黑あめ・カリントなど
ワセリンからハンソーコウまで
これまでの作品
また、センベイ・ビスケット・クッキーなどは、歯でかるくカムだけで、サクサク・ザクザク音をたててサキくだけ、スッキリ・シックリ・サワヤカな感じをもたらします。
口にいれて、体のサキワイ[幸]をもとめるオカシについてご紹介したついでに、終局的にはおなじ目的ながら、口からいれるクスリだけでなく、肌にぬったり、ハリつけたりするクスリなどをご紹介することにします。手元にある資料のうち、世間一般に通用していると思われるものをえらんで、スマホにおさめました。ツムラ大建中湯エキス顆粒・同麥門冬湯・強力ホステリンサン(座薬)・ベビーワセリン・ロコイドワセリン・オロナイン軟膏・バンソウ膏・湿布(消炎剤)など。
大建中湯は便秘解消によいということで、毎日朝夕2回のむように処方していただいていますが、それでも毎朝スッキリ排便とはゆかないので、苦労しています。
ベビー・ワセリンのデザイン
画像で紹介したベビー・ワセリンのデザインについて考えてみましょう。結論から先にいえば、観賞用には傑作とされるかもしれませんが、実用品としては失格というほかありません。乳飲み子をかかえた、若いお母さんたちにとっては、この容器のデザインをながめているだけでも、うっとり・楽しい気分になれるかもしれません。しかし、みじかい時間内で、効率よくワセリンを駆使したい人たちにとって、これほど使いがってのわるいデザインは、めったに見たことがありません。使用していないときは、クスリの取りだし口を下にして立てておくので、使用するには、いっぺんひっくりかえして、口をあけ、使用中はずっと寝かせたままにします。かるくて、クネクネ動きまわるので、左手で固定させてから、右手の指さきをつっこみ、適当な分量だけクスリをつまみとることにします。クスリをぬるのに、じゃまにならないよう、左手で衣類の一部をおさえたりすると、容器が固定されていないため、右手指さきにクスリをつけるのに、やたらテマ・ヒマがかかることもおこります。つまり、見た目のカッコよさに引かれて、使う人の便利さ(実用性)を無視したデザインということです。
画像で紹介したベビー・ワセリンのデザインについて考えてみましょう。結論から先にいえば、観賞用には傑作とされるかもしれませんが、実用品としては失格というほかありません。乳飲み子をかかえた、若いお母さんたちにとっては、この容器のデザインをながめているだけでも、うっとり・楽しい気分になれるかもしれません。しかし、みじかい時間内で、効率よくワセリンを駆使したい人たちにとって、これほど使いがってのわるいデザインは、めったに見たことがありません。使用していないときは、クスリの取りだし口を下にして立てておくので、使用するには、いっぺんひっくりかえして、口をあけ、使用中はずっと寝かせたままにします。かるくて、クネクネ動きまわるので、左手で固定させてから、右手の指さきをつっこみ、適当な分量だけクスリをつまみとることにします。クスリをぬるのに、じゃまにならないよう、左手で衣類の一部をおさえたりすると、容器が固定されていないため、右手指さきにクスリをつけるのに、やたらテマ・ヒマがかかることもおこります。つまり、見た目のカッコよさに引かれて、使う人の便利さ(実用性)を無視したデザインということです。
前回「s-s音日本語の基本義」をとりあげたのにつづいて、今回は「s-音漢語の基本義」をとりあげます。ただし、ざっと見たところ、s-子音ではじまる漢語音は比較的少数派のようです。さらにいえば、s-s音タイプの漢語は、上古漢語から現代漢語にいたるまで、1個も成立していません。日本語ではs-s音グループが多数派だったこととくらべて、きわめて対照的です。
dzieg
