2019年3月27日水曜日

信子3回忌法事のことなど


『古事記』を読む会 3/10


社会人大楽塾 3/14 


信子3回忌祭壇(長念寺) 3/16 


同上会食(五万石) 3/16  


白寿の祝い() 3/16 


瑞龍寺見学    3/17 


カラオケ同好会のみなさん 3/18 


サクラ餅づくり 3/19 


『古事記』を読む会
3月10日()。10時半から茶屋町豊栄稲荷神社で開かれた『古事記』を読む会に出席。この日はイズミから「ワ・ワタ・ワタル・water の系譜」と題して研修報告並びに提案をさせていただきました。テキストには、同名の小論(教育・文芸とやま」第24所載。201812月刊)を使用しました。わたしが「ヤ[矢・屋・谷-哉]の系譜…日本人の宇宙観をさぐる」(『コトダマの世界Ⅱ』第19章。桂書房、20177月刊)を発表したあと、ヤ行拗音とならぶものとしてワ行拗音を追いかけまわすようになった動機や,途中で一喜一憂した経過などについてご理解いただきたいと考え、このテキストにしました。以下、要約してご紹介します。

三輪山伝説のナゾ
 わたしが最初に「ワ行拗音がもたらすフシギ効果」に気づいたのは、『古事記』を読む会で「三輪山伝説」(中巻、崇神)」の項を輪読したときのことです。この伝説記事の中に登場するのは、「若い男女のカップル」と「三輪山」と「ミワ[三勾・三巻・輪]の麻糸」などですが、「若い男女のカップルのあいだに赤ちゃんが生まれる」のは、ごくアタリマエの話。フシギでもナゾでもありません。フシギとされるのは、「麻糸をまきつけたワ[勾・輪]をたよりに、男性の身元(=三輪山にまつられる神の子)を確認できたということ、つまりという語音のハタラキそのものがフシギなのです。
 『古事記』が成立したのは8世紀(712)ですが、その数百年前に「三輪山伝説」の原型ができていたと考えられます。邪馬台国女王卑弥呼の時代(3世紀)とする説もあるようです。21世紀のいま、考古学・歴史学などの資料とあわせて、「三輪山伝説」の記事からどれだけの「歴史の真実」を読みとることができるか、それが問題だと思います。
 弓矢とならんで、[]・ワク[]・ワナ[]などが、利器や武器として一定の役割をはたしてきたことはあきらかですが、「三輪山伝説」が生まれた時代には、土器制作の面でも
技術革新がすすみ、ハニワ[埴輪]つくりなどの段階になっていました。ハニワをつくるには、ハニシ[土師]ハニ[埴・赤土](粘土)粘土ヒモのワ[]をつくり、その輪を数段積みかさねてゆきます。単純な作業のようにみえますが、粘土ヒモにどれだけ湿気をふくませるか、その「水加減」ひとつでハニモノ[土物](埴輪の類、ハニヘ〚埴とも)制作作業の成功と失敗がわかれます。その点で、ハニモノつくりには高度の専門技術をもつハニシ[土師]が必要だと考えられていたことが分かります。
 さて、「三輪山伝説」の背景としては、①ミワ[美和・三輪]は、ミモロ[三諸]ともよばれたこと、②三輪山の西麓にオホミワ[大神]神社があり、ミワ[三輪]氏の氏神だったこと、③現代でも、大神神社の登拝者には、「受付」から「下山」まで、きびしい礼節を守ることが求められていること、などの「事実]あげることができます。そして、これらの事実から、三輪氏流の「モノの見方(宇宙観・発想法・言語観)の一端を知ることもできます。たとえば、赤ちゃんがワーワー泣きワメクときの口形が[]の姿であり、そのワメキを聞きつけた人がテダスケしてくれることがあります。客観的にみれば、ワメキ声=タスケをよぶテダテ(手段)ということになります。その点では、ワ[]・ワク[]・ワナ[]などの道具を使ってエモノを確保する(トリワケル)ときと、まったく同じ原理がはたらいているワケです。いいかえれば、コトバの「音形」と「意味(事物の姿)」とのあいだに一定の対応関係が存在することが確認できる状態だということであり、そこではじめてそのコトバが「意思伝達の手段」として一般世間に通用するようになるワケです。
この原理に気づいた三輪一族が、粘土ヒモに湿気をもたせる「水加減」のワザ(技術)を習得して、ハニワなどのハニモノを生産し、地域の人々にゆたかな生活をもたらすことができました。「三輪山伝説」は、このような「モノの見方・宇宙観・言語観」を示す伝説として成立し、その数百年後、『古事記』編纂者によって採用・記録されたと考えられます。21世紀の現代になっても、「三輪山伝説」は一定の人気をもっているようですが、研究者たちのあいだで「音形ワ・ワク・ワナとその意味[]・ワク[]・ワナ[]との対応関係」にかんする議論があまり見あたらないことが気になります。
 『古事記』では、「クサカ[日下]とタラシ[帯]」(序)、「チカツアスカ[近飛鳥]トホツアスカ[遠飛鳥]」(履中)など、語源解説風の記事が見られます。いずれも編纂者の言語観・世界観を示すものと考えられるので、21世紀の言語観・世界観と比較研究する視点も必要だと思うのですが、いかがでしょうか?

