2019年10月7日月曜日

大岩の不動尊像まいりなど


社会人大楽塾 9/2


アロマ・セラピー  9/18 


折り紙、洋ナシづくり  9/24 


大岩山の「冷そうめん」 9/27 


大岩山日石寺不動尊堂  9/27 


大岩山の六本滝  9/27  



琴のミニ・コンサート 9/2 8


音の会,A 10/



音の会, B  10/2  



社会人大楽塾
9月12日()。午後2時から、9fで開かれた「社会人大楽塾」に参加しました。この日歌ったり踊ったりした曲目は、「赤とんぼ」、「花笠音頭」、「高校3年生」など。わたし個人としては、とりわけ「花笠音頭」の印象がつよく・ふかくのこりました。あとで、ネットでしらべてみると、「山形県の民謡だが、もとは全国各地でうたわれたヂヅキ[土突]唄の一種」と解説されていることが分かり、なるほどと思いました。

アロマ・セラピー
9月18日()。午後2時から、9fでアロマ・セラピーをうけました。わたしのばあいは、左右の足の指さきが「突然シビレル・ヒキツル」心配があり、なんとかならないものかと、「ワラにもすがる」思いで、この「香油を使うマッサージ」をうけることにしました。
ベッドの上で、ウツブセになって寝ます。どのオイルの香りが好きか、きかれましたが、それはお任せにしました。やがて香油がぬられ、マッサージがはじまります。なんとなくよい香りが感じられ、気分が楽になります。シャバのなやみごとがスーッと消え去り、しばらくゴクラク世界で遊んでいる気分になりました。うっとり、夢うつつの状態のまま、40分にわたるアロマ・セラピーが終わりました。
ベッドからおりて、じぶんの足で2・3歩あるいてみます。ヒザから下、とりわけアシクビのあたりが、以前よりもすこし軽く動かせるようになった感じでした。もちろん、まだまだ安心はできませんが、一歩前進したことはたしかです。ただ、金沢からの出張なので、富山での希望者数がそろわないと実施できないようです。この次はいつになるか、楽しみにしています。

折り紙、洋ナシづくり
9月24日(火)。午後2時から9fで開かれたレクリエーションに参加。はじめに、「ゴボー先生」のビデオを見ながら。ゴボー体操をしました。そのあと、折り紙細工洋ナシづくりに挑戦しました。あらかじめ洋ナシに見立てて裁断されたイロガミ2枚をノリではりあわせ、てっぺんに軸をとりつけ、本体にタネをはりつければ、完成です。

太田英一さん来訪
9月26日()。正午まえ、太田英一さんが来訪。きょうも呉羽梨をサシイレしていただきました。太田さんがこられるのは、いつもこの時間帯。昼食の直前なので、わたしもゆっくりお話しする気もちになれません。太田さんは、自分の用件をのべたあと、サッサと帰ってゆきます。こちらから用件をもちだすと、「きょうは補聴器をつけていないので、うまく話が聞きとれない。その話は、つぎの機会に」といった調子です。
帰りぎわに、“HIROSHIGE”という本を1冊おいてゆかれました。江戸時代の浮世絵師歌川広重の作品を全世界にむけて紹介したもの。基本は英文ですが、仏文・独文も併記。内容は、広重の作品のうち「名所江戸百景(119)の「写真と解説」です(TASCHEN刊、A5判、584㌻)。ネットでしらべてみると、「もともと、太田記念美術館(渋谷区)で作成された画集(解説付き)が好評で、これをもとに数種類の画集“HIROSHIGE”が発行されている」とのこと。TASCHEN社からは、3判クラスの豪華本も発行されているようですが、太田さんから見せていただいたのは、その廉価版ということになります。A5判では、部屋にかざってながめるのには小さすぎると感じることがあるかもしれません。しかし、小型になったことで、それだけキラク・テガルにとりあつかうことができるのも事実です。それにつけても、最近の写真製版技術はミゴトだと感心させられました。

