2020年5月23日土曜日

身のまわりを点検する


黑あめ・カリントなど


ワセリンからハンソーコウまで 


これまでの作品 


黑あめ・カリントなど
 外出禁止・面会禁止、それにボランテイアによる行事も中止。こうなると、たちまちブログにのせる画像がネタ切れになってしまいます。草の根を分けてもということで、ついにコーフク[幸福・口腹]のモト=「黑あめ・カリントご一同さま」の登場となりました。
 もちろん、オハギ・マンジュウ・大福もちなどもありますが、ナマモノは消費期間が限られ、また、おいしいからといって、毎日すきなだけ食べていると、こんどはオナカをこわすことが心配になってきます。
 その点、黑あめ・カリントなら、「黒糖」というナマエが安心感をもたらします。とりわけ、黑あめは昔からなじんできた味。ホームへ入居してからも、ずっと常備品です。毎日、一個以上しゃぶっています。
また、センベイ・ビスケット・クッキーなどは、歯でかるくカムだけで、サクサク・ザクザク音をたててサキくだけ、スッキリ・シックリ・サワヤカな感じをもたらします。

ワセリンからハンソーコウまで
口にいれて、体のサキワイ[]をもとめるオカシについてご紹介したついでに、終局的にはおなじ目的ながら、口からいれるクスリだけでなく、肌にぬったり、ハリつけたりするクスリなどをご紹介することにします。手元にある資料のうち、世間一般に通用していると思われるものをえらんで、スマホにおさめました。ツムラ大建中湯エキス顆粒・同麥門冬湯・強力ホステリンサン(座薬)・ベビーワセリン・ロコイドワセリン・オロナイン軟膏・バンソウ膏・湿布(消炎剤)など。
 このほかに、オルメサルタンOD錠・ナフトピジルOD錠・マグミット錠・メチコバール錠などが1f桝谷内科で処方され、毎日食後に服用しています。
大建中湯は便秘解消によいということで、毎日朝夕2回のむように処方していただいていますが、それでも毎朝スッキリ排便とはゆかないので、苦労しています。
 わたしは毎日、朝飯まえと夜寝るまえ、1時間ほどかけて、頭のテッペンから足の指さきまで、マッサージしたり、ワセリンをヌリこんだりしています。まずは、両手の指さきにワセリンをつけ、ヒャクエ[百会]のツボ(頭蓋骨のワレメ)を中心に、頭をかかえこみ、ワセリンを毛穴にスリこみます。そのあと、顔・首・胴体・腰、そして足の指さきまで、おなじ作業をくりかえします。ワセリンは、この作業の中核となるクスリ、つまり戦力です。

ベビー・ワセリンのデザイン
画像で紹介したベビー・ワセリンのデザインについて考えてみましょう。結論から先にいえば、観賞用には傑作とされるかもしれませんが、実用品としては失格というほかありません。乳飲み子をかかえた、若いお母さんたちにとっては、この容器のデザインをながめているだけでも、うっとり・楽しい気分になれるかもしれません。しかし、みじかい時間内で、効率よくワセリンを駆使したい人たちにとって、これほど使いがってのわるいデザインは、めったに見たことがありません。使用していないときは、クスリの取りだし口を下にして立てておくので、使用するには、いっぺんひっくりかえして、口をあけ、使用中はずっと寝かせたままにします。かるくて、クネクネ動きまわるので、左手で固定させてから、右手の指さきをつっこみ、適当な分量だけクスリをつまみとることにします。クスリをぬるのに、じゃまにならないよう、左手で衣類の一部をおさえたりすると、容器が固定されていないため、右手指さきにクスリをつけるのに、やたらテマ・ヒマがかかることもおこります。つまり、見た目のカッコよさに引かれて、使う人の便利さ(実用性)を無視したデザインということです。