ワタ・ワタル・waterのナゾ
 ワ音のコトバとして、ワ[輪・曲・勾]・ワカ[若・稚]・ワキ[腋・傍・別]・ワク[沸・涌・別・分]・ワケ[]・ワナ[]・ワラ[]]・ワル[割・破・悪]・ワレ[割・吾]などについては、マルク、マガルなど、ワ[輪]の姿をもつもの」ということで、なんとか説明がつきました。しかし、ワタ・ワタス・ワタルなどの基本になる音形ワタについては、「音形ワタwataとその意味『海(水)・綿・腸』との対応関係」をドウ説明すればよいか、わかりませんでした。説明のヒントをえたのは、日本語のワタに近い音形をもつ漢語や英語をさがしまわるなかで、英語音water(語根wetからの派生語)を見つけたことです。英語の世界ではウオーターと発音されますが、日本語ローマ字つづり式によめば、ワテルくらい。ワタルとも読めそうなつづりです。また、日本語でも英語でも、動詞(基本形)の語尾に母音ア(-er, -orをつけると、「~する人()」という意味の名詞になります。たとえば、カツ(カチワル)⇒カタ[型]。cutcutter. pitchpitcher. かりにwat-という動詞が成立したとすれば、「wat-するモノ」という意味の名詞としてワタ(wat + a)が成立する可能性があるというワケです。  
 そこで、もういちどワタの音形と意味との関係を考えなおすことにしました。ワタ[海(水)・綿・腸]は、一見したところ、なんの共通点もないシロモノですが、ムリヤリさがせといわれれば、一点だけ共通点があります。それは、「独自のきまった形がなく、ツカマエにくいが、容器さえあれば、そのカタチにあわせてシミ[滲・浸]コミ、シメ[占]ツクスことができることです。とりわけワタ[海(水)]は、固体・液体・気体と変身し、宇宙いたるところにシミワタリ、シメツクスだけでなく、太陽のヒ[日・火](光線・熱線)とならんで、地球上のすべてのイキモノの生死を支配しています。
 このように考えてくると、ワタの音形についても「ワタ=ワ[輪]型のテ[手](タ[手]の交替音)」ということで、説明できそうだと考えるようになりました。
 名詞ワタの語音構造について、わたし自身ナットクできる説明がえられたことから、動詞ワタル(自)・ワタス(他)についても、「ワタ+ル=ワタル(自)」、「ワタ+ス=ワタス(他)」と説明できそうだということも分かリました。
 その一方で、ワ[輪]の意味・用法についても、考えなおしてみました。ただ1個だけの輪で使うこともありますが、多数の輪をつないで使うこともあります。数珠つなぎ式もあり、またクサリ式につなぐこともあります。とりわけ、クサリ式につながる輪の姿は、それ自体ガ「ワタル姿」だともいえます。

仮説の検証が課題
ワ行日本語「ワ・ワタ・ワタル・ワタス」の系譜をさぐる作業の中で、英語water, wet, wash, winter」の系譜との対応関係に気づくことができたのは幸運でした。さっそく「インド・ヨーロッパ語とアジア語との接触・交流があったことの例証」(仮説)として提案させていただきました。ただし、いまのところまだイズミ個人の思いつき仮説にとどまっています。このあと、一人でもおおくの研究者たちに仮説としてとりあげ、議論をつくしていただけたらと願っています。仮説検証に必要なwat音語としては、漢語アツ・uatwoインド・ヨーロッパ語根wed-¹ (基本義water, wet. 派生語water, wet, wash, winter)などの存在がかなり有力な証言とされる可能性があります。とりわけ漢語アツ[]の字形は、「斗(北斗七星)+ ケン[乾]の略態」の会意モジ。北極星を中心に北斗七星が円を描いてめぐることを示す。ケン[乾]は、日が高く登るように、高くあがった旗の姿。太陽や天をあらわす。アッセン[斡旋]は、「めぐり歩く。両者の間に立って、世話する。取り持つ」の意。まさに、ワタル・ワタス姿です。

社会人大楽塾
  3月14日(木)。午後、9fで開かれた「社会人大楽塾」に参加しました。この「大学塾」の売りは、大声で「ワッハッハと笑う」、そして「アリガトウゴザイマスと唱える」ことだと思いますが、回をかさねるごとに、すこしずつ落ちついてきたような感じがします。聴講するがわとしても、ナレ[慣]の効果で、最初に受けた抵抗感がしだいにうすれてきたせいかもしれませんが、講師のがわでも、演出の方法などについて、毎回チエをしぼり、改善をはかってこられた結果かと拝察しています。
 「ワッハッハと笑う」ことが健康によいということは、たしかにそうだと思います。しかし、年をとると、そのへんの筋肉がこわばって、うまく笑えません。「アリガトウゴザイマス」というセリフも長すぎて、一気にはいえません。本人は全文まともにしゃべったつもりでも、じっさいはカスレ声ばかりで、まともな声になっていないことがおおいのです。どうしたらよいか。まずは、発声練習からということになるかもしれません。それも正面から「発声練習」という用語をつかうと、これまたカタクルシイ感じになるので、まずは「なつかしい歌」、「たのしい歌」を耳で聞きとることからはじめ、やがて自分の口で歌ってみようという気分になることを期待する。そういった長期にわたるスケジュールがくまれているということでしょうか。
 この日歌われた曲名は、つぎのとおり。
「笑顔がいっぱい」、「さくら」、「黒田節」、「二人は若い」、「赤い靴」、「手のうた」など。

信子の3回忌法事
315日(金)。午前中に入浴をすませ、午後は6fで散髪もすませました。これで、明日信子の3回忌に向けて、わたし自身でできる準備作業がいちおう終わったという感じです。3回忌の法事をつとめるのは、わたし自身の願いであり、自分の頭で計画を立て、準備作業をすすめるべきだということは分かっています。しかし、いまのわたしには、精神的にも身体的にも、それだけの能力がありません。あれもこれも、すべてMioriさんにダンドリしてもらい、本番ではどうにか着席して、カッコよくふるまう。それだけで、せいいっぱいです。出席される方たちも、およその事情はわかっておられるようで、とにもかくにも99才老人が「元気そうな顔をしている」こと自体がメデタイというワケでしょうか。
 そういえば自分自身、日ごとにゼロ歳児か2~3歳の赤ん坊状態になっていることに気づいて、いろいろ考えさせられています。人間はだれでも、生まれたときは無一物でした。そして,死ぬときも無一物。どれだけの財産知識も無用・無効です。生まれて間もない赤ん坊は、将来富や知識を身につけて長生きできることが期待されるので、メデタイといわれ、高齢者は、若い人から見て、「これくらい長生きしたい」という目標として、メデタイといわれているようです。
 「それは絶対の真理か?」と問われると、「ものの見方の一つ」としかいえません。「ものの見方」は、人により、またバアイによって、さまざまです。たとえば、「赤ん坊や高齢者は、体力もなく、判断力・実行力もなく、ぎゃくに養育・支援・介護が必要な存在」とする見方も成立し、マチガイとはいえません。わたしのバアイは、できるだけメデタイ・タノシイ方向で考えるようにしています。
 316日(土)。いよいよ信子の3回忌当日。午前9時すぎ、Mioriさんが準備した礼服に着かえ、藤木さんのクルマに便乗させていただき、式場長念寺へ向かう。東京の泉進、公美さんはじめ、予定とおり全員参加されたことを確認、ご挨拶する。10時半開式。おかげさまで、長念寺での3回忌法事は無事終了。12時から五万石で、志田常無住職さんのご出席をいただき、参会者一同で会食しました。
解散後、東京組など8名がかんぽの宿合宿しました。この日はもともと「信子の3回忌」だったのですが、いつのまにかわたしの「白寿の誕生祝い」みたいなフンイキになっていました。信子にたいして、ちょっと「スマナイ」気持ちがないではありませんが、わたしがメソメソしているよりは、元気で楽しく生活しているほうが、信子にも喜んでもらえると思い、みなさんからのご好意をありがたくおうけすることにしました。
この夜、寝室へもどってからも、女性陣はずっとおそくまでおしゃべりしていました。