大岩山日石寺へおまいり
9月27()。朝から晴れ。8時半~。10時までに入浴をすませ、10時半から、長念寺住職志田常無さんに来ていただき、故信子月命日のお勤めをしていただきました。11時過ぎ、Mioriさんのクルマで外出。しばらくぶりで、一番町の加納耳鼻咽喉科医院へ。ここで耳・鼻の治療をすませ、「ツムラ麦門冬湯」(ノドの薬)30日分を処方していただきました。
 せっかくのよいお天気で、体調もわるくないので、おもいきって大岩山日石寺へおまいりすることにしました。秋のお彼岸もすぎたというのに、富山の市街地はまるで真夏の暑さです。それが、大岩山へたどりついたとたんに、スーッとすずしい感じになりました。
 まずは、ふもとの「金龍」で昼食。「冷そうめん」(オニギリ一個付)をいただきました。建物は現代風に改装されていますが、この「冷そうめん」を食べたとたんに、「大岩さんへ来たんだ」という感じにひたることができました。ついでに、「チマキはないかな」と思ってまわりを見わたしてみましたが、それは見つかりませんでした。
 腹ごしらえができたところで、2本のストックをたよりにできるだけ歩いてまわることにします。不動尊堂では、Mioriさんがクルマ椅子をかりてきて、のせてくれました。おかげさまで、不動尊堂や六本滝まで、ゆっくりおまいりしたり、見物したりできました。
 さきほど、「ふもとの金龍でも、すずしい感じ」といいましたが、山中ではたくさんの樹木がおいしげり、谷川や滝があるので、それだけ温度がさがります。スズシイをとおりこして、いつのまにか「神聖な世界」にひきこまれ、ひとりでに緊張してしまう感じです。 
大岩から帰る途中、立山町沢端墓まいりしました。先日のお彼岸で墓まいりができなかったことをおわびし、そのかわり今日大岩山へ行ってきたことを報告しました。信子も「大岩さんが大好き」でしたから、よろこんでもらえたと思います。
そのあと、砂町へ立ちより、金岡さんへ駐車場料金支払いなどの用事をすませ、丸の内のホームへ帰りついたのが16時半すぎ。至福の一日でした。

琴のミニ・コンサート
9月28日()。午後5fでホームの住人・見澤さんによる「琴のミニ・コンサート」が開かれました。曲目は、童謡や唱歌。「ふるさと・村まつり・虫の声・里の秋・赤とんぼ・もみじ・たきび・たぬきばやし」など。記録のため、スマホのカメラをむけましたが、あいにくシャッターが切れません。よく見ると、電源が10%台にまで落ちています。あわてて部屋にもどり、短時間充電。もういちど会場へもどって、どうにか1枚だけ写真をとりました。電源の残量については、いつも気をつけているつもりですが、大失敗でした。
コンサートの終了まぎわ、「703号室へ面会人」と知らされ、あわてて部屋へもどりました。立山町から来られた村崎さつ子さんと娘さんが待っておられ、ことしとれた新米に洋菓子をそえて持参されました。ありがたくちょうだいして、信子の写真のまえにかざりました。村崎家は、わたしの母の実家にあたります。さつ子さんのおじいさんの時代から4(大正・昭和・平成・令和)にわたって、お世話になりっぱなしの状態です。
さつ子さんは、「耳がとおくなって」といっておられましたが、まだまだご健在のように見えました。それよりなにより、お二人の来訪が昨日でなくてよかった。もし昨日だったら、せっかく来られても留守のため、お会いすることもできなかったはず。そう思って、昨日「大岩さん」へ行ってきたことを報告しました。ひょっとして、ホトケさまがわたしどもになにか暗示をあたえてくださったのかもしれません。ありがたいことです。

音の会
 10月2日()。午後2時から9fで開かれた「音の会」に参加。この日とりあげられた曲目は、「始まりの歌・ちいさい秋見つけた・とんぼのめがね・赤とんぼ・うさぎのダンス・高原列車は行く・炭坑節・七つの子」など。大判の歌詞カードを用意して掲示し、一字・一句ていねいに解説。参加したみなさんが「なつかしい歌」を思いだしているのをたしかめたうえで、歌の練習にはいります。ウマイ・ヘタは関係なし。メロディーを聞いて、楽しければ、それでよし。自分で歌ってみて、楽しければ、それこそ最高!
 また、出席者全員に風鈴・小太鼓などのミニ楽器がわたされ、みなさん自分の感覚にあわせて、リズムをとっていました。わたしも小太鼓を手にして、いろいろやってみましたが、なかなかうまくリズムにのれません。まわりの人たちはメイワクだったかと思いますが、自分かってに打ちつづけました。上手にはなれませんでしたが、すこしだけ気分が晴れてきたようです。
 それともう一つ、今回あらたに登場した小道具が、実物より大形のトンボ。現代的な美術工芸品ですが、手の指さきにのせると、上手に止まり、ホンモノのようにゆれてみせます。ながめているだけで、「赤とんぼ」の歌の世界に引きこまれる思いがしました。

p-音が表わす基本義日本語の系譜(8)
p-音の日本語
 前回まで、日漢英3言語にわたって、k-, m-, n-があらわす基本義をさぐり、じぶんなりにたどりついた結論を提案してきました。しかし、99才という年齢や最近の体調から考えて、これまでの議論の進め方では、体がもちません。これからさきは、できるだけテマ・ヒマのかからない方法で議論をすすめさせていただきます。
 具体的にいいますと、「言語観」など基本的な問題にかんしては、「象形言語説」を前提とし、その延長線上で議論を展開するということです。「かたよった視点からの一方的な議論にならないか」という心配もありますが、ぎゃくに論者が「ナニを問題としてとりあげ、ナニを提案しているのか、わかってもらいやすい」という効果も期待されます。