シ士291 dzieg>shi.①おとこ。②中堅の役人層。③知識人。④士・農・工・商の四階層の最上の層。⑤りっぱな男子。⑥兵隊。特に士官のこと。男の陰茎の突きたったさまを描いた象形モジで、オス[牡]の字の右がわにも含まれる。シ[仕]・ジ[事]と同系。*ヤマトコトバの動詞ス[為]の連用形シやシゴトのㇱ[仕]などとの間に、対応関係が認定されるかもしれない。日本漢字音がシで、s-音語との関連もありそうなので紹介しましたが、まともなs-音語ではありませんので、今回は議論の対象からはずします。
ジ事33 dzieg>shi.①こと。用事。仕事。②できごと。③こととする。問題として、処理する。④つかえる。そばに立って、雑用をする。「中央の部分の計算用竹のクジ+手」の会意モジで、役人が竹棒を筒の中に立てるさまを示す。*今回はs-音ではじまる語だけを取りあげることにしていますが、dz-, ts-タイプの語は多数あります。やがて検討すべき語音だと思います。
sag
ソ素 967 sag>su. ①より糸にする前のもとの繊維。絹の原糸。②人工を加えたり、結合したりする前の、もととなるもの。③生地のまま。飾りけのないさま。//「垂の略体+糸」の会意モジで、一すじずつ離れて垂れた原糸。疎・索などと同系。*手でサワル・サク[裂・割]・サグル姿。
ソ酥1354 sag>su. ①牛や羊などの乳を煮つめて.その上層の部分でつくるバター分の多い食品。クリーム。②油けの多い、もろい菓子。//「酉+音符蘇の略体」の会意兼形声モジ。煮つめて、歯切れのよい半固体となった乳製品。*サクサク・ザクザクとサク・サケル姿。
sak索 987 sak>suo. ①なわ。なわなう。細い繊維やひも。なわをよる。②規律を引きしめるつな。とり締まりの方法。③いとやひもを引き出す。④手づるによってさがしもとめる。⑤はなれる。バラバラに分解してしまう。//一本ずつはなれた細い繊維。転じて、細い引きづな。*基本的には、サク・ソグ姿。⇔サク[裂・割]・ソグ[削]。
sam
サム三 8 sam>san. ①みっつ。②順番の三番目。③いくつも。④みたび。三回。⑤たびたび。//三本の横線で三を示した指事モジ。参・森などと同系。また、杉・衫・などの音符彡の原形で、いくつも並んで紋様を成すの意味を含む。*上下二本の横線のスキマに三本目の線がスミコム(シミコム・シノビコム・フサグ)姿。絶対数の「三」を意味するまえは、「漠然多数」を意味していた。→「三々五々」。
サム参192 sam>san. ①みつ。みっつ。②まじわる。③仲間入りする。④二十八宿の一つ。からすき。オリオン座の三ツ星。//三つの玉のかんざしをきらめかせた女性の姿を描いた象形モジ。入りまじって、ちらちらする意を含む。三・森・杉などと同系。*前項サム[三]とともに、日本語のサム[醒・寒・冷]・シム[染・占・示]・スム[住・澄]・セム[責・迫]・ソム[染・始]などに通じそうな語音。⇔サム[醒・寒・冷]・セム[責・迫]・ハサム[挟]。
san
サン散 570 san>san. ちる。ちらす。ちりぢりに四方に分かれる。ばらまく。②金や財産をばらまく。③固まっていない粉状の薬。//竹の葉、麻の実・皮などをばらばらにハギとるさま。霰(あられ)・傘・山(分水嶺)と同系。また、砂・殺とも縁が深い。*ヤマトコトバの動詞サヌ(寝る)や名詞サネ[核]などとの音韻対応関係が考えられます。たとえば、男と女が出会い、いっしょにネルことになったとします。サ[矢・箭]・サネ[核・実](男性器)を中心に、サヌ[寝]・ナク[哭・鳴]・ナム[嘗]・ナス[為・成]ナル[成・為・鳴]・ニギル[握]・ニグ[逃]・ヌク[抜・貫]・ヌグ[脱]・ヌル[塗]・ヌレル[濡]・ネル[寝・練]・ノク[除]・ノル[乗・宣]など、心身とも「雲散霧消」の思いを体験することになるというわけです。⇔サヌ[寝]。
sar
サ砂 908 sar>sha. すな。ごく細かい岩石の粒。いさご。小粒で、ざらざらとした物。「石+音符沙(小さい)の略体」の会意兼形声モジで、シャ[些]と同系。*ヤマトコトバのスナ[砂]は、岩石が水の流れでスル・コスル作業の結果として生まれた微粒子。S-音の基本義は、日漢両言語にわたって共通していると考えられます。
