日本海悠学会研修会
勝興寺・四季耕作図(部分)
「勝興寺本・四季耕作図」に 学ぶ
1月24日、千代田町の 丸十さんで、日本海文化悠学会の 研修会が あり、ふるこはん塾学芸員
針山康雄さんが 「勝興寺本・四季耕作図に学ぶ」と 題して 解説されました。
この種の 絵画には 障壁画・絵巻・屏風絵 などが ある こと、絵巻を 見る 時は、「肩幅の
広さ まで 左手で 広げ、右手で 巻きながら 見る」こと など、基本的な ことを 教えて いただきました。
資料と して「四季耕作図」の カラー コピー(部分)も 配布され、はじめて 見る 絵巻の美しさに しばし 見とれて いました。
質疑応答の 場で、画面に 登場する 人物や 動物・植物 などが 話題に なりましたが、時間の
つごうも あり、「あとは 宿題」と いった 形に なりました。わたしも 家に 帰ってから、宿題の 答案を 考えて みました。
ヤナギ図が 意味する もの
たとえば「四季耕作図」上巻に、松・竹・梅・桜と ならんで 柳が えがかれて います。ナゼ
でしょうか? 現代人の 感覚では、ヤナギは 梅や 桜の ように 美しい 花を さかせる
わけ でもなく、松や 竹の ような 常緑樹の めでたさも 感じられ ません。それがこれだけ 堂々と「四季耕作図」に とりこまれて いる という ことは、当時の
人々に とって、それだけ 重要な 存在だった から としか 考えられ ません。
ヤナギは「矢の木」であり、細く 長く のびる 枝が 矢の 姿を もっています。現代の ような
製材機が なかった 時代、ヤナギの「細く 長く のびる 枝」を つかって、カゴ・サラ・ザル・タル など、たくさんの 日常生活用品を つくる ことが できました。つまり,竹や 藤と ならんで、 工芸品を つくる 天然素材 として 貴重な 存在 でした。
ヤナギは、漢語では ヨウ[楊](ポプラ)と リュウ[柳]に 分かれます。ヨウ[楊]はyangです から、ヤナギと おなじ 発想に
よる 命名 でしょう。ヨウ[揚・羊]と ともに「天空にむかって 高く アガル」イメージを もって います。リュウ[柳]はliuで、リュウ[流]と同音。スラリ・スルリと ウケナガス 姿を もって います。なお、ヤマトコトバの
ラ行音は 基本的にr-音 だけ。また、ラ行音が 語頭に 立つ ことも ありません。
松・竹・梅の どこが メデタイ か?
日本語で「松・竹・梅」と いえば、メデタイ もの と きまって います。松は、常緑樹で不老長寿に
つながる から と されて います。竹に ついても、「邪気を 払う」「力強さが感じられる」など と されて います。たしかに その とおりだと 思いますが、もうすこし
客観的・現実的な 見方も あるように 思います。
松の 葉や 実には 薬効が あり、松ヤニも 資源です。
竹の 葉にも 薬効が あり、タケノコは 貴重な 食料資源 です。また、建築用・工芸用などの 素材 として、藤・柳を しのぐ 重要資源 でした。
梅は、たくさんの 実を ウミダス 植物。
桜は、花が サク 時季 から イネ 耕作の 時季を 判断 できる
植物。
なるほど、たしかに メデタイ 植物 ばかり です。
語源の 面 から
日本語の ヤナギが
語音の 面で 漢語の ヤン[楊]yang と 通じる ことは、さきほど 指摘した とおり ですが、竹や 梅に ついても 同様な ことが いえます。
日本語の タケ[竹]は、タカ[高・竹・鷹]・タキ[滝]・タク「炊・焚・長」・タケ[竹・長・丈・嶽] など と 同系の t-k音語。漢語
チクtiok竹zhuは、チク[築・蓄] など
と 同系の t-k音語。タケ[竹] と チク[竹]は、もと
同源の 1語 だった かも
しれません。
日本語 ウメ[梅]は、ウマ[馬・甘]・ウミ[海・生・産]・ウム[生・産] など と 同族の コトバ。母体 から ムクムク・モコモコ、たくさんの ウミノコ[子孫]が ウマレル 姿。漢語バイmuog梅meiは、マイ[苺]・バイ[媒] など と 同系の
m-k音語。これも、ウメ[梅] と同源の 1語 だった
可能性が あります。
サクラ と
オウ[桜]yingに ついては、音韻の 面での 接点が 見あたり ません。サクラは、動詞 サク[裂・割・咲]・サクル[決]・サグル[探] などの 名詞形に あたる
コトバ。サクラ材の 棒で 地面を ツキサク・ツキサクル・サグル 姿。また、花が サク ぐあい から 耕作の 時季を サグル 姿 です。その点 では、語根sker-2 からの 派生語 circle(サークル), search(サガス) など
との 関連も ゼロ とは いえません。
ハル[春]と ツク[舂] の ちがい
当日 配布された 資料で、「中国と日本の農作業の名称」の 項に「舂碓 臼杵の米搗き」と
ありました。この [舂]は、ハル[春] では ありません(字形下部が [日] では なく、[臼] )。T-n音語 シュン春chun(ハル) と t-k音語 シュ・ショウ舂chong(臼で ツク・クダク) との ちがい です。中国を 理解する のに、漢字は たいへん 便利な 道具 ですが、日本語と 中国語は もともと 別系統の 外国語 同士 です。うっかり すると、とんでも ない 誤解を まねく ことに なり かね ません。
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