「教員研修が課題」
「危機に立つ文系学部」
「新学習指導要領を諮問」
画像に ついて
①「教員研修が課題」 北日。14.11.9.
② 「国の補助金配分」 北日。14.11.14.③「新学習指導要領を諮問」 北日。14.11.21. いずれも 北日本新聞記事から 借用させて いただきました。
「英語学習 小3 から」の課題
11月9日(日)。北日本新聞に 「英語学習 小3 から…教員研修が課題…政治主導に批判も」という 記事が のって いました。要約して ご紹介します。英語学習を小学3年からに前倒しし、生国5年からは正式な教科にする計画を、文部省が進めている。「アジアトップクラスの英語力」を目標に掲げたが、教員の研修の必要性などが指摘されている。一方で、政治主導で進む英語教育改革に批判もある。
計画では、小学3,4年は、学級担任を中心に指導し、英語でのコミュニケーション能力を養う「活動型」の学習を週に1~2コマ程度行う。
中学校では、卒業段階の達成目標を現行の「英検3級程度」から「英検3級~準2級程度など」に引き上げた。高校卒業段階では「英検準2級~2級程度など」から「英検2級~準1級」とさらに向上を目指す。
特に小学校の教員は今後、専門でない英語を授業で話すことも求められることになる。教員研修が課題となるが、「忙しい教員に研修を受ける時間があるのか」と疑問の声も出ている。
英語教育の改革が進められる背景には、グローバル化が進む中で日本人の英語力が高いとはいえず、政府・自民党や経済界が「日本の死活問題」と危機感を募らせていることがあった。
今後、中央教育審議会などでの検討を経て学習指導要領を改訂。18年度から段階的に先行実施し、20年度から全面実施する。
この記事に あわせて、「識者の声」も 紹介されて います。
鳥飼玖美子立教大特任教授(英語教育論) …文科省には、発音をふくめてしっかり教えられる教員を養成してほしい。教育職員免許法を改正し、第2言語習得理論、音韻論、コミュニケーション学などを習得できるように要望したい…英語を学ぶことは面白いし、英語ができれば全く違う世界を知ることができる、ということを子どもたちには知ってほしい…
藤田保上智大教授(英語教育学)
…一番のポイントは、教員の意識改革だ。ペーパーテストの採点で成績を評価してきた教員が、コミュニケーション能力を評価することになる。いままでとは違う方法を受け入れる必要がある…英語を実際に使うことの意味や手ごたえを感じられる授業を工夫してつくり出すことが大切だ。
「危機に立つ文系学部」
11月15日(土)。北日本新聞の 特集記事「富山大の現在<4>」に 注目しました。要約すると;
…文部科学省は昨年度、全国の各国立大の社会的な役割を示した「ミッションの再定義」をまとめた。それは、少子化を踏まえて文系学部の縮小を検討しなさいという意味だ…富山大人文学部の立川健治教授・学長補佐(近代史)は「目先の利益に結びつかない学問に税金を使うな、ということだろう」と話す…既に文系縮小の流れは、生まれつつある。福井大は、社会科学の領域を担った地域科学過程を2021年度までに廃止すると発表。埼玉大は理工系の大学院を強化する一方、二つの文系大学院を統合するほか、教育学部の定員を4年間で100人減らす方針…人文学部の松崎一平教授・副学長(西洋哲学)は大学を「人生の芯をつくる場」と表現する。学生には社会観や人生観をしっかり形成してほしいし過去の思想家たちがかさねてきた人生の思索と対話することも、大切だと考える…
「新学習指導要領を諮問」
11月21日(金)。北日本新聞に「新学習指導要領を諮問」の 記事が のって いました。11月9日の 記事「英語学習小3から」と 一連の 報道で、要約すると;
下村博文文部科学相は20日、学習指導要領の全面改定を中教審に諮問した。英語教育を充実させるため小学校で教科にするほか、高校では日本史を必修化するなど大幅な改定となる…諮問は「何を教えるか」だけでなく「どのように学ぶか」を重視。自ら課題を発見し、解決する力を身に付けられるように、学習・指導方法の在り方の検討も求めた…中学では日本語を使わない英語の授業を基本とし、高校では幅広い話題で討論できるようにするなど充実を図る…
音韻感覚習得に 効果的な 指導法
日本語でも 英語でも、コトバには キク・ハナス・ヨム・カク4つの 側面が
あります。こんどの 英語教育改革では、これまでの ヨム・カク活動 中心の 学習から キク・ハナス活動 中心の 学習へ 切りかえる ことが 求められて います。ヨム・カク活動では
モジという 視覚資料を たよる ことに なりますが、キク・ハナス活動では 音声という 聴覚資料に たよる ことに なります。キク・ハナス 学習活動の 基本は、事物を