sat
サツ殺 695 sat>sha. ①ころす。刃物でそいで切る。②けずりとる。③すさんださま。//「メ(刈りとる)+朮(もちあわ)+殳(動詞の記号)」のの会意モジで、もちあわの穂を刈りとり、その実をソギオトス[削落]ことを示す。サン[散]と近い。*サツ殺satの語尾子音を、ハレツ音-tのかわりに鼻音-nとしたものがサン散san。ヤマトコトバのサヌ[寝]も、その同類かと思われます。
sek
ソク塞 283 sek>se. ①ふさぐ。スキマをつめて、通れなくする。②ふさがる。「宀(やね)+工印四つ+両手」の形が原形。両手でカワラや土を持ち、屋根の下の穴をふさぐことを示す会意モジ。のち、土を加えてソク[塞]の字となる。*くわしくいえば、1ソクsek>se, フサグ、2サイseg>sai, とりで。ヤマトコトバでも、水の流れを「セキとめる」姿は、そのまま「フサグ」、「フセグ」姿をあらわしています。これも、s-音の基本義が、日漢両言語にわたって共通していることの例証とみてよいでしょう。⇔セク[堰・塞]。
sem
サム杉 627 sem>shan. すぎ。スギ科の常緑高木。幹がまっすぐなので、建築用材として多く使用される。//「木+音符彡」の会意兼形声モジで、細かい針葉がたくさん並んだすぎの木。
sen
セン洗 731 sen>xi. ①あらう。すすぐ。足の指の間に水を通してあらう。②水で洗い去ったように、すっかりなくなる。//「水+音符先」の会意兼形声モジで、細いスキマに水を通すこと。*s-n音日本語でいえば、シナフ[靡]・シナム[匿]・シナメク・シナユ[萎]・シヌ[死]・シネ[稲]・シノ[小竹・篠]・シノグ[凌]・シノビ[密]・シノフ[偲]・シノブ[忍・隠]などに通じる語音。
ser
セイ西 1190 ser>xi. ①にし。日の沈む方角。②西洋の略。③仏のいる死後の世界。西方に向かって進む。//ザル・カゴを描いた象形モジで、セイ栖(ザル状の鳥の巣)にその原義が残る。ザルに水を入れると、さらさらと流れサル[去]ことから、日の光や昼間の陽気が流れ去る方向、つまり西を意味することになった。セイ[洒](サラス)・セン[遷](形をのこして、中身がうつり去る)と同系。⇔ザル[笊]。
サイ細 992 ser>xi. ①ほそい。②こまかい。//もと、小児の頭にある小さいスキマにある泉門を描いた象形モジ。細は、これを音符とし、シ[糸](ほそい)と合わせた会意兼形声モジで、小さく細かく分離していること。セン[先・洗]などと同系。*セル[迫・競]・スレル[擦]ことによって、サケ[裂]て、スキマができる姿。また、いっしょにくっついていたものが、ハナレ[離・放]サル[去]姿。
siag
サ些 39 siag>xie. 1いささか。少しであること。②楚の国の歌で、句末の間拍子に用いる助詞。//「此+二印(並べる)」の会意モジで、いくつかのものをざっと並べるの意を示す。煩瑣の瑣や砂と同系。*こまかくサク[裂・割]。・サグル[探]姿。また、サグリ出したエモノ。さらにいえば、サガ[性・相]の姿。
siam
セン繊siam>xan. ①ほそい・ちいさい。ほそぎぬ。②こまかい。ケチである。//繊は、「糸+音符籤(小さく切る)の会意兼形声モジ。楔(くさび)・孅(か弱い)と同系。*上古音siamの語尾子音-mは、やがて(三・参・杉・心と同様)-n音に変化した。
sied
シ四 256 sied>si. ①よつ。よっつ。②四番目。③四たび。四たびする。④よもに。四方から//古くは一線四本で示したが、のち四と書く「口+八印(分かれる)」の会意モジで、口から出た息がばらばらに分かれることをあらわす。死(生気が分散し去る)・西(昼間の陽気が分散し去る)と同系。
sieg
