ナンカン(カボチャ[南瓜])
カモリ(カモウリ[氈瓜])
画像に ついて
ナンカン(カボチャ[南瓜])と カモリ(カモウリ[氈瓜])の 画像は、ネット
から 借用させて いただきました。本当は 自分の足で ヤオヤさん まで でかけて、写真を とらせて いただく べき ところ ですが、連日の あつさで、それだけの
体力・気力が ございません。おゆるしください。
アピアの フィット・リハで
地鉄稲荷町駅の 近くに ある アピアの フィット・リハに かよう ように なって、半年あまりに
なります。毎週1回 定期的に リハビリの トレーニングを 受ける ことで、これまで「毎日が 日曜日」だった 生活に、一種の
リズムが うまれました。スタッフの みなさんは、その道の ベテランが そろって いて 信頼できます。会員の みなさんも それぞれ 個性的な 方たちで、毎回 顔を
あわせるのが 楽しみです。
リハビリの 内容は、マシンを つかって 筋肉の 機能を 回復・維持 もしくは 促進する
とか、レッドコード(赤い ヒモ)に ぶらさがって 安全を 確保しながら、いろんな
ポーズをとり、それぞれ 特定の 筋肉を きたえる など、カラダの 体操が 主流です。あわせて、認知症予防の ために、アタマの 体操として 「シリトリ」などの コトバ遊びも
くみこまれて います。
先日は「野菜づくし」ゲームの 中で 「ダイコン・ニンジン・ハクサイ・キュウリ・カボチャ」に つづいて、「ナンカン」が とびだし、ひとしきり 話題に なりました。
カボチャの 富山弁、ナンカン
平生 なにげなしに つかって いる コトバですが、漢字で ナンカ[南瓜]と 書いて、どうして カボチャ
もしくは ナンカンと よめる のか、たしかに フシギです。家に かえってから、『広辞苑』(第1版)で しらべて みました。
カボチャ[cambodia・南瓜] (インドシナのカンボジャから伝来したからいう)ウリ科の1年生蔓草。トウナス[唐茄子]とも。
カラウリ[唐瓜] ①キュウリ。 ②トウナス。
トウナス[唐茄子・蕃南瓜] ①東京地方で、カボチャ[南瓜]類の総称。②カボチャの一種。京都付近に栽培し、果体は長く瓢箪形を呈し、表面は平滑または瘤質をなすもの。カラウリ。
ナンカ(ナンクヮ)[南瓜]→カボチャ。
ナンキン[南京] 昔時、中国方面から渡来したものに冠した語。②珍奇なもの、または小さく愛らしいものに冠した語。③南京人の略。④南京焼の略。⑤トウナスの異名。
ごらんの とおりで、カボチャが いろんな 語音で よばれて いる ことが 分かりましたが、ナンカン
という 呼び名は 出て きません でした。そこで、簑島良治さんの『日本のまんなか富山弁』で さがして みると、
ナンカン[南瓜][植]カボチャ。[南瓜]の音読み。
と解説して ありました。これで、ナンカンが 漢語 ナンカ[南瓜]nangua 由来の 富山弁だと いう ことが 分かりました。
それに しても、[瓜]の 漢字音は カ もしくは クヮ であり、カンと よめる はずが ありません。ナンカが いつ・どうして ナンカンに 変化した
のか?ナゾは まだ のこります。
カモリは カモウリの 富山弁
「野菜 づくし」ゲームの 中で、カボチャ・ナンカンの つぎに、カモリ・トウガンが とびだし、ここでも カンカン・ガクガクの イドバタ会議で にぎわいました。
カモリに ついては、『日本のまんなか富山弁』に
カモリ[氈瓜]トウガン[冬瓜]。カモは「セン[氈](毛むしろ)」の古名「カモ」に由来。表面の細毛を指す。
と 解説されて います。これで、カモリは 由緒正しい ヤマトコトバの 出身だと 分かりました。ついでに、『時代別国語大辞典・上代編』(三省堂)の 解説を 見ると、
カモウリ[冬瓜]トウガン。ウリ科1年生のつる性の植物で、若い実の全面が柔軟な毛でおおわれるので、カモウリ[氈瓜]と呼ばれたのであろう。熟した果子を食用にする。種子は薬用。
と あり、カモに ついても いろんな 意味用法が 紹介され
て います。
カモ①[鴨]カモ。マガモ・コガモなど、種類がおおい。秋に北方から来て、春帰る渡り鳥。水辺に群がり住む。