ハ行子音の発声過程
 日本語のハ行子音は、もともとk(g, ng, h)グループではなく、p(b, f, v)グループの子音だとされています。まず、そのp音が発声されるとき、発声器官がどんなハタラキをするかなど、観察しましょう。
  口の中にイキためる
  クチビルをとじて、イキの流れとめる
  クチビルをパッひらき、イキをハキだすフキだす破裂音p, bとなる。.
  このとき、もし上前歯で下クチビルカム姿のまま発声すれば、摩擦音f, vとなる。
このp-音が発声される過程で、発声器官などに「特定の感覚」(視聴覚・触覚など)が
生まれます。そして、この「特定の感覚」がそのまま「p-音があらわす意味」の根源だと、「象形言語説」では指摘しています。

p-音の擬声・擬態語
 ここで、さっそく「p-音発声時における発声器官の構造・機能」などの議論にはいりたいところですが、そのまえにいちど気分転換をかねて、これまでどおり「p-音の擬声・擬態語」の問題をとりあげることにします。
ハア ①笑う声。②応答の声。はい。
バア いないいないバア。
パア ①ジャンケン用語。ぐ・ちょき・パア。②調子が狂っている。③帳消し。ご破算。
ハイ ①あらたまって、または承諾の意を表して応答する語。②注意をうながす語。③馬を進ませる時の掛声。
ハハ 驚いた時やかしこまって応答する時に発することば。
ハハア 思い当たった時に発する語。なるほど。
ヒイヒイ ヒリヒリ痛むさま。
ピイピイ ①鳥・虫の鳴く声。②笛の音。③貧乏で生活に苦しいさま。
ヒヒ 鹿の鳴き声(上代語の用例あり)。
フウフウ ①唇をとがらせて息を吹きかける音。そのさま。②苦しい息づかいをするさま。ブウブウ ①吹奏楽器をならす音。自動車の警笛・放屁の音。②豚の鳴き声。小言や苦情を言い立てるさま。
フハ(フワフワ)*上代語にフハ「フハヤ」の用例があり、「フハ」は擬声語で、「ヤ」は接尾語と考えられる。「ナゴヤ・ニコヤ」などとおなじ構造。
ヘイ 応答の声。ハイ。  
ホウホウ[這這] ①這いながら。這うようにして。②あわてふためくさま。
 ほぼ、ごらんのとおりです。P-音以外の子音をもたない擬声・擬態語がこれだけ成立していることは、「p-音があらわす基本義」を追究するうえで貴重な資料を提供するものです。ただし、その作業は、「p-音タイプ品詞語」にかんする「p-音の基本義追究」と一括してすすめることにさせていただきます。