瑞龍寺見学
 17日(月)。せっかく東京からはるばる富山までやってきたのだからと、ついでに高岡まで足をのばして、国宝瑞龍寺を見学しようということになりました。わたしも、国宝指定後の見学ははじめてです。国宝指定にあわせて、北陸新幹線が開通したこともあり、外国からの観光客をふくめ、おおぜいの見学者たちがつぎつぎ訪れているようすでした。それと同時に、ボランテイアだろうと思いますが、瑞龍寺の解説スタッフがそろっており、ていねいに解説している姿が印象的でした。「国際的な観光ガイド」の模範を見せつけられた感じです。 

カラオケ同好会のみなさん
 3月18日(火)。午後9fで「カラオケ同好会」(6名)のみなさんがご自慢のノドを披露する会がありました。曲名は、「箱根八里の半次郎」、[沖縄民謡]、「北国の春」、「大阪しぐれ」など。女性の方が沖縄民謡を舞い歌う姿が印象的でした。

さくら餅づくり 
 3月19日(火)。午後9fで開かれた「さくら餅づくり」の会に参加しました。会場の一画に「さくら餅づくり」コーナーガ設定され、テーブルの上にさくら餅のカワを焼くナベ原材料一式が並べられていました。出席した女性のみなさんは、つぎつぎ上手にカワを焼きあげ、アンコをくるんでおられました。わたしも挑戦してみましたが、まずシャモジですくいあげる分量や、ナベにおいたカワをシャモジのシリでおさえて整形する要領がつかめないなど、かなり苦戦しました。
 そのあと、試食コーナーの席へうつり、ゆっくり試食しました。苦戦したぶん、格別のアジがしました。


2019年3月9日土曜日

満99才になりました


富山城 2/22


悠学会 2/22 


『古事記』を読む会 2/24 


99才誕生日の夕食  2/25


月命日に報告 2/27


豆腐料理 2/27


梅の花拝見 2/27


ひな祭りの昼食 3/3




富山城 

 222日(金)。午後2時半から開かれる日本海文化悠学会の研修会に出席するため、千代田町丸十さんまででかけました。この日は快晴で、タクシーの窓ごしに富山城がスッキリ見えました。たまたまクルマが徐行状態にはいったので、スマホのシャッターを切ったのがこの1枚の写真です。この辺は、ホームのすぐ近くで、本来ならば毎日でも散歩にゆけるはずのところですが、体力がおとろえたイマの状態では、自分の足でここまで散歩にでかける自信がありません。砂町の自宅へゆくときなど、かならず通る場所なのですが,いつもクルマで素通りするだけです。

この日の研修会では、経澤信弘さんと高田美也子さんが「再現、滑川宿本陣殿様御膳」と題して報告されました。当日いただいたレジュメから一部ご紹介します。    

 「中納言様御宿泊につき献立の事」は、瀬羽町の城戸家に伝えられたもの。中納言様とは、加賀藩の第12代藩主加賀前田家13代の前田斉泰

 献立は、文久2414(現在の1862512)江戸から金沢へ戻る途中で宿泊した際、夜の酒肴や朝食に出されたメニューです。この4か月後の閏8月、幕府は参勤交代制度を大きく緩和したことから、この時の道中を日本最後の参勤交代と呼ぶ人も多いようです。天保12(1841)の絵図には、大町の「桐沢本陣」が描かれていますが、天保5年のお梅火事・天保9年の高月焼などにより、「桐沢本陣」は天保9年を以て200年余りの役割を終えていました。替わって小泉屋と共に本陣の役割を果たした養照寺には、天保7(交代)8(参勤)13(交代)、弘化2(参勤)などの記録が残されています。

 何れも浜より上りかけ生きしめ、刺身など磯のごとし。金沢の商人よき道・よき町・よき料理・風味良し滑川を大絶賛。冷蔵技術のない時代、富山湾を背にしたキトキト・トレトレの滑川の魚は旅人を魅了。そんな新鮮な魚を用いた殿様御膳の再現です。



『古事記』を読む会

224日(日)午前10時半から茶屋町豊栄稲荷神社『古事記』を読む会に出席。この日のテーマは前回にひきつづき「天孫降臨について」。針山康雄さんと服部征雄さんが研究報告されました。

針山さんは、神野志隆光氏の「『天孫降臨』ということ」(「万葉を愛する会だより85)を紹介しながら、「天孫という語彙古事記にも日本書紀にも出ていないのに、中世の研究者が使った用語を今の研究者なんの批判もなしに使っているのはおかしい」と指摘し、その視点から「天孫降臨が古事記のクライマックスなのは何故か」、「天孫降臨神話が生まれたのは何故か」、「天孫降臨の地は何処か」などの問題をとりあげ、それぞれの問題にかんする研究者たちの学説についても解説されました。

たしかに『古事記』と『日本書紀』とでは、双方の世界観・歴史観のあいだにかなりのズレが見られるようです。なによりまず、21世紀にふさわしい客観的・合理的な歴史観をもつことが必要だと教えられた思いがします。

 つづいて発表された服部さんは、「天孫降臨の神話は、ある一部の集団が四面を海に囲まれた日本列島に侵入し、次第に勢力を拡大していった歴史上の出来事を象徴しているもの」と認定したうえで、①どのような集団が日本列島に侵入したのか(who)、②最初に上陸したのはどこなのか(where)、③それは何時の時期なのか(when)、古事記・日本書紀を中心に、その実態を推測する作業をすすめられました。当日配布されたレジュメの中から要約してご紹介します。