シ斯 580 sieg>si. ①きる。さく。バラバラに切り離す。②これ。この。③すなわち。ここに。//「其(=箕。穀物のごみなどをよりわける四角いあみかご)+斧」の会意モジで、はものでミ[箕]をバラバラにさくことを示す。*s-k音の日漢両言語とも、「サク・シク・スク(スキマをあける)・スグ・セク・ソグなど」の基本義を共有していることの例証。
sieng
ショウ省 891 sieng>xing. ①みる。目を細くして、注意してみる。②かえりみる。③親の安否をよくみてたしかめる。//「目+少」の会意モジで、目を細めてこまごまと見ること。*目を細くして、わが身のサガ[性・相]をサグル[探]姿。
siep
ジフ渋746 siep>se. ①しぶい。なめらかでないさま。訓のシブは、漢語音シフの音訳からと思われる。②しぶる。なめらかに動かず、ぐずぐずする。③シブ。しぶい味。//もとの字形は、「下向きの足二つ、+上向きの足二つ」の会意モジで、足がうまく進まず、停止することを示す。ジフ[渋]は、これを音符とし、水にそえて、会意兼形声モジをつくり、簡略化した字形。*日本語のサッパリ・ザブリ・ザンブリ・シャブシャブ・ジャブジャブ・シャブル・シャベル・ショボイ・ションボリ・スパスパ・ズバズバ・ズバリなどに通じる語音。
sier
シ死 689 sier>si, ①生物が命を失って、その機能やからだが分散する。②死刑にする。③死ぬこと。また、死んだ人。//死は、「歹(ほねの断片)+人」の会意モジで、人が死んで、骨きれに分解することをあらわす。細と同系。*スリ[擦]切れる姿。
シ私 929 sier>si, ①わたくし。自分ひとりのこと。②自分ひとりの利益や考え。③ひとりだけの。また、かってな。④わたくしする。//シ「ム」は、じぶんだけのものを腕でかかえこむさま。私は「禾(作物)+音符ム」の会意兼形声モジで、収穫物を細分して、自分の分だけをかかえこむこと。四・細などと同系。*オオヤケ[公]のために仕上げた仕事のハシ[端]キレ、スリ[擦]キレ・シリ[尻]キレを、日当として持ち帰る姿。
siog
シ史205 siog<shi。①ふひと。②ふみ。歴史書。「中(竹札を入れる筒)+手」の会意モジ。*地面や石・竹・木の表面をソグ[削](キザミ[刻]ツケル)姿。
シ思464 siog>si. ①おもう。こまごまと考える。②物おもいに沈むさま。③おもい。もともと「シクシク・ヒクヒク動くもの」として、アタマ(頭脳)とココロ(心臓)をならべて描いた会意モ性と、かがんでその女性の上に乗った男性とが体をすりよせて成功するさまを描いた象形モジ。セックスには容色が関係することから、顔やすがた、いろどりなどの意となる。また、すり寄せる意を含む。則・即・塞などと同系。*日本語のシク[敷・布]・シクシク[益々]・シゲ[繁・茂]・シゲル[茂]・シコ[醜]・シコヅ[讃・讒]・シコメ[醜女]・シコルなどに通じると考えられる語音。
シ司204 siog>si. ①つかさどる。役目を担当する。②つかさ。役人。③役目の名。→司馬・司徒・司空。④役所。→布教司・按察司。//「人+口」の会意モジ。上部は、人の字の変形。下部の口は、穴のこと。小さい穴からノゾクことをあらわす。覗・伺・祠の原字。
ショウ小374 siog>xiao. ①ちいさい。②ちいさいと思う。軽んじる。③ちいさい者。幼い者。④自分側のことを謙そんしていうことば。⑤すこしく。⑥しばらく。//中心の丨線の両わきに点々をつけ、棒を削ってちいさく細くそぐさまを描いた象形モジ。消・宵・肖・削などと同系。*日本語のチヒサク[小]も、「チヒ[千梭]+サク[裂・割]の構造。⇔サク[裂]・ソグ[削]。
ショウ消 735 siog>xiao. ①きえる。けす。小さく細る。②ついやす。すごす。//「水+音符肖」の会意兼形声モジで、水が細ること。*ソグ[削]姿。
サク削 146 siog>Xiao. ①けずる。刀で細くけずる。そぐ。②切りとる。竹や木に書いた誤字をけずる。//「刀+音符肖」の会意兼形声モジで、刀で細くけずること。小・肖の原義をあらわす。⇔ソグ[削]
siok