  使いはじめてから、まだ数日しかたっておりませんが、 あまりの不便さにガマンできず、中味を使用ずみの容 器(円筒形)にうつしたあと、カザリモノとして棚にな らべておくことにしました。
【追記】
 看護師さんが部屋に来られたとき、この話をしました。すると、「いや、キャップは外す必要がありません」といわれました。なるほど、容器下部(キャップ)正面にクボミがあり、親指のツメをひっかけて押しさげると、音を立てて口がひらき、その真ん中に、直径。高さとも5ミリほどのチューブ()(キャップをつらぬいて)セットされています。これなら、キャップをはずさないでも、チューブを利用して、クスリをぬることができますね。また、なにかの都合で、手の指さきを使えない場合などは、この方がよいでしょう。ロクロク容器の性能をたしかめないまま、せっかくのデザインにケチをつけたようで、ごめんなさい。
 未練たらしく聞こえるかもしれませんが、個人的には、「指さきで患部にサワリ症状をたしかめながらクスリをヌリこむ」治療法につながるという点で、「チューブでクスリを患部にノセル」だけかもしれないデザインにくらべ、円筒形容器の方が信頼できそうだと感じています。

これまでの作品をご紹介
 画像のネタさがしのはて、こんどは、「これまでの作品のうち、主なものをまとめて紹介したら」ということになりました。このところ、「日漢英3言語の音韻比較」の執筆日程がつまっていて、「過去の作品の思い出」にひたっているヒマはない状況ですが、「画像のネタ切れ」だからとなれば、やむをえません。つぎの4作品をえらんで、ご紹介することにしました
『コトダマの世界Ⅰ』199i.社会評論社)…1970年代に「象形言語説」を提唱。「日漢英3言語の音韻比較作業」をすすめ、中国語学会全国大会などで発表。その経過をまとめて、東京の出版社から刊行した作品です。モジ(漢字)言語中心の言語観から、音声言語中心の言語観へのキリカエをよびかけてきましたが、学界ではほとんど無視されたままです。
『コトダマの世界Ⅱ』2017.桂書房)…1968年北日本新聞夕刊紙上で、「コシ[]とコシ[腰・輿]」をめぐって、広瀬誠氏と論争し、完敗。そのおかげで、上代語の甲類・乙類カナヅカイについてゼロから学習しなおし、象形言語説を補強することができました。そのときのイキサツが同氏著『越中萬葉と記紀の古伝承(1996.桂書房.あとがき)に記録されています。そのことのお礼をかねて、今回は東京ではなく、地元の桂書房からの刊行としました。それからもう一つ、この本の表紙に、洋画家佐藤芙美さんの作品を提供していただきました。本の内容には関心を示されない方でも、この本の表紙だけは大好評のようです。
『スミ・シム・SMITH1995.私家版)…サブ・タイトルに「スミノエ神SMELTING MAGICIAN、「古代日漢語音の中にインド・ヨーロッパ語根をさぐる」など、あやしげな文句をならべた作品ですが、1993年、ある学会でペンシルバニア大学・デユーク大学兼任教Victor . Mair(当時交換教授として京都大学に在籍中)さんとお会いする機会があり、「日本語と外国語(英語など)との音韻比較研究をやるつもりなら、ぜひこの辞典をつかうように」と助言をいただいたのが、A.H.D.(American Heritage Dictionary of the English Dictionary.(『アメリカの遺産・英語辞典、第3版』1993).とりわけ、巻末フロク『インド・ヨーロッパ語根とその派生語(一覧表。約40㌻)』がメアテ。さっそく紀伊国屋書店をとおして購入.以後今日まで、3言語音韻比較作業の客観性・合理性を保証する基礎資料となっています。Mairさんからいただいた手紙3も掲載。自分にとって、思い出のつまった、貴重な一冊です。