 これらの侵入者は海を航海してやってきたが、「高天の原から降臨した」と主張する集団(天孫族)であった。古代日本人は、「海と天は、地平線のかなたで交わる」と考えていたようだから、「天からやってきた」と主張してもおかしくない。

 イザナギがミソギを行い、アマテラス・スサノオ・ツクノミが生まれた地が「竺紫の日向の橘のヲド[小門]のアハギガハラ[阿波岐原]」であるとされる記述(記。上、禊祓いと神々の化生)は、ニニギノミコトが上陸する以前天孫族が九州地方に住み着いていたことを暗示している。その集団が「はやと族」であり、隼人族を調べると天孫族の来歴が分かるのではないか。

【古事記に見える隼人】

海彦、山彦の物語

    山彦の道具交換の提案に、海彦が渋々同意した。②山彦が代替の釣り針を出したが、海彦が拒否した。③山彦が兄を経済的に追い詰める。④塩盈珠、塩乾珠を使って、兄を屈服させる。⑤兄を臣従させる。「汝が命の昼夜のマモリビト[守護人]として仕え奉らむ」。⑥隼人のいわれ。

履中天皇

 難波宮にいるとき、弟墨江中王は天皇を殺そうと、御殿に火をかけた。天皇は難を逃れて石上神宮にいた。そこに同母弟の水歯別命が参上したが、反逆の心を疑われる。そこで墨江中王の近習の隼人をだまし、墨江中王を殺させ、さらにこの隼人を殺害したので、天皇は水歯別命(後の反正天皇)を信用した。

はやと 隼人】 はやーひと、はやーびと

 古代南九州に居住していた一部族。主として大隅、薩摩地方に居住。5世紀中ごろから大和朝廷に服属し、勇猛敏捷であったため、徴発されて宮門の警衛、行幸の先駆などを勤めた。大宝令では隼人司が置かれ、6年交代で朝廷に勤番し、勤番後、畿内、近江、播磨などに土着を許された。一方、8世紀の初め隼人の反乱が起こり、たびたび鎮圧軍が派遣されたが、大隅、薩摩の国司に太宰府官人が任命されるようになってから、次第に律令支配体制にくみこまれていった(ブリタニカ国際大百科事典)。

…以下、「隼人関係史」など省略。

 「天孫族と隼人との関係」など、基本的な問題について、わかりやすく解説していただき、「目からウロコが落ちる」思いがしました。それにしても、「自分は日本人だから、日本の国のことはおおよそ分かっている」と思っていたのが、実は「なにも分かっていなかった」ことが分かり、おはずかしいかぎりです。どうぞこのさきもよろしくお願いします。



99才誕生日の夕食 

 225日(月)。いろいろありましたが、おかげさまでどうやら無事に、99の誕生日をむかえることができました。ホームの給食では、朝食のご膳にも「誕生日おめでとうございまし」のカードがそえてありましたが、夕食のご膳には「すまし汁」、「刺身盛り合わせ」のほか、「饅頭」まで用意されていました。ここまで気を配っていただいて、ほんとうにゴチソウサマでした。



信子の月命日

 227()10時半から、長念寺住職志田常無さんにおいでいただき、故信子月命日のお勤めをさせていただきました。わたしとしては、2日前の25日に無事満99歳の誕生日をむかえたことなど、近況報告の場でもありました。また、25日にイズミ本家のさん、公美さん夫妻から誕生日祝いの「お花付き電報」がとどいたばかりなので、その「お花」も信子の写真のわきにそなえておきました。

 この日の昼食は、Mioriさんの提案で、速星駅近くの「梅の花」でということになりました。「梅の花」は「豆腐」や「湯葉」などを中心にした懐石料理で全国展開をしているお店だとのこと。富山市内のデパート大和にも出店していますが、それはお弁当類の販売だけで、食事できるのはこちらだけだそうです。Mioriさんの話では、信子が元気だったころにも、いちどここでいっしょに食事したことがあるとのことでしたが、いまのわたしにはまったく「忘却の彼方」の話です。なにはともあれ、無事満99歳の誕生日をむかえ、信子の月命日のお勤めをすませたことの解放感にひたりながら、ゆっくりと食事を楽しませていただきました。

 豆腐料理でおなかがいっぱいになったところで、お庭を拝見。「梅の花」という名前にあわせて、みごとな梅の木が植えられており、一部すでに開花ずみ、全体としてピンク色になっていました。まわりの世間は、まだまだ冬のさなかですが、ここだけ一足お先に「春が来た」と歌っているという感じです。わたしはあわててスマホのシャッターを切りました。梅の花のピンク色にさそわれて、きれいに手入れされた庭の砂地に入りこんでしまいました。申しわけありません。



ひな祭りの昼食 

 33日(日)。この日は、ひな祭り。昼食のご膳には、まず「ひな祭り」のカードがそられ、「アナゴちらし」、「すまし汁」、「菜の花のお浸し」、「さくらもち」、「甘酒」などがならんでいました。「アナゴちらし」も「さくらもち」も、おいしくいただきました。大きなカップのソコのほうにチョッピリ入っている「甘酒」を口にしているうちに、ママゴトをしている気分になりました。

 ホームでは、3食昼寝つき、めったに外出もしない生活がつづきます^ので、それだけ季節感がうすれ、生命力がよわくなるようです。そこでぎゃくに、「さくらもち」や「甘酒」を飲食することなどで季節感をとりもどし、やがて生命力をよみがえらせるということも考えられます。ただし、「若がえり」、「よみがえり」はよいとして、「どの年代」まで若がえるのかが問題です。わたし自身の実感としては、その着地点青年期壮年期ではなく、幼年期もしくは乳児期くらいかなと考えたりしています。





a-a音の漢語・英語日本語の系譜(第2回)

 前回お約束したとおり、このあと漢語・英語の拗音について、とりわけその「音形と意味との対応関係」について考えてみることにします。ただし、ヤ行拗音については「[矢・屋・谷・哉]の系譜」(コトダマの世界Ⅱ』第19章。桂書房2017)などで報告ずみなので、ここではとりあげません。ここでは、ワ行拗音をふくむ漢語・英語語彙を採集・調査し、「音形と意味との対応関係」、さらには「日本語音との対応関係」について考えてみたいと思います。