ソク息 471 siok>xi. ①いき。呼吸。②息をする。③いきづいて生存する。子孫をうむ。④やすむ。いこう。⑤やむ。やめる。休止する。とだえる。⑥むすこ。⑦利。//「自(はな)+心」の会意モジで、鼻からスース―息をすることを示す。狭い鼻孔をこすって、いきが出入りすること。すやすやと平静にいきづくことから、安息・生息などの意となる。また、子孫を産む→むすこの意ともなる。ソク[塞]と同系。*男性器が女性器をフサギ[塞]、タラシ[垂・足]、精子をタラシ(ソソギ)こみ、やがてムスコ[息子]をムス[産]姿。
シュク宿362 siok>su. ①やどる。泊まる。②ねぐらで休む。③一夜とどめて置く。④星座。北斗七星を軸として、天空を二十八宿にわける。⑤前世。前世からの。//原字は、四角いものが縮んで、しわのよったさま。また、囗印であらわされるふとんに、二人の人が縮んで寝るさまと考えてもよい。縮・粛などと同系。
シュク縮1015 siok>su. ①ちぢむ。ちぢめる。ちぢれる。ちぢこまる。小さく少なくなって、足りない。③したむ。酒袋をぎゅっとちぢめて、さけをしぼる。④引きしまっていて、ゆるみがない。//「糸+音符宿」の会意兼形声モジで、ヒモをぎゅっとしめて、ちぢめること。束・粛などと同系。
シュク粛 1050 siok>su. ①ぐっと引きしめる。②つつしむ。身を引きしめてかしこまる。③しずか。音ひとつしない。//「聿+淵の略体」の会意モジで、筆をもって深い淵のほとりに立ち、身のひきしまるさまを指す。
ソク束 628 siok>shu. ①たばねる。つかねる。たてにそろえてしばる。細く縮めて、一つにまとめる。②動きがとれないようにしばる。心や行動の自由を制限する。③たば。ほそくしめてしばり、ひとまとめにしたもの。//「木+〇(たばねるひも)」の会意モジで、たき木を集めて、そのまん中にヒモをまるく回してたばねることを示す。速・捉・縮・竦な同系。
siuat
セツ雪 1445 siuat>xue. ①ゆき。②ゆきがふる。③すすぐ。そそぐ。ヨゴレを去って、きれいにする。清める。//もと「雨+ススキの穂でつくったホウキ[箒]」の会意モジで、万物を掃き清めるゆき。刷・刹・涮と同系。*シ[仕]アテル[当]・シワ[皺]シワにする姿。
suat
サツ刷 143 suat>shua. ①する。さっとこする。②はく。清める。ごみをとり去る。③はけ。ブラシ。//刷の左半分は、もと「尸+巾(布)」の会意モジで、「人が布でしりの汚れをふきとる」意を示す。刷は、殺と同系で、雪とも縁が近い。
suen
サン酸 1355 suen>suan. ①す。すっぱい液体。穀物や乳を発酵校さっせたり、果物の汁を取ったりしてつくる。筋骨をスマートにし、体をやわらげる作用があるとされた。②すい。酢のような味がする。すっぱい。③酸性をおびた水素化合物。水にとけると、水素イオンを生じ、リトマス試験紙を赤くする。*スル・スリヘル・スッパイ・シビレル感覚。
ソン孫 345 suen>sun. ①まご。子の子。②祖先の血筋を引く者。//「子+糸(小さく細い)」の会意モジで、小さい子どもを示す。のち、右側に系をそえるが、系もまた、つないだ糸のこと。子の系統をひくいちだんと小さい子、すなわち、まごのこと。遜(遠慮する)・損(へらす)などと同系。*日本語のスナ[砂]は、「su+na」の構造ですが、「sun+a」の構造と解釈することもできます。岩石が水流のスル・コスル作用を受けた結果としてうまれた微粒子。つまり、スナ[砂]は、セキ[石]が水流によるソン[損]をうけたソン[孫](子孫)に当たると解釈してよいかと思われます。スナハチ[即・則]も「スナ[砂]ハチ[鉢]」=「ソン[損]suenされた鉢」=「クホメられたナリモノ」=「スナで作られた、植物容器」。Aと呼んでもBとよんでも、その実態はそっくり同じということでしょうか。