『現代日本語音図』2008.私家版)…むかし、日本語の音韻組織を説明する時は、いつも「五十音図」を使っていましたが、いまは使っていません。ナゼでしょうか?「五十音図」は、いわゆるヤマトコトバ音韻組織原理を解説するために作成された音図なので、漢語・カタカナ語など、たくさんの外来語をかかえこんだ現代日本語に適用しようとしても、説明しきれなくなったからです。
 外来語は、漢語・英語・モンゴル語・朝鮮語など、もともと、それぞれ独特の音韻感覚や組織原理をもった言語であり、それぞれの文化を代表する存在でもあります。それを、かたっぱしから取りこんだことで、現代日本語は世界規模で豊かな語彙体系をもつ言語となることができました。ただし、都合のよい点があれば、都合のわるい点もでてくるのは、あたりまえ。日本語(国語)学習の道シルベだった「五十音図」を使えなくなったことも、その一つです。
 「五十音図」が役に立たないとなれば、かわりに「役に立つ音図」を作ればよいだけの話です。現代日本語の実態を見きわめ、さらには100年先までを見すえ、日本語音韻組織の原理・原則を示す音図を作ること。日本語(国語)の音韻感覚習得に役立つだけでなく、外国語の習得にも役立つ音図、やがてまた、外国人が日本語習得のキッカケにもるような音図を作ること。それが、日本国文教当局のシゴト。現状は、文教当局の怠慢というほかありません。
 だれも手をあげる人がいないようなので、自分の感覚にしたがって作ってみたのが、ご覧の『現代日本語音図』(試案)です。カナ(音節モジ)でなく、ローマ字(音素モジ)で表記。コトバは、すべて音節・音素まで分解でき、それぞれの段階で、独特の基本義を持つ。コトバの意味とは、構成要素の音素が持つ意味の総合である。すべての音素を、母音¹グループ(a, e,i,o,u)、子音7グループ(k,m,n,p,s,t)8グループに分類して、「8音図」を設定。さらに、その順列組み合わせで(8×8)、「64音図」を設定。
 この「64音図」に、日本語・漢語・英語をのせることで、民族語のワクをこえて、共通する音韻感覚が作用していることも、実感していただけると思います。
 わたしは、これがベストだと考える線にあわせて、この試案をまとめましたが、いま見ると、すこしヨクバリすぎたかなという感じもあります。」
 たくさんの研究者が、それぞれの試案を持ちよって、議論をつくすことが大事。」文教当局が腰をすえてとりくめば、23年のうちにも、かなりいい線まで到達できると期待しています。要は、世界水準にあわせること。また、あくまで日本語の実態にそった、実用的な表記法をまもることですね。
 以上4点の作品にしぼって、ご紹介しました。初期、修習時代の作品の中には、財法・教育振興会から奨励金をいただいた「象形言語説による英語音韻論」などもありますが、編集技術や著作権の問題をふくめて不備な点がおおいので、自分の公式の作品集から除外することにしています。
 わたしは、自分がすきなテーマについて、自分の頭の中で議論をかわし、ナットクできるまでの経過を、すきかってなコトバヅカイで記録にのこす。それだけしかできません。その記録を、どなたかに読んでいただき、興味をもっていただければ「成功」。読者ゼロなら「失敗」。もともとトボシイ才能の持ち主ですから、失敗がつづくのはアタリマエ。成功したとしたら、それは「運がよかった」だけの話。そう考えることにしています。
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s-音漢語の基本義日本語の系譜(14回)