p-音タイプの単音節語
  上代語の段階で、アイウエオ5段にわたり、単音節語が成立しています。
ハ[羽]①はね。羽毛も翼も、昆虫のハネにもいう。②矢に付ける鳥のはね。矢羽根。
[] 葉。大きなものを祭器や食器として用いることもあった。*草や木の幹・枝のサキ[先]・ハシ[端]にハリダス[張出]ナリモノ。
[] 歯。*飲食する器官のハシ(先端)部分。また、ハ[葉・刃]の姿をもち、そのハタラキもする。
ハ[刃] 刃。ハモノ[刃物]の物を切る部分。*ハ[葉・歯]と同系のコトバ。→モロハ[諸刃]。
[] 端。ふち。
ハ(助)文中にあって、種々の連用文節に接する。a単文中にある場合、その事物を指定的にとりたて、またその語句を以下の叙述に対する主題として提示する。「ま白にぞ不尽の高嶺に雪ハ[波]ふりける」(万. 318b従属句中にある場合、ハの接する語句は指定的に取り立てられる。「かがなべて夜にハ[波]九夜日にハ[波]十日を」(記. 景行)
バ(助) ①動詞および助動詞の未然形に接して、順接の仮定条件を構成する。「置きてイ[行]ナバ[者]妹恋ひむかも」(万. 493
[] ①太陽。日光。②太陽の神格化として天照大神のこと。③ヒル[昼]。ヨ[夜]の対。④時間の単位としての日。1日。日限。甲類カナ。*太陽光線(熱線)が生物のハダにハリツキ、ヒリヒリ・ビリビリ・シビレを感じさせる、その主役。
[] こおり。甲類カナ。*ピンとハリ出す姿。⇔
[] ハタ〔機〕織りの道具。横糸を縦糸に通すために用いられる舟形の器具。甲類カナ。
[] 霊力。威力を有する超自然的な力。甲類カナ。
[] ひのき。甲類カナ。
[] 火。交替形にホがある。乙類カナ。①火。炎。②ともしび。灯火。
[] トイ[樋]。水を引くための管。木・竹などで、あるいは土を固めて作った。乙類カナ。
[] 穀物のぬかや塵などを、あおって取りさる道具。ミ[箕]の類。乙類カナ。
ビ(接尾語) あたり。ほとり。乙類カナ。【考】音韻の上から考えると、同じく乙類のミ
(廻)との関係がたどれそうであるが、熟合の近さからはむしろ甲類ヘ(辺)に接近しているようである。地名のカムナビ山を「神辺山」(万. 1761)と書いた例もある。
フ(縞・斑) シマ[縞]。地色を区切って平行に他の色がまじっていること。
①垣などの結び目。②フシ[節]の意か。【考】前項フとも、あるいは同源か。
フ[生]草木が生え茂ったり、物を産したりする場所、接尾語的に用いることが多い、
[]の東国語形。
フ[言](動四) イフ[]のイの脱落した形。
フ[乾・干](動上二) 水分がなくなる。干る。潮が引く。
フ[嚏](動上二) →ハナフ(クシャミする)。【考】のちには一段化して「ハナヒル・ヘヒル[放屁]」などとなる。なお、ミ[]で、もみがら や まめがら などをあおり除くことをいう上一段動詞ヒルも、古くは上二段であったことが知られ、語源的にもこのフと同源であったかと考えられる。
フ[経・綜](動下二)縦糸をかける。*ヒッツケル・フッツケル姿。
フ[経・歴](動下二)と気が過ぎる。経過する。【考】前項糸をヘル[]フとおそらく同源の語であろう。→キフ[来経]・フル[]
フ(接尾語) 動詞語尾。通常、四段に活用する。動作の継続または反復の意を表わす。「天地と共に久しくスマハム[]」「梅の花雪にしをれて移ロハムかも」     
ブ[蜂音] 擬声語。蜂の飛ぶときの羽音。
ブ(動上二)名詞または形容詞の語幹についてそのようにふるまう・そのような様子をするの意。またはそのような状態にあるの意の動詞を作る。名詞につく接尾語サブに近い。→あはれブ・荒ブ・ちはやブ・宮ブ・都ブ。
[] 家。第一音節の母音ィが脱落した形。甲類カナ。
[辺・方] ①あたり。~の方。②海の岸に近いあたり。②頃(時間)。甲類カナ。
[] へだてとして幾重にも重なった状態のものを数える助数詞。甲類カナ。
() 文中にあって体言に接し、進行する動作の目標の方向を示す。「難波ヘ向きて」「大和ヘやると」舟の先端の部分。舟首。へさき。トモ[]の対。甲類カナ。
[] 舟の先端の部分。舟首。へさき。トモ[]の対。乙類カナ。
[] 酒食を入れる容器。調理用の器具をさすこともある。乙類カナ。
[] かまど。【考】ヘツヒはかまどの神のこと。このヘ[]に助詞ツを介してヒ[]がせっしたものか。乙類カナ。
[] 民家。戸籍。家を数える助数詞としても用いる。乙類カナ。【考】イヘのヘは甲類であるから、直接には関係がない。カマドを意味するヘから出たもので、カマドをもって民の家を称することに基づくかともいう。
[] 上。上部。乙類カナ。【考】ウヘのウの脱落したもの、甲類のヘとは、意味も用法も似ているが甲乙の差を厳格に考えるならば、ヘ[辺](甲)はある場所の周辺を、ヘ[上](乙)はまさにそのところを示すという違いを認めることができるようである。
[] 部民。専門の職能をもって朝廷に奉仕する官人の団体たる伴に生活の資を貢納したり天皇家や-豪族に隷属する一般民衆。乙類カナ。【考】語源については諸説があるが、制度そのものが百済の部制から採られたものとして百済の帰化人たちが本国の習慣にならい、字音のヘを用い、「部」の字で表わしたものとする説が有力である。ブ[部]の転かとする説もある。部民制は大化改新以前の氏族社会にみられるもので、その最初の段階は五世紀ごろにあるとされる。
[] 帆。舟を進める道具の一。
[] 穂。稲・すすきなどの穂。長い花軸周囲に小さな花が群がり咲いているもの、またはそれの結実したもの。
[]  ホツ~・~ノホの形で、あるいは~ホという複合語として用いられて、目だつところ・ひいでたものの意をあらわす。【考】稲の穂や槍の穂などのホも、このホと同源。→ほつえ[]・岩ホ・火のほ。
[] []の交替形。→ほけ[]・ほなか[]・ほむら[]
[] 百。単独にはモモというが、何百というときにホという。→いほち[五百箇]・いほへ[五百重]浪・やほよろづ[八百万]神。
 ご覧のとおり、ハ行単音節動詞の音形は1個だけで、甲乙カナの区別もありません。ただし、具体的にしらべてみると、その意味用法はかなり複雑です。「象形言語説」では、「コトバにはかならず家族があり、その共通基本義を中心にして、動詞・名詞・形容詞などの品詞が成立している」と指摘しています。わたしはこれまで、まず動詞の基本義をしらべあげ、そのつながりをたよりに名詞・形容詞など単語家族関係を追究してきました。ところが、動詞フのばあいは、上代語の段階で、フ []・[乾・干]・[嚏]・[経・綜]・[経・歴]が成立しており、どの意味用法を基本義とすればよいか、判断にまよいました。
 しばらく時間をかけて考えたあげく、ごく常識的な結論にたどりつきました。コトバは、時代社会の中で発生し、時代とともに変化(進化)します。動詞フについても、まずはじめ [](イキをフキだす)やフ[嚏]が成立し、やがてフ[乾・干](空気をフキつけてホス)が成立。そして、ハタオリ機が発明された以後にようやくフ[経・綜]・[経・歴](経糸をならべたスキマにヒ[梭]フキこむ・通す)のような意味用法が生まれたと考えてみました。
 コトバの基本義を追究するばあい、品詞の区別や活用形の区別などにはおかまいなく、ひたすらその語音(音形)があらわすことのできる基本義をたずねる姿勢が必用かと思われます。「単語」の定義(条件)についても、日漢英3言語のあいだでクイチガイが見られるようです。
 たとえば英語の辞典でspringという単語の意味用法を見ると、つぎのように解説されています。
自動詞…①飛ぶ。はねる。急に動く。②急に起こる、現われる。③はじける、はね返る。④急に流れ出す、ぱっと光り出す。⑤生じる、起こる。⑥生える、芽を出す。
他動詞…①飛ばす、はねさせる。②バネ仕掛けではね返らせる。③裂く、割る。④バネを取り付ける。
名詞…飛ぶこと、はねること。②はね返り、反動。③弾力、弾性。④割れ、裂け目。⑤泉、わき水。⑥バネ、ゼンマイ、発条。⑦春。⑧初期の段階。
形容詞…①春の。②バネ仕掛けの。
 日本語だけ、英語だけを見ていたのでは、気がつきにくいのですが、ハル(pharuspringをよく見ると、いずれもp-r音を共有していることに気がつきます。そしてこのことが日本語ハルと英語springに「共通基本義」をもたらした経過が見えてくると思います。