ワ行拗音の漢語

 ひとくちで「ワ行拗音の漢語」といいましたが、具体的にどれくらいの種類の音形があるでしょうか?あまり欲ばって、消化不良になるだけでは意味がありません。ここでは「上古漢語の段階で、ワ行拗音をもっていた漢語」にしぼって、語彙資料を採集することにしました。

 先行研究資料が見当たらないまま、手さぐり状態で語彙採集をすすめましたが、予想以上に多数のワ行音が存在していることが分かりました。そこで今回は、(ue, uei, uoなどの音形は後まわしにして)まずua, iua 音をもつものにしぼって採集・調査することにしました。わたしの能力不足で、採集もれになったものも多数あるかと思いますが、すでにかなり大量の「ワ行拗音の漢語」を採集することができました

 以下、基本的に『学研・漢和大字典』の解説にしたがい、「日本漢字音・漢字・原典記載㌻・上古音・現代音・意味用法」の順で表記します。ただし、各項*印以下はイズミの私見。また、漢字の上古音~現代音にかんする解説はこの辞典だけらしいので、参考までに記載㌻を付記しました。

dhiuar…ツキデル・タレル・マガル、輪の姿になる。

スイ垂272 dhiuarchui 垂れる。*稲・麦などの穂が垂れる姿。ワ[輪]の姿になる。

スイ睡898 dhiuar shui. 眠る。眠り。*上マブタが垂れる。

スイ陲1423 dhiuar chui. ほとり。さかい。大地のはて。辺境の地。*垂れさがる姿。

ダ唾237 t‘uar tuo. ツバ。ツバをはく。*ヨダレが垂れる姿。

スイ錘1383 diuar> dui.ハカリのオモシ[重石]。*タル[垂・足]、タラス[垂・足]姿。

ズイ瑞842 dhiuarrui しるし。形のよい玉。めでたい兆候。

uan …タチキル[断切]、ワギリ[輪切]にする姿。

ダン段694 duanduan. きざはし。階段。等級。段階。テダテ。手段。*トントンと上から下へおりる姿。

ダン團260 duan> tuan. まるい。まどか。円形のかたまり。

デン傳57 duan> chuan. 伝わる、伝える。つたえ。つたえられた古い書物。伝記・駅伝。

ダン断579 duan>duan. たつ。上から下へ、ずばりとたちきる。たえる。さだめる。断乎・決断。

duat …ワ・ワクからツキデル。ワクAからワクBへワタル姿。

ダツ奪duat duo. うばう。ぬきとる。

nguar …人が伏せて、半円形(輪型)になる。

ガ瓦847 nguarwa. かわら。*梵語kapalaの音訳から。

ガ臥1073 nguarwo. 伏す。うつ伏せになる。*目だけ上を向く姿。

hiuad…左右両足でカコム・マモル姿。

エイ衛1172 hiuadwei. まもる。まもり。*ワ・ワクをアテ[当]、安全に保つ。

iuag…点(ウ)や線(イ)からア・ワ(輪)に変身する姿。

ウ于35 hiuag>yu. ああ。わあ、ああという嘆息の声。ここに。~において。

ウ吁209 hiuag>yu. ああ。ワっという嘆息の声。擬声語。

ウ芋1089 hiuag> yu. いも。*まるく、おおきい姿。

ウ宇348 hiuag> yu. いえ。大きい屋根のような大空におおわれた世界。宇宙。

ウ雨1444 hiuag yu. あめ。あめふる。うるおす。

ウ羽1032 hiuag yu鳥のはね。矢につけたはね。*2枚のハネが鳥の体をおおう姿。

iuang…①水がワッとワキデルさま。②事物が空間的にひろがり、時間的につづくさま。

オウ王832 hiuang wang. きみ。皇帝の親族。尊称。「大+一印[]+一印[]」の会意モジ。

オウ旺592 hiuang wang. さかん。*四方に光を放つさま。

オウ汪711 uangwang. ①水がひろがるさま。また、ゆたかなさま。u型にくぼんだ大きな池。

オウ往441 hiuangwang. いく。ゆく。過ぎ去る。死去する。過ぎ去ったこと。

ケイ兄103  hiuang xiong. あに。*頭の大きい子を描いた象形文字。

エイ永706 hiuang yong. ながい。ながくする。とこしえに。*水流が曲がりながら長く伸びるさま。

エイ泳1209 hiuang yong歌う。歌。詩歌をつくる。

hiuat…ヒモ(イの姿)を曲げてワ[輪]をつくり、その縁を伝って此岸から彼岸までワタルわざ。

エツ越hiuat yue ①こえる。ぐっとはみ出てきわだつ。遠くへだたっている。ぐっとつまずく。*エツ[越]は、「走+ 音符戉マサカリ」の会意兼形声モジで、からだをかがめ、ぐっと足をひっかけ、のりこえる・ワタル姿。