ソン損 546 suen>sun. ①そこなう。一部分を穴をあけたり、こわしたりする。また、勢力を小さくしたりする。くぼませる。②減らす。また、減る。③へりくだる。うしろに下がる。④利益を失うこと。④周易の六十四卦の一つ。中の欠けたさまを示す。員は、口のまるくあいたカナエ[鼎]の姿。損は、「手+員」の会意モジで、まるい穴をあけて、くぼめること。くぼめて減らす、の意を持つ。*スリ[擦]切れる姿。前項で、日本語スナ[砂]と漢語ソン[損]との音韻対応関係について指摘しましたが、スネ[臑・脛]・スネル[拗]とソン[損」との対応関係を考えるのもおもしろいと思います。
suk
ソク速 1316 suk>su. ①はやい。すみやか。はやめる。②まねく。せきたてる。//「辵(足の動作)+音符束」の会意兼形声モジで、間のびしないよう、間をつめていくこと。促・縮などと同系。*やがて日本語サク[裂・割]・スキ[鋤・好・隙・透・漉・空]・スク[鋤・空・好・酸・透・漉・梳]・スグ[直・過]・セク[堰・急・咳]・ソグ[削]などに通じると考えられる語音。
thiuer
スイ水704 thiuer>shui. ①みず。外枠に従って形を変え、低い所に流れる性質をもつ液体の代表。火に対して水といい、湯に対して水(特にっ冷たい水)という。また、柔弱なものの代表。②川や湖のある場所。③河川の名につけることば。④水星の略。⑤五行の一つ。方角では北。色では黒。十干では壬と葵。五音では羽に当てる。⑥割増金や手当。//水の流れを描いた象形モジ。追(ルートについて進む)・遂(ルートに従ってどこまでも進む)と同系。その語尾が-nとなったのが順や巡。*t-系の語音ですが、舌の先をごくウスク・ソリかえった姿にして、ハグキにスミこませ、シミこませる感覚で発声した語音です。あるいは、スミ[住]こむ姿、スヒ[吸]こむ姿とも、解釈できそうです。スル[擦]・ソル[剃]行為の結果として、スリ[擦]キレル・スリカワル・ソリ[剃]オトス・ソリ[反]リカエルなどの現象があらわれます。なお、日本語ミズ[水]の歴史カナヅカイはミヅ[御津・産津]で、「ウミダスもの」の意をあらわします。イズミ[泉]も、もとイヅミで、「イヅ[出]+ミ[水]」の構造。
tsag
ソ祖 923 tsag>zu. ①世代をかさねた昔の人。また、先祖のみたまや。②じじ。祖父。③はじめ。その仕事や教えをはじめた人。//「示(祭壇)+音符且」の会意兼形声モジで、世代のかさなった先祖のこと。ジョ[助](力を重ねる)・ソ[組](ヒモをかさねて組みひもを編む)などと同系。*日本語のツク[付]・ツム[積]などと通じあう感覚の語音ですが、ts-音なので、今回はとりあげません。
tsiek
ソク即 187 tsiek>ji. ①つく。すぐそばにくっつく。②すなわち。すぐさま。人がすわって、食物を盛った食卓のそばにくっついたさまを示す会意モジ。ソク[則・側]と同系。*はじめ (dzien項) に記したとおり、今回は、マサツ音s-ではじまる語だけを採集することにしています。
まとめ
どうやらs-音漢語をひととおり採集することができたかと思います。漢語の音節タイプの中で、s-音タイプはやや少数派かなと推測していましたが、じっさい採集作業をすすめた結果、s-s音タイプがゼロとまでは予想していませんでした。日本語s-s音語では、上代日本語の段階で、2音節動詞5個(サス[刺・指・閉]・シス[死]・シヅ[垂]・スス[煤]・セス[為])、名詞多数(ササ[笹・酒・シシ[肉・獣]・サシ[城]・サス[交叉]・スシ[鮨])・スス[煤]・スズ[鈴]・スソ[裾]・セゼ[瀬瀬]、形容詞(サシ[狭])、形状言(ササ)などが成立していることにくらべて、意外な感じがします。
s-音漢語の構造については、上古漢語の段階で、s-k, s-m, s-n, s-p, s-r, s-tなどの各タイプが成立していることからみても、s音のくりかえしをきらったためとは考えられません。それでは、いったいどんな理由、どんな事情があったのでしょうか?