前回「s-s音日本語の基本義」をとりあげたのにつづいて、今回は「s-音漢語の基本義」をとりあげます。ただし、ざっと見たところ、s-子音ではじまる漢語音は比較的少数派のようです。さらにいえば、s-s音タイプの漢語は、上古漢語から現代漢語にいたるまで、1個も成立していません日本語ではs-s音グループ多数派だったこととくらべて、きわめて対照的です。
 とりあえず、まずはs-s音タイプの漢語を総ざらいしてみましょう。いつものとおり、『学研・漢和大字典』の解説でご紹介します。日本漢字音・漢字・上古音・現代音の順に表記。各項*印以下の注記は引用者の責任。なお、参考までに漢字の出典掲載㌻を付記。

dzieg
シ士291 dzieg>shi.①おとこ。②中堅の役人層。③知識人。④士・農・工・商の四階層の最上の層。⑤りっぱな男子。⑥兵隊。特に士官のこと。男の陰茎の突きたったさまを描いた象形モジで、オス[牡]の字の右がわにも含まれる。シ[]・ジ[]と同系。*ヤマトコトバの動詞[]の連用形シゴト[]などとの間に、対応関係が認定されるかもしれない。日本漢字音がシで、s-音語との関連もありそうなので紹介しましたが、まともなs-音語ではありませんので、今回は議論の対象からはずします。
ジ事33 dzieg>shi.①こと。用事。仕事。②できごと。③こととする。問題として、処理する。④つかえる。そばに立って、雑用をする。「中央の部分の計算用竹のクジ+手」の会意モジで、役人が竹棒を筒の中に立てるさまを示す。*今回はs-音ではじまる語だけを取りあげることにしていますが、dz-, ts-タイプの語は多数あります。やがて検討すべき語音だと思います。
sag
ソ素 967 sagsu. ①より糸にする前のもとの繊維。絹の原糸。②人工を加えたり、結合したりする前の、もととなるもの。③生地のまま。飾りけのないさま。//「垂の略体+糸」の会意モジで、一すじずつ離れて垂れた原糸。疎・索などと同系。*手でサワル・サク[裂・割]・サグル姿。
ソ酥1354 sagsu. ①牛や羊などの乳を煮つめて.その上層の部分でつくるバター分の多い食品。クリーム。②油けの多い、もろい菓子。//「酉+音符蘇の略体」の会意兼形声モジ。煮つめて、歯切れのよい半固体となった乳製品。*サクサク・ザクザクとサク・サケル姿。
sak987 saksuo. ①なわ。なわなう。細い繊維やひも。なわをよる。②規律を引きしめるつな。とり締まりの方法。③いとやひもを引き出す。④手づるによってさがしもとめる。⑤はなれる。バラバラに分解してしまう。//一本ずつはなれた細い繊維。転じて、細い引きづな。*基本的には、サク・ソグ姿。⇔サク[裂・割]・ソグ[]
sam
サム三 8 samsan. ①みっつ。②順番の三番目。③いくつも。④みたび。三回。⑤たびたび。//三本の横線で三を示した指事モジ。参・森などと同系。また、杉・衫・などの音符彡の原形で、いくつも並んで紋様を成すの意味を含む。*上下二本の横線のスキマに三本目の線がスミコム(シミコム・シノビコム・フサグ)姿。絶対数の「三」を意味するまえは、「漠然多数」を意味していた。→「三々五々」。
サム参192 samsan. ①みつ。みっつ。②まじわる。③仲間入りする。④二十八宿の一つ。からすき。オリオン座の三ツ星。//三つの玉のかんざしをきらめかせた女性の姿を描いた象形モジ。入りまじって、ちらちらする意を含む。三・森・杉などと同系。*前項サム[]とともに、日本語のサム[醒・寒・冷]・シム[染・占・示]・スム[住・澄]・セム[責・迫]・ソム[染・始]などに通じそうな語音。⇔サム[醒・寒・冷]・セム[責・迫]・ハサム[]
san
