]は、もと ケツ[消]の 語尾子音が t-から s-に 変化した もの だが、「フタを
カブセ、カバーし、カットする」姿と 解釈する ことが できる。そう なると、ケサ「袈裟」に ついても、動詞 ケス[蓋]の 名詞形=「僧が キル[着] もの」と
解釈できる。
(e)「コス[越・超]・コシ[越]の コは 甲類、コシ[腰・輿・層]の コは 乙類]と、強調されて きたが、甲・乙の チガイが どの
程度の ものか、解明され つくした とは いえない。とりわけ コや トに ついては、はやい 時期から 甲乙の 区別が つかなく なって いたとの 指摘も ある。ヤマトコトバを
はじめて モジで 表記したのは 漢字・漢文。漢字は もともと 表意モジ だから、ヤマトコトバの 語音を そのまま 表わす ことは できない。ヤマトコトバの
音形に ちかい 漢字を えらんで 表音モジと してつづる ことに なる(=万葉ガナ)。担当者は 漢語音に 精通した 研究者。甲乙カナの区別も、漢語音韻研究の 成果を ヤマトコトバの 分析に 応用した ものと 考えられる。コス[越 ]の ばあい、同義語の スグsugu[過]に 母音u-が
あり、漢語クヮkuuar過guoにも 母音u-が ある ことから、同系の 音形と された 可能性も ある。参考 までに、甲類の コに 当てられた 漢字を 上古音別に
あげると、kag[古・故・姑・固・顧]、k’ag[枯・庫]、kog[高]、kuag[孤]など。乙類の
コに 当てられた 漢字はkiag[居・虚・挙・拠]、k’iag[去]、giag[巨]、gieg[忌]、hiag[許]など。つまり、拗音(ia,
ie)をもつ ものが 乙類と されて いる。
立山が くっきり…
5月5日(木) 午後、デイケアの バスで 帰る 途中、西へ 向かって 走る 通りの
正面に、白雪の 立山連峰が くっきり 見えました。あまり キレイ だった
ので、カメラに おさめて おきたいと 思い、帰宅して から もう いちど、近所を 歩きまわった のですが、ドンピシャの 場所が 見あたり ません。山がよく見とおせる
ところは、クルマの 往来が はげしくて 危険。安全な ところ では、手前の 建築物が ジャマ。結局、いつもの 場所、雪見橋の 歩道から 立山を ながめて シャッターを
切った ものを ご覧に いれる ことに なりました。この 写真では、せっかくの 立山連峰の 雄姿が ビルに かくされ、青空との 境界線も 分かり にくく なって
いますが、いまの わたしには これで 精いっぱいと いう わけ です。
申しおくれ ましたが、わたしは これまで 週1回 デイケアに 通って いましたが、5月から 週2回 通う ことに なりました。毎回 入浴して、マッサージも 受けられる ので、体調の 維持管理に ついては、ほぼ 安心して います。自宅で
フロを わかし、あとで フロ掃除を すると いう 作業から 解放された ことも、たいへん
ありがたいと 思って います。その おかげで、こちらは のんびりと「ミヤ[御矢・宮]→ヤシロ[矢代・社]」など、ユメ みたいな モノガタリを
カタル ことが できる のです から。
ただし、デイケアでは こんな ユメモノガタリを 聞いて くれる 人は まず いません。もっぱら 保育園の 園児に なった つもりで、身も 心も わかがえり、よみがえる ことを目ざして います。壮年時代・青年時代を 思い出して
歌ったり するのも 悪くは ありませんが、純粋な 気持ちに 立ちもどると いう 点では、保育園の 園児を めざすのも アリだと 思います。
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