p-音タイプの2音節語
 動詞
ハフ[這・延・匍匐](自四) ①のびる。植物のつるや根などが長くのびていくことを表わす。②這う。腹這いになって進む。【考】サキ[]ハフ(四段)・ニギ[]ハフ(四段)などのハフは意味が形式化して、ある事態が進展する意を表わす接尾語として用いられたものである。
ハフ[這・延](他下二)①延べひろげる。張り渡す。②思いをのばす。恋心を相手に及ぼす。→サキ[]ハフ(下二)・ニギ[]ハフ(下二)。

ハホ(動四)ハフ[延](四段)の連体形の東国語形。
名詞など
ハハ[母] 母。
ハヒ[灰] 灰。紫染の媒染など、染色のために重要なものであった。
ハヘ[蠅] 蠅。うるさいものを表わすのに用いることもある。ヘは乙類カナ。【考】ハヘ[蠅]の古形としてハハを推定する説がある。蛇の意で、ハブ・ヘミなどと同根か。
ホヘ[火瓮]未詳。一種の火で、ちらちらと燃えているものらしい。
ホホ[頬]ほお。*「ホ[]+ホ[]」の構造か。

<おわび>
 いささか舌足らずで、うまくまとめることができず、申しわけありません。日本語p-音が表わす基本義についてはここまでとし、漢語・英語p-音が表わす基本義との比較は次回にまわすことにいたします。