サン散 570 sansan. ちる。ちらす。ちりぢりに四方に分かれる。ばらまく。②金や財産をばらまく。③固まっていない粉状の薬。//竹の葉、麻の実・皮などをばらばらにハギとるさま。霰(あられ)・傘・山(分水嶺)と同系。また、砂・殺とも縁が深い。*ヤマトコトバの動詞サヌ(寝る)や名詞サネ[]などとの音韻対応関係が考えられます。たとえば、男と女が出会い、いっしょにネルことになったとします。[矢・箭]・サネ[核・実](男性器)を中心に、サヌ[]・ナク[哭・鳴]・ナム[]・ナス[為・成]ナル[成・為・鳴]・ニギル[]・ニグ[]・ヌク[抜・貫]・ヌグ[]・ヌル[]・ヌレル[]・ネル[寝・練]・ノク[]・ノル[乗・宣]など、心身とも「雲散霧消」の思いを体験することになるというわけです。⇔サヌ[]
sar
サ砂 908 sarsha. すな。ごく細かい岩石の粒。いさご小粒で、ざらざらとした物。「石+音符(小さい)の略体」の会意兼形声モジで、シャ[]と同系。*ヤマトコトバのスナ[]は、岩石が水の流れでスル・コスル作業の結果として生まれた微粒子。S-音の基本義は、日漢両言語にわたって共通していると考えられます。
sat
サツ殺 695 satsha. ①ころす。刃物でそいで切る。②けずりとる。③すさんださま。//「メ(刈りとる)+朮(もちあわ)+殳(動詞の記号)」のの会意モジで、もちあわの穂を刈りとり、その実をソギオトス[削落]ことを示す。サン[]と近い。*サツ殺sat語尾子音を、ハレツ音-tのかわりに鼻音-nとしたものがサン散san。ヤマトコトバのサヌ[]も、その同類かと思われます。
sek
ソク塞 283 sekse. ①ふさぐ。スキマをつめて、通れなくする。②ふさがる。「宀(やね)+工印四つ+両手」の形が原形。両手でカワラや土を持ち、屋根の下の穴をふさぐことを示す会意モジ。のち、土を加えてソク[]の字となる。*くわしくいえば、ソクsekse, フサグ、サイsegsai, とりで。ヤマトコトバでも、水の流れを「セキとめる」姿は、そのまま「フサグ」、「フセグ」姿をあらわしています。これも、s-音の基本義が、日漢両言語にわたって共通していることの例証とみてよいでしょう。⇔セク[堰・塞]
sem
サム杉 627 semshan. すぎ。スギ科の常緑高木。幹がまっすぐなので、建築用材として多く使用される。//「木+音符彡」の会意兼形声モジで、細かい針葉がたくさん並んだすぎの木。
sen
セン洗 731 senxi. ①あらう。すすぐ。足の指の間に水を通してあらう。②水で洗い去ったように、すっかりなくなる。//「水+音符先」の会意兼形声モジで、細いスキマに水を通すこと。*s-n音日本語でいえば、シナフ[]・シナム[]・シナメク・シナユ[]・シヌ[]・シネ[]・シノ[小竹・篠]・シノグ[]・シノビ[]・シノフ[]・シノブ[忍・隠]などに通じる語音。
ser
セイ西 1190 serxi. ①にし。日の沈む方角。②西洋の略。③仏のいる死後の世界。西方に向かって進む。//ザル・カゴを描いた象形モジで、セイ栖(ザル状の鳥の巣)にその原義が残る。ザルに水を入れると、さらさらと流れサル[]ことから、日の光や昼間の陽気が流れ去る方向、つまり西を意味することになった。セイ[](サラス)・セン[](形をのこして、中身がうつり去る)と同系。⇔ザル[]
サイ細 992 serxi. ①ほそい。②こまかい。//もと、小児の頭にある小さいスキマにある泉門を描いた象形モジ。細は、これを音符とし、シ[](ほそい)と合わせた会意兼形声モジで、小さく細かく分離していること。セン[先・洗]などと同系。*セル[迫・競]・スレル[]ことによって、サケ[]て、スキマができる姿。また、いっしょにくっついていたものが、ハナレ[離・放]サル[]姿。
siag