見たり 聞いたり した とき、即座に 日本語や 英語で 表現できる ように する ことです。
日本の 小中学生が コトバを 学習する ばあいで いえば、第1段階で 「ヤマ・カワ・ウミ」
などの ヤマトコトバを おぼえ、第2段階で 同義語として 「サン[山]・ガク[岳]」「カ[河]・セン[川]」「カイ[海]・ヨウ[洋]」 などの 漢語(外来語)を
おぼえ、第3段階で「マウンテン・リバー・シー」などの カタカナ語を おぼえて いる ようです。
ここで「漢語」「カタカナ語」「外来語」などと 呼んで いる コトバは、「もと 外国語」では あっても、「外国語」そのもの
では ありません。すでに 日本語の 文脈の 中で 話され、日本語の 音韻感覚・音韻組織に したがって 発音されて いる から です。もともと 外国語だった ものを、すこし
手直しして、日本語として 認めた という こと です。その結果、どう なるか?日本語の 音韻感覚に あわせて 変化して いる ので、話し手(日本人)が 外国語(漢語・英語など)の つもりで 話しても、相手の 外国人には 意思が 通じないという 現象が おこったりします。
こんどの 英語教育改革は、英語を 外来語として では なく、日本の 第1言語(現代日本語)と ならぶ 第2言語として
活用しようと する こころみです。それには まず、日本語(ヤマトコトバ)の
音韻感覚に かわる 英語の 音韻感覚を 習得する 必要が ありますが、ここで 効率的な 学習指導法が 求められ ます。小中学生は、すでに ある 程度 日本語の
音韻感覚を 身につけて います。「b-とv-」「s-とz-とth-」「l-とr-」など、日本語と 英語の 発音の チガイを 重点的に 練習する ことが
必要な ものも ありますが、あらためて練習する 必要の ない 音形も あります。
教師も 生徒も いそがしい 教育現場です から、みじかい 時間で 大きな 効果を もたらす 学習指導法が 求められ ます。前記
鳥飼 玖美子 教授が 文科省に「教育職員免許法を改正し、第2言語習得理論、音韻論、コミュニケーション学などを 習得できるように」と要望して いる のは 当然の
こと です。
言語観の ズレが 問題
英語教育改革の 政策が 着々と すすめられて いる かに 見える 一方で、教育の 現場、とりわけ 小学校での 準備は おくれて
いる ようです。教師たちが いそがし すぎて、講習を 受ける 時間が ないとの こと ですが、もう 一つの 原因が あり そう です。それは、あたらしい 英語学習指導法の
講習に 必要 かつ 十分な 講師陣が 用意されて いない のでは という 問題です。
いま 日本の 大学や 研究所 などで、日本語と 外国語(英語・漢語 など)との 比較研究はたしかに おこなわれて います。しかし、その 大部分は 語法・文法に かんする ものであり、音韻面 からの
比較研究は めったに 見あたり ません。このような 実情を 考えると、文科省が 計画して いる 教員研修も、実力の ある 講師陣を ととのえる うえで、たちまち
人材難の 問題に ぶつかる のではと 心配に なります。
どうして こんな ことに なった ので しょうか?問題の 背景 には、日本人の 言語感覚の ズレが あると 思われます。英語学習に
かぎった 話では ありません。「コトバ とは、どんな ものか?」「日本語は、いつ・どの ように して 生まれ、どの ように 変化して き た のか?」「日本語と
漢語・英語 などの 音韻感覚は、どこに・どれだけ 共通点・相違点が 見られるか?」こういった 問題に ついて、国語教育や 外国語教育の 場で あまり つっこんだ
議論を して きません でした。
たとえば 小中学校の 国語教育の 現場では、いちばんの 関心事は 漢字の ヨミカキ能力の 問題。ローマ字は 小学校で いちおう
教える けれども、音素モジ として 自由に 使いこなせる までの 指導は できて いません。モジは、コトバという 音声信号を 視覚信号として のこす ための 道具
なの ですが、日本では 漢字だけが 正式な モジと され、カナで サインしても 受けつけて もらえない ことが あります。
文書の 形式に しても、そう です。「公文書の ヨコガキ」は かなり 普及して きましたが、いちばん 基本に なる 「国語教科書」「新聞」「文芸書」などが
いまでも タテガキの姿勢を くずして いません。日本人の 言語観・歴史観が 問われる 問題かと 思います。