huad…ワ[輪]の中にはいる。また、輪の姿になる。ワ・ワクの役割=ワタル・ワタスこと。

カイ会53 huad hui. ①あつまり。あつまる。あう。対面する。あう。物事に出くわす。たまたま。かならず。

ワ話1219 huad hua ①話す。はなし。ことば。言語。*たがいにコトバをワタス。

huak…ワ・ワクの中におさめる、ワケル[分・別]姿。

ワク穫948 huakhuo. ①かる。とる。②えもの。カクとも。

ワク獲828 huakhuo.①える。②えもの。収穫物。カクとも。

カク廓424 k’uakkuo. ①くるわ。②とりで。③ガランと中空になったさま。

ゴ護1240 huaghu. まもる。まもり。ワ・ワクでカコム・ワケル[分・別]姿。

huan…ワ[輪]の姿になる。

ガン丸23 huanwan. たま。まるい。まるめる。まる。*人が体をまるめて。しゃがむ姿。

カン桓645 huan huan. 漢代、宿場のしるしとして周りにたてた木。棺を墓穴におろすために四すみに立てる柱。*ぐるりをトリマク、かこむ。ワ[輪]の姿。

カン還1339 huan huan. かえる。ふりかえる。かえす。めぐる。めぐらす。

カン環845 huan huan. たまき。ワ。めぐる。まわる。もどる。

カン宦356 huan huan. つかさ。つかえる。去勢された男で、宮中の奥御殿につかえた者。*ワ・ワクの役割。

カン緩1010 huan huan.  ①ゆるい。(輪の締めつけを)ゆるめる。

カン奐 316 huan huan. あきらか。かえる。*腹の中から胎児をとり出すさま。

カン換 541 huan huan. かえる。かわる。*ワ・ワクをとりかえる。換骨脱胎。

カン患473 huan huan. うれえる。わずらう。うれい。わずらい。

カン喚240 huan huan よぶ。ワイワイ喚く。よぶ。人に声をかける。

uang…黄いろいヒカリの輪がフワフワ広がる姿。

コウ黄1549 huang huang. きいろ。きばむ。*もと、火矢の光が広がる姿。

コウ晃599 huanghuang. ひかる。あきらか。ひかり。

コウ皇881 huang huang. きみ。偉大な王。かみ。上帝。おおきい。

コウ篁967 huang huang. たかむら。大きく広がった竹やぶ。

オウ横667 huangheng. よこ。わきにはみ出た線。東西または左右の線。横たえる。ワクをはみ出る。

huar…ウ(点)音からア(輪)音に変化する(ワッとワキデル)姿。

カ化168 huar hua. かわる。天地自然の変化。接する人の心や生活ぶりを変える。④ばける。

カ貨1252 huar huo. さまざまのものにかえることのできる金銭。財貨。荷物。まいないする。

カ踝1278 hua huo. くびす。くるぶし。はだし。*まるい形。

カ禾929 huarhe. あわ。いね。科本科植物、または穀物の総称。

カ和227 huarhe. やわらぎ。いっしょに解けあったさま。やわらぐ。なごむ。なごやか。声や調子をあわせる。プラスする。

カ禍926 huar huo. わざわい。わざわいする。*落とし穴(ワナ)にはまる姿。

huat…水がワッとワキデルさま。

カツ(クヮツ)活728 huat> huo. ①いきる。いかす。くらす。くらし。水が勢いよく流れるさま。いきいきしたさま。

kiuan…イの姿からワの姿へ。AがBをキル[切・着]・ウガツ[穿] 姿は、(視点を変えれば)BがAをマク[巻]姿。

カン巻402 kiuan juan. まく。まき。単位(書画の数)。

ケン券143  k’iuan quan. 手形。印紙やきっぷ。*ひもで巻いて保存する手形。

ケン捲534 kiuan juan. まく。背をまるく曲げ、苦労して行う。

ケン絹1002 kiuan juan. きぬ。ケン[繭・巻]などと同系。*カイコのマユの姿。

セン穿946 k’iuan chuan. うがつ。穴をあけて、糸を通す。通り抜ける。衣を着る。

カン勧164 k’iuan quan. 進める。口をそろえ、または、くり返してすすめる。進める。仕事やよい案に従うように力づける。

kiuat…エグル・ケヅル・カットする姿。

ケツ缺678 k’iuat que. かく。かける。えぐりとる。かける。たりない。かけめ。

kag…ワッとヒロガル・ヒロゲル姿。

コ胯1060 k‘uagku. ①また。またぐ。*両足を大の字にひらく姿。

コ跨1276 k’uagkua. またぐ。わたる。またがる。また。

コ袴1179 k’uagku. ズボンのように、マタが分かれた衣服。

コ誇1215 k‘uagkua. ほこる。ほこり。おおげさにいう。

カ瓜846 kuaggua. うり。まるくて、割れば中がくぼんでいるうり。

kuan…ウ音の口形からア音の口形にナル。そのナリモノ。また、ツラヌク姿。

カン冠124 kuan guan. かんむり。冠をかぶる。*ワ[輪](中空の姿。

カン官351 kuan guan. つかさ。おおやけ。役人になる。人体いろいろな役目をする部分。政府の官職。

カン館1492 kuan guan. やかた。やど。公用に使う大きな建物。

カン棺653 kuanguan. ひつぎ。

カン管964 kuan guan. 管楽器。穴があいている笛。くだ。つかさどる。ワクをはめてまとめる。

カン菅1111 kuan jian. 草の名。かやの一種。

カン灌782 kuanguan. 水をそそぐ。*水がまるくウズ(ちいさなワ[輪])をなして流れこむ姿。

カン寛365 k‘uan kuan. ひろい。ゆるやか。くつろぐ。ゆるす。

カン盥888 kuan guan. てあらう。たらい。*まるくくぼむ、ワ・ワナの姿。

カン祼925 kuan guan. 酒をそそぎ、神の降臨を祈る儀式.古訓ハタカ。

カン毌697 kuan guan. つらぬく。まるい子安貝を、横線一印で貫くさまを示す会意モジ。

カン貫1253 kuan guan. つらぬく。趣旨や意味が、ひと筋にとおる。なれる。

カン慣489 kuan guan. なれる。*ワ[輪」の中をツラヌク姿。

カン関1405 kuanguan. かんぬき。とざす。せき。物と物とのつなぎ目のカラクリ。かかわる。        

カン串23 kuan guan. つらぬく。うがつ。*貫・慣と同系。 

uar…ワ[輪]の姿をもつかたまり。ワリコム姿。また、輪の中につつみこむ姿。

カ冎122 kuargua. えぐる。まるく穴をあける。くりぬく。カ[渦・蝸]・カツ[]と同系。

カ鍋1386 kuarguo. なべ。

カ蝸1158 kuar wo. かたつむり。*まるいウズマキの姿。

カ果632 kuar guo. くだもの。結果・因果の果。はたす。*木の上にまるい実がなったさま。

カ菓1111 kuar guo. くだもの。

カ裹1183 kuar guo. つつむ。つつみ。

カ窠948 k‘uarke. す。あなぐら。*まるいネグラ。

カ課1224 k‘uarke. こころみる。官吏登用試験。学業・仕事・税の義務としての割り当て。