サ些 39 siagxie. 1いささか。少しであること。②楚の国の歌で、句末の間拍子に用いる助詞。//「此+二印(並べる)」の会意モジで、いくつかのものをざっと並べるの意を示す。煩瑣のと同系。*こまかくサク[裂・割]。・サグル[]姿。また、サグリ出したエモノ。さらにいえば、サガ[性・相]の姿。
siam
セン繊siamxan. ①ほそい・ちいさい。ほそぎぬ。②こまかい。ケチである。//繊は、「糸+音符(小さく切る)の会意兼形声モジ。楔(くさび)・孅(か弱い)と同系。*上古音siamの語尾子音-mは、やがて(三・参・杉・心と同様)-n音に変化した。
sied
シ四 256 siedsi. ①よつ。よっつ。②四番目。③四たび。四たびする。④よもに。四方から//古くは一線四本で示したが、のち四と書く「口+八印(分かれる)」の会意モジで、口から出た息がばらばらに分かれることをあらわす。死(生気が分散し去る)・西(昼間の陽気が分散し去る)と同系。
sieg
シ斯 580 siegsi. ①きる。さく。バラバラに切り離す。②これ。この。③すなわち。ここに。//「其(=箕。穀物のごみなどをよりわける四角いあみかご)+斧」の会意モジで、はものでミ[]をバラバラにさくことを示す。*s-k音の日漢両言語とも、「サク・シク・スク(スキマをあける)・スグ・セク・ソグなど」の基本義を共有していることの例証。
sieng
ショウ省 891 siengxing. ①みる。目を細くして、注意してみる。②かえりみる。③親の安否をよくみてたしかめる。//「目+少」の会意モジで、目を細めてこまごまと見ること。*目を細くして、わが身のサガ[性・相]をサグル[]姿。
siep
ジフ渋746 siepse. ①しぶい。なめらかでないさま。訓のシブは、漢語音シフの音訳からと思われる。②しぶる。なめらかに動かず、ぐずぐずする。③シブ。しぶい味。//もとの字形は、「下向きの足二つ、+上向きの足二つ」の会意モジで、足がうまく進まず、停止することを示す。ジフ[]は、これを音符とし、水にそえて、会意兼形声モジをつくり、簡略化した字形。*日本語のサッパリ・ザブリ・ザンブリ・シャブシャブ・ジャブジャブ・シャブル・シャベル・ショボイ・ションボリ・スパスパ・ズバズバ・ズバリなどに通じる語音。
sier
シ死 689 siersi, ①生物が命を失って、その機能やからだが分散する。②死刑にする。③死ぬこと。また、死んだ人。//死は、「歹(ほねの断片)+人」の会意モジで、人が死んで、骨きれに分解することをあらわす。細と同系。*スリ[]切れる姿。
シ私 929 siersi, ①わたくし。自分ひとりのこと。②自分ひとりの利益や考え。③ひとりだけの。また、かってな。④わたくしする。//シ「ム」は、じぶんだけのものを腕でかかえこむさま。私は「禾(作物)+音符ム」の会意兼形声モジで、収穫物を細分して、自分の分だけをかかえこむこと。四・細などと同系。*オオヤケ[]のために仕上げた仕事のハシ[]キレ、スリ[]キレ・シリ[]キレを、日当として持ち帰る姿。
siog
シ史205 siogshi。①ふひと。②ふみ。歴史書。「中(竹札を入れる筒)+手」の会意モジ。*地面や石・竹・木の表面をソグ[](キザミ[]ツケル)姿。
シ思464 siogsi. ①おもう。こまごまと考える。②物おもいに沈むさま。③おもい。もともと「シクシク・ヒクヒク動くもの」として、アタマ(頭脳)とココロ(心臓)をならべて描いた会意モ性と、かがんでその女性の上に乗った男性とが体をすりよせて成功するさまを描いた象形モジ。セックスには容色が関係することから、顔やすがた、いろどりなどの意となる。また、すり寄せる意を含む。則・即・塞などと同系。*日本語のシク[敷・布]・シクシク[益々]・シゲ[繁・茂]・シゲル[]・シコ[]・シコヅ[讃・讒]・シコメ[醜女]・シコルなどに通じると考えられる語音。