身近なところで、日本語の場合はどうだったのか、考えてみましょう。縄文時代から弥生時代・古墳時代・大和朝廷時代にかけて、日本語の基本音形がかなりはげしく変化したことが指摘されています。たとえば、現代語でサムイ[寒]samuiというところを、縄文人はチャップイ・チャップイといっていたとする説があります。縄文時代は、原始時代に近く、水田農耕がまだはじまっていない時代=弓矢がもっとも先進的な利器・武器とされた時代。栽培農耕といえば、タロイモをうえるために、竹や木のツエ(棒)を地面にツキ立てアナをあけるくらいの作業でした。それがスキ・クワによるイネ農耕がはじまったことで、日本列島改
造計画がすすめられ、やがて大和朝廷成立の日をむかえます。その変化の中で、コトバの面でも、ツク・ツエなどのt-(ハレツ音)からスキ・スクなどのs-(マサツ音)への音韻変化がおこりました。
これとおなじような変化が、漢語の世界でもおこったことが、十分推察できます。これまでt-音で表現してきた「感覚」ですが、t-音からs-音に切りかえたほうが、より正確に「感覚」を表現できると確信したことによる音韻変化です。s-sタイプの音節がゼロというのも、そこまでは、できなかった」ではなく、「そこまでしなくてもよかった」からとも考えられます。
具体的に見て、どんな音形のs-音漢語が成立し、どんな基本義をあらわしているか、また、s-音日本語とくらべて、どんな対応関係を示しているといえるでしょうか?今回とりあげたs-音漢語それぞれの項で、気づいたことを指摘してきましたが、あらためて総ザラエしておきましょう。
音形と意味との対応関係
s-音漢語の音節は、基本的に「s+母音+子音」という音形構造となっており、これら3要素がそれぞれもっている基本義を総合したものが、その音節の基本義を構成することになります。現代漢語の実態は、「索suo・砂sha・殺sha・西xi・細xi」などのように、語尾子音(k, r, tなど)が脱落したものも多数ありますが、その意味用法の面では、上古漢語時代の基本義がそのまま残されています。時間ゃ場所が変化したからといって、そのコトバの意味内容が変化するようでは、脱線・転覆のような事故がおこり、コトバによる意思流通回路が機能しなくなります。その点から考えても、「音形と意味との対応関係」をたしかめておくことが作業の基本だと思います。
民族のカベを越える同音語
上古漢語s-k音と日本語s-k音とを並べて、音形と意味との対応関係を観察してみました。国籍や民族のカベを越えて同音・同義語がうまれていることが見えてきます。
sag 素・酥…サク[裂・割・咲・避・離・放]。
sak 索…サク[裂・割・咲・避・離・放]・サガス[探]・サクル[決・刳]・サグル[探]・ソグ[削]。
sam三・参…サム[覚・醒・冷・寒・褪]・サマ[様・態・狭間]・サマス[覚・醒・冷]・サメル[覚・醒・冷]・ハサム[挟]・ハサミ[挟・鋏]。
sar砂‣//ser西・細…サル[去]・ザル[笊]。
sek塞…セク[堰・急・咳]。
ser 西・細・晒…サル[去・曝]・サラ[皿]・サラス[曝]・サラニ[更]・サラサラ[更更]・サラリ。
sieg 斯…サク[裂・割]・シク[敷・布]・セク[堰]・ソグ[削]・シキリニ[頻]・シキル[重・仕切]。
siep渋…シブ[渋]・シフ[強]・シフ(不具・廃疾になる)・シホ[潮・塩]・シブル[渋]・シビレル[痺]。
siog史・思・司・小・肖・消…サク[裂・割]・スク[鋤・送・漉・次・助・空]・スグ[過・直]・ソク[退](離れる)・ソク[除]・ソグ[削]・チヒサク[小]・スコシ[少]・スキ[隙・透・好・隙・漉]・スキマ[隙間]・ソコ[底・其処]。
siok 息・宿・縮・粛・束…スク[鋤・送・漉・次・助・空]・スクム[竦]。
suen 酸・孫・損…スナ[砂・沙]・スナドル[漁]・スナハチ[即・則]・スナホ[素直]・スネ[脛]・スネル[拗]。
suk 速…スク[鋤・送・次・助・空]・スグ[過・直]・スクスク・スクナシ[少]・スクム[竦]・スクメル[竦]。
次回は、ひきつづき「s-音英語の基本義」を取りあげる予定です。
おきんぼさん 吉田です。
返信削除お元気そうでなによりです。
コロナ禍で何かと大変ですが、ご自愛なさってくださいね。
また、お会いできればと思います。
ありがとう ございます。おかげさまで、なんとか 無事 満100才まで生きて まいりました。いまは、1日でも はやく「外出禁止」や「面会禁止]が 解除される ようにと いのる ばかりです。
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