カ顆1475 k‘uarke. つぶ。まるい頭。土のかたまり。

カ過1325 kuar guo. すぎる。度をすぎる。すごす。あやまつ。あやまち。

カ戈500 kuar ge. ほこ。敵をひっかけて、カギ型にエグル武器。

uat …キ[杵・木]をアテル、ククル、ケヅル姿。カタカタ・ガタガタ・ゴトゴトなど、音がやかましい。

カツ括525 kuat kuo. くくる。結んでたばねる。

カツ刮142 kuat gua. けずる。えぐる。えぐり取るように、財物をとりたてる。

カツ聒1045 kuat kuo. 口でガヤガヤ・ワイワイとさわぐ。かまびすしい。やかましい。

カツ闊1409 k‘uat kuo. ひろい。はるか。ゆるい。ゆるくする。*ヒッカカルものをケズリながら、水が勢いよく流れる姿。

ケツ抉513 kuat jue. えぐる。ゆがけ。矢を射るとき、指先にはめるカギ型の道具。

ケツ決711 kuat jue. 川の水が堤をコ型にえぐって切る、さける、切れる。きめる。きまる。きっぱりと覚悟をきめる。

ケツ玦835 kuat jue. おびだまの一つ。コ型のワ[輪]の姿。

ケツ訣1208 kuat jue. わかれる。きっぱりと、ひと言でいいきった秘伝。

ngiuat…カドの部分がカット(カチワル・カツ[割]・cut)され、のこった部分。

ガツ(グヮツ)月615 ngiuat yue. ①月。まるくえぐったようにかける月。一か月。*[月]は、三日月を描いた象形モジ。まるくえぐったように、中が欠けている月。

nguadケヅル[]・エグル[]姿。

ガイ(グヮイ)外296 nguad wai. ①そと。ほか。遠い地方。そとにする。*[外]は、「卜(うらなう)+ 音符月」の会意 兼形声モジで、月のかけ方を見て占うこと。月がかけて残った部分、つまり、外側の部分のこと。

thiuat…ワ・ワクでトリおさえ、ワキ・ヨソのものから解き放す、ワケル作業。

セツ説1221 thiuat shuo. ①コトバで説きあかす。しばったものを解きほぐす。

tuat…ワ・ワクからツキデル姿。

ダツ脱1063 t’uat tuo. ①ぬぐ。ぬけ出す。

uak…[]・ワク[]でカコム・ワク・ワケル[分・別]姿。

ワク攫828 huakhuo. ①える[]。②えもの(輪・枠の中にトリワケずみ)。カクとも。

uan…まるく曲がる。ワ型のナリモノ

ワン腕1066uan>wan.うで。まるく曲がるところ。中国では、おもに手首のつけね。

ワン碗912uan>wan. まるく曲がった木製の容器。

ワン657uan>wan.まるく曲がった木製の容器。

ワン湾761uan>wan.①くま。まるく曲線をなしてくぼんだ水辺。②いりえ。③まがる。

uar…まるく輪型にくぼむ姿。

カ窩949uarwo.あな。むろ。あなにかくしこむ。カ[冎]は関節の姿。

カ・ワ渦754 uarwo. うず。うずまき。カ[鍋・蝸]と同系。

uat…ワ・ワクをアテル・メグラス・ワタル・ワタス姿。

アツ斡578 uatwo. めぐる。めぐらす。アツ[斡]は、「斗(北斗七星)+ ケン[乾]の略態」の会意モジで、北極星を中心に北斗七星が円を描いてめぐることを示す。ケン[乾]は、日が高く登るように高くあがった旗を示す会意モジで、太陽や天をあらわす。また、カワク[乾・干]意を含む。アッセン[斡旋]は、「①めぐり歩く。②両社の間に立って、世話する。取り持つ」の意。つまり、ワタル・ワタス姿。



a-a音の英語

アメリカの遺産・英語辞典』フロク、「インド・ヨーロッパ語の語根と派生語」の中から、ワ行拗音関連項目を一部紹介します。語根・基本義・派生語の順に表記します。日本語訳および各項*印以下は引用者。

wal- (to be strong強い) valid正当な, value価値, avail役立つ, valor武勇, prevail普及している, wield権力を振るう.*ワ[輪]をふるってワリコム、ワケル(ワケマエをとる)姿。

we- (we) we我々。*ワ[吾]。

webh- (to weave) weave織る.編む, web織物・編物, waferウエハース, waffleワッフル, wave, wobbleよろめく。*ワ[輪]の姿になること。織物・編物はワ[輪]の集合体。 ⇔ワブ[侘](ガッカリ・ガックリ、うなだれて、ワ[輪]の姿勢になる)。

wed-¹ (water, wet湿気) water, wet, wash洗う, winter, whiskeyウイスキー, vodkaウオッカ。*waterは「wa + ter」の語音構造で、「ワ型のテ[手](ツク・デル・トルもの)」の意。固体・液体・気体と変身し、宇宙のスミズミまでシミワタル存在。また、すべての生物の根源でもある。ワタ・ワタル・ワタス。

wed-² (to speak話す) comedy喜劇, melody旋律, parodyもじり詩文, rhapsody狂想曲, tragedy悲劇。*コトバのワ[輪]ワッとデル、ワキデル姿。

weg- (to be strongつよい, be lively生き生きしている) wake¹起きる, waken起こす, watch見守る, wait待つ, vegetable野菜, vigor活力, vigil徹夜。*ワキのものをカキワケ、ワキデル・ワカレル姿。ワク[湧・沸・枠]・ワカ[]・ワキ[脇・湧]・ワケ[分・別]

wegh- (to go行く, translate運ぶ in a vehicleクルマ) weigh¹重さを計る, weight重さ, way, always常に, awayあちらへ, wagon四輪車, vogue流行品, vehicle, via~経由で, voyage航海, convey運ぶ。*シナモノの重さを計り、重量別にシワケル。そのワク[枠]にあわせて、ハコ・クルマ(ハコモノ)・ミチを整備し、効率的にハコブというシステムづくりの中で生まれたコトバ。 ⇔ヰ[韋・違・圍・偉・位]。

wei- (to turn回す, twistよじる) wire針金, ferrule石突, vise万力。*マガル・マゲル姿。

weid- (to see見る) guide案内する, wise賢い, wisdom知恵, idolアイドル, wit機知, view視覚, visa査証, vision見えること, interviewインタビュー, provide提供する、review見直し, idea考え, history歴史, story物語, penguinペンギン。*カキワケ見る姿。

weik-¹ (clan氏族) village, ecology生態学, economy経済。*ワク・ワカレル・ワケル姿。

weik-² (to bend曲げる, wind曲がる) wicker枝編み用の小枝, weak弱い, week週。*前項と同源。

eik-³ (to fight戦う, conquer征服する) victor征服者, evict追い払う。*オシワケル姿。

eip- (to turn回す) wipeこする。ふく, whipムチ, vibrateふるえる。*ワの姿になる。ワナワナ・ワナナク、フルエル、ビビル姿か。ワブ[侘]。