カモ[氈] 毛織の敷物。もうせん。(毛織の敷物)。万葉では「氈」がカモの借訓仮名として用いられる。「妹は珠カモ[氈]」(萬1415)[考]法隆寺資材帳・大安寺資材帳などにも「氈」の例がかなり多く見られる…輸入品があったことも確実だが、現存のものの紋様からみてペルシャ産のものかといわれる。→オリカモ[織氈]
カモ(助詞) 詠嘆・疑問・反語・願望を表わす。[考]語源的にはカ+モであるが、当時2語として意識されたか、1語として意識されたかは、明らかでない。
オリカモ[氈]毛織の敷物。毛氈の類。オリカモ[織氈]か。
k-m音語のひろがり
古代日本人は、k-m音が だいぶ 好きだった ようで、上代語の 段階で 2音節動詞 カム[噛・醸]・クム[組・汲]・コム[子産・浸・籠・込]が 成立して おり、その 動詞 カムのまわりに 名詞 カマ[鎌・竈・釜・蒲]・カミ[髪・上・嚙・神・紙]・カメ[亀・瓶]・カモ[鴨・氈・賀茂] など、動詞 クムの まわりに 名詞
クマ[隈・熊]・クミ[組]・クメ[久米]・クモ[雲・蜘蛛]などが 成立して います。
ここで 注目したい のは、これらのk-m音語が 共通の
基本義を もつ 単語家族として 成立して いる ことです。たとえば
カム[噛]・クム[組]・コム[籠]の 3語は、一見した
ところ 相互に なんの 関係も ない コトバの ように 見える かも しれませんが、じっさいに 声を 出してkamu,
kumu, komuと よみあげ、自分の 耳で ききとり、その 意味を さぐって みると、しだいにk-m音語の
共通基本義が 見えて きます。食品を カム 姿は、上歯と 下歯と 食品を クミあわせる 姿 であり、いいかえれば、上歯と 下歯の あいだに食品を おしコム 姿です。つまり、k-m音語には、k-m音 独特の 基本義が コメられて いるの です。
考えて みると、この種の 現象は 日本語(ヤマトコトバ)に かぎった こと では ない ようです。漢語でも、英語でも おなじような 現象が 見られます。
現代漢語にはk-m音の 音節が ありませんが、上古音では
k-m音語が 流通して おり、その後 k-n音語に 合流して しまった
ことが あきらかに なって います。たとえば カン(カム)kam甘・柑ganや、カン(カム)klam監・鑑jian などが そうです。上歯と 下歯で 食品を
カム姿が カム[甘] であり、カミしめる ことで ミカン[蜜柑]の 甘味を 感じとる ことが できる という わけです。また、日本語では「水を
カム[噛]・コム[籠]」姿の 容器を カメ[瓶]と よんで いますが、漢語でも「水を 張った 大皿」を カム[監・鑑]と よびます。その 水面に 影を うつす ことで 自分の 姿を 見る ことが できる カガミ装置です。この カム[監・鑑]は、もともと 「水を カム 容器」の 意味 から、「そこに 実在する
はずの ない ものの カゲ[影]を カム 容器=カガミ」、「カガミを
見る」、「カンガミル(しげしげと みさだめる)」の 意味に 変化して
きたと 思われます。
英語でも、日本人に おなじみの k-m音語が たくさん あります。
Combination(組みあわせ)や company(仲間。会社)は、「Aと
Bが カミあう、クミあう 姿」であり、その点では compare(比較する)やgame(ゲーム)も おなじ 姿です。さらに いえば、日本語の カミ[髪]は「頭に カミつく 姿」ですが、英語の comb(くし)や cam(機械)も 「頭・髪などに カミつく
姿」です
「ナンカン」「カモリ」など 富山弁の 話から、ついつい 脱線して しまいましたが、k-m音語に かんしては まだ 論じたりない 感じです。富山県にも いる カモシカに ついて、『広辞苑』に
カモシカ[羚羊・氈鹿] (カモ[氈]に織る鹿の意)…モウセン[毛氈]などを織るに用いた。肉は食用。別称、カモシシ、ニクシシ、クラシシ、アオシシ、カマシシ。
と 解説されていますし、また 先日(7月23日) NHK テレビ放送 「歴史秘話 ヒストリア…びわ湖と 日本人、驚きの 秘密を 徹底解明」の 中でも、「京都祇園祭りの 曳山にかざられて いる 絨毯の 素材を 調査した 結果、カモシカの 毛だと 判明した」と 報道して いました。
夏バテの 季節が おさまったら、もういちど あらためて とりあげて みたい テーマです。
0 件のコメント:
コメントを投稿