2014年6月19日木曜日

オオクニヌシ と スクナビコナ

 
 
『古事記』(小学館版)
 
 
 
 

「古事記を読む会」6月例会
68()午前、茶屋町 豊栄稲荷神社 社務所で、「古事記を 読む 会」の6月例会が ありました。この日は、上巻、「オオクニヌシ[大国主]命」から「オシホミミ[忍穂耳]命」までを、全員で 輪読しました。そのあと30分間ほど かけて、感想や 意見を 出しあい ました。

いまどき『古事記を 読む 会』に 参加しようと いう のは、どんな 動機、どんな 目的があっての こと か?いささか 気になって いた のですが、第3回まで 定例研修会を かさねる 中で、すこしずつ 分かって きました。みなさん たいへん まじめで、客観的・合理的な 議論を とおして 歴史の真実を とらえたいと 考えて おられる ようです。

 

オオクニヌシ と スクナビコナの 関係
『古事記』を どう 読むか は、読む 人の 自由だと 思います。わたし 自身は、『萬葉集』や『古事記』を「古代日本語 研究資料」として 利用する 立場です。ヤマトコトバの 語彙資料を 採集し分析して、その 音韻感覚を たしかめ、音韻組織原則を あきらかにする ため です。日本語の 単語家族(語根と その派生語)の 研究が すすめば、日本語と外国語との 音韻比較研究の 道が ひらかれると 考えて います。

そんな 視点 から、今回の「大国主神」の くだりを 読んで みました。そして、大国主のオオ[]と 少名毘古那の スクナとの 対照に 気づき ました。

大国主神は、オオナムチ[大穴牟遅]・アシハラシコヲ[葦原色許男]・ヤチホコ[八千矛]・ウツシクニタマ[宇都志国玉]などの 別名を もつ 大王です。「大国・大穴・八千矛」などの 表記法も、大規模な 国土、大量の 利器・武器を 支配する 大王 だった ことの 証言と 考える ことが できます。

そして、この 大王の 国づくりを ささえた のが、スクナビコナ です。海外 から 渡来し、農耕の 先進技術を もたらした 神には ちがい ありませんが、ここでは 正体不明の 神として えがかれて います。ナゾを 解く カギは タニクク[谷蟆](ヒキガエル)の 証言。「クエビコ[崩彦](カカシ)なら、きっと 知って いる でしょう。」なるほど、ヒキガエルと カカシは山田の 住人 同士。カカシの ことを クエビコと 呼んで いる のは、それが「地面を 突き崩す」耕具、つまり スキ[]だった から。以前は 突き棒で 地面に アナを あけて 種を まく 式の 作業だった ものが、いまでは 鉄製の 刃先を もつ スキ[]で スクスク 田をスク ことが できる ように なりました。その 先進技術に 敬意を 示して、ヒコ[彦=日子]と 呼んで いる のです。

 

オホ[]  と スクナ[]の 語源
それに しても、オオと いう 語音が「大きい」「多い」姿を 表わし、スクナと いう 語音が「少し」「少ない」姿を 表わす ように なった のは、ナゼで しょうか?(以下、わたしの 独断と 偏見に したがって、議論を いそぎます。ご教示を おまち します)

オオ[]は、もと オホ。動詞 オフ[覆・負・追](四段)・オフ[](上二)・オブ[](四段)などと 同系の コトバで、共通の 基本義(姿)を もって います。古代日本人は、毎日 貝を 食べ、カイガラを 容器と して、また 穴掘り用の 利器と しても 使いました。二枚貝でも 巻貝でも、カイガラは 身を オオウ[] 姿で あり、やがて オオキイ[] 姿を 表わす ことに なります。上代語 名詞 オフ[白貝](ハマグリ[]の たぐい)の 用例が ある ことも 参考に なります。

おおざっぱな 結論として いえば、オホ[大・多]新石器時代(列島各地に 貝塚を のこした 時代)に 生まれた 語音かと 思われます。

スクナは、動詞 スク[]+ナ[名・刃]。地面を スク[] []=スキ[]と いう 語音構造です。スクは、サク[裂・割・咲]・シク[敷・如]・セク[堰・急・咳]・ソク[]などと 同系の s-k音語。動詞 スクを 中心に、2音節語 スガ[]・スキ[鋤・次]・スギ[]スク[鋤・漉・次・助]・スグ[]スケ[]・スゲ[]など、3音節語 スガシ[]スクネ[宿禰]スクフ[救・掬]・スグル[過・勝]スコシ[]・スゴス[]などの コトバが 生まれて います。

これも おおざっぱな 結論として いえば、スクナは 日本列島が 新石器時代 から 金属利器、とりわけ 鉄器時代に 移行する 過程で 生まれた 語音かと 思われます。

ついでに いいますと、漢語でも ジョ・ソdziagchudziagchuと なって いて、t-k音 とも s-k音 とも 解釈でき そうな 語音 です。

さらに いえば、英語 でも scale(ウロコ、目盛り),
science(科学), skill(技術), skin()などは「うすく
サク・スク姿」であり、scoop(すくう)は「s-kしたものを、
そのままクイとる姿」です。
ヤマトコトバのs-k音が 漢語や 英語のs-k音と つながって いる ことの 証言 かも しれません ね。

 

シロウサギ・サルタヒコ など
そのほか にも、シロ[]ウサギ・サルタ[猿田]ヒコ・サルメ[猿女] など、s-rの コトバが 出て きました。これらのs-r音が 動詞 サル[去・曝]・シル[]・スル[摩・擦]や名詞サラ[]・シロ[代‣城]・シロガネ[]などと どんな 関係に ある かも 問題ですが、やがて シラギ[新羅](鉱石をシラグ[精錬]技術者) salt(塩。海水を日光にサラス), silk(絹。シラギヌ), silver(銀。シロガネ)などの 語音に 対応する 可能性も、ない とは いえ ません。機会が あれば、あらためて じっくり 議論して みたい テーマ です。

0 件のコメント:

コメントを投稿