Wekw- (to speak話す) vocal声の, voice, vowel母音, vocation職業。*ワキデル姿。

wel-¹ (to wish望む, will~しよう) well²都合よく, wealth財産, will¹意志, will²~しよう。*ワキデル姿。

wel-² (to turn曲がる) roll転がる, waltzワルツ, willowやなぎ, walk歩く, well¹井戸, wallow転げまわる, revolve回転する, valley谷間。*ワ・ワル・ワレル姿。また、ワがコロガル姿。Walk, waltzは、輪型のワク(枠・コンパス)で、地面をワル・ワケル(=アルク)姿。アルク[歩]。

wer-² (to turn曲がる, bend曲げる) inward内側へ, worth価値がある, version翻訳, convert変える, worry心配する,wringひねる, wrong正しくない, wrestleねじ倒す, wrapくるむ, rhapsody狂想曲, worm虫。*ワ・ワル[割・悪]・ワレモノ・ワルモノの姿。ワル[割・悪]・ワラ[藁]。

wer-³ (to perceive気づく, watch見つめる), wary注意深い, aware気づいて, steward給仕長, rewardほうび, guard見張る, panoramaパノラマ。*ワル・ワレル・ワケル・ワカル姿。

wer-⁴ (to coverかぶせる) weir, cover, garage車庫。*カブル・カブセル・カバウ姿。カワ(カハ)[河・川・皮・側]。

wer-⁵ (to speak話す) word, verb動詞, verve, adverb副詞, proverb。*ワル・ワレル・ワレモノの姿。

werg- (to doする) work働く, allergyアレルギー, energyエネルギー, organ機関。*ワル[]・ヱル[]・ヲル[]・オル[織]などの作業を表わす語音か。やがて成果をエル[得]ことができる。

werse- (to confuse) war戦争, guerrillaゲリラ, worseより悪い, worst最悪の。*ワル・ワレル・ワルモノ・ワレモノの姿。



まとめ

 ここまで、ワ行拗音を中心に漢語・英語の拗音語を採集し、日本語(ヤマトコトバ)との音韻比較資料づくりの作業をすすめてきました。英語音については、先行研究資料「インド・ヨーロッパ語の語根と派生語(一覧表)が公開されているので、その中から該当する用語を採集させていただきました。その点、漢語や日本語については、「日本語(もしくは漢語)の語根と派生語」(一覧表)と呼べるような先行研究が見あたらないので、自己流で作業をすすめ、かなりのテマ・ヒマがかかりました。漢語のワ行拗音については、音形とその意味用

法との対応関係から見て、もうすこしすっきりした分類法にしたかったのですが、学習不足のため、まだまだ未熟なままご覧いただくことになりました。おゆるしください。

それでも、いくつかあらたな発見がありました。漢語についていえば、今回採集した漢語の上古音はすべて母音ua(もしくは iua)をもっています。そして、その音形が表わす意味(事物の姿)を考えてみると、「①(水・空気などが)ワッと、ワキデル姿。②ua音を発声するときの口形が変化する姿。③ワ・ワク・ワナなど、円形もしくはカタマリ (点や直線ではない) の姿」などをあげることができます。

「そんなことぐらいは常識だ。いまさら議論する必要はなかろう」といわれるかもしれません。まさにそのとおりで、コトバの「意味」は,そのコトバの音形が本来もっている「基本義」によって決定されるものであり、これは日本語・漢語・英語を問わず、「コトバの音形とその意味との対応関係」にかんする基本原理だと考えてよいでしょう。

ところが、日本の大学や研究所では、この「常識」や「基本原理」はわすれられているようです。語法・文法面での「外国語との比較研究」は花ざかりですが、音韻面からの比較研究はほとんどゼロの状態がつづいています。インド・ヨーロッパ語にかんする研究水準にくらべて、日本語や漢語にかんする音韻面での比較研究は、すくなくとも数十年遅れていると思います。表意モジ漢字の便利さに気をとられ、漢字の字形をおいかけまわすうちに、「コトバは「口で話し、耳で聞くもの」という常識(=基本原理)をはずれてしまった状態がつづいています。まずは研究者たちに、問題点を自覚していただきたいのですが、これがまたかなりの難題です。

英語については、「インド・ヨーロッパ語の語根と派生語」(一覧表)の中から採集しましたが、wa-型語根wal-1例だけで、あとはすべてwe-型という結果になりました。このことについては、日本語の造語法の原則として、「母音アとエは相互交替の関係にあり、意味は変化しない」とされていることを思いだしました。「母音aeの交替関係」という原則は、日本語だけでなく漢語や英語の造語法にも共通してみられる原則ではないいか?そう考えることにしました。

日漢英のワ行拗音を採集・比較する作業の中で、いちばんの収穫は、日本語ワタ・ワタル・ワタスなどの語音が英語water, wetなどの語音と対応関係にあるらしいと気づいたこと。

さらには、漢語音の中でも同様な感覚をもつ語音が多数成立しており、とりわけアッセン[斡旋]などのアツ[旋]・uatwoがその代表格で、インド・ヨーロッパ語と日本語(ヤマトコトバ)との対応関係を斡旋したことの証言かもしれないと気づいたことです。

 いまのところはまだイズミ個人の「妄想」として無視されるかもしれませんが、アツ[斡]の意味用法は比較的明快なので、このあと考古学・歴史学の資料とつきあわせることで、この用語が成立した絶対年代を特定できるかもしれません。「ワタル・water・アツ[斡]」などの語音が「東洋と西洋にワタル言語交流」の存在を証明できるかどうかの判断資料が出てくることを期待しています。