シ司204 siogsi. ①つかさどる。役目を担当する。②つかさ。役人。③役目の名。→司馬・司徒・司空。④役所。→布教司・按察司。//「人+口」の会意モジ。上部は、人の字の変形。下部の口は、穴のこと。小さい穴からノゾクことをあらわす。覗・伺・祠の原字。
ショウ小374 siogxiao. ①ちいさい。②ちいさいと思う。軽んじる。③ちいさい者。幼い者。④自分側のことを謙そんしていうことば。⑤すこしく。⑥しばらく。//中心の丨線の両わきに点々をつけ、棒を削ってちいさく細くそぐさまを描いた象形モジ。消・宵・肖・削などと同系。*日本語のチヒサク[]も、「チヒ[千梭]+サク[裂・割]の構造。⇔サク[]・ソグ[削]。
ショウ消 735 siogxiao. ①きえる。けす。小さく細る。②ついやす。すごす。//「水+音符肖」の会意兼形声モジで、水が細ること。*ソグ[削]姿。
サク削 146 siogXiao. ①けずる。刀で細くけずる。そぐ。②切りとる。竹や木に書いた誤字をけずる。//「刀+音符肖」の会意兼形声モジで、刀で細くけずること。小・肖の原義をあらわす。⇔ソグ[]
siok
ソク息 471 siokxi. ①いき。呼吸。②息をする。③いきづいて生存する。子孫をうむ。④やすむ。いこう。⑤やむ。やめる。休止する。とだえる。⑥むすこ。⑦利。//「自(はな)+心」の会意モジで、鼻からスース―息をすることを示す。狭い鼻孔をこすって、いきが出入りすること。すやすやと平静にいきづくことから、安息・生息などの意となる。また、子孫を産む→むすこの意ともなる。ソク[塞]と同系。*男性器が女性器をフサギ[塞]、タラシ[垂・足]、精子をタラシ(ソソギ)こみ、やがてムスコ[息子]をムス[産]姿。
シュク宿362 sioksu. ①やどる。泊まる。②ねぐらで休む。③一夜とどめて置く。④星座。北斗七星を軸として、天空を二十八宿にわける。⑤前世。前世からの。//原字は、四角いものが縮んで、しわのよったさま。また、囗印であらわされるふとんに、二人の人が縮んで寝るさまと考えてもよい。縮・粛などと同系。
シュク縮1015 sioksu. ①ちぢむ。ちぢめる。ちぢれる。ちぢこまる。小さく少なくなって、足りない。③したむ。酒袋をぎゅっとちぢめて、さけをしぼる。④引きしまっていて、ゆるみがない。//「糸+音符宿」の会意兼形声モジで、ヒモをぎゅっとしめて、ちぢめること。束・粛などと同系。
シュク粛 1050 sioksu. ①ぐっと引きしめる。②つつしむ。身を引きしめてかしこまる。③しずか。音ひとつしない。//「聿+淵の略体」の会意モジで、筆をもって深い淵のほとりに立ち、身のひきしまるさまを指す。

ソク束 628 siokshu. ①たばねる。つかねる。たてにそろえてしばる。細く縮めて、一つにまとめる。②動きがとれないようにしばる。心や行動の自由を制限する。③たば。ほそくしめてしばり、ひとまとめにしたもの。//「木+〇(たばねるひも)」の会意モジで、たき木を集めて、そのまん中にヒモをまるく回してたばねることを示す。速・捉・縮・竦な同系。
siuat
セツ雪 1445 siuatxue. ①ゆき。②ゆきがふる。③すすぐ。そそぐ。ヨゴレを去って、きれいにする。清める。//もと「雨+ススキの穂でつくったホウキ[]」の会意モジで、万物を掃き清めるゆき。刷・刹・涮と同系。*シ[]アテル[]・シワ[]シワにする姿。
suat
サツ刷 143 suatshua. ①する。さっとこする。②はく。清める。ごみをとり去る。③はけ。ブラシ。//刷の左半分は、もと「尸+巾()」の会意モジで、「人が布でしりの汚れをふきとる」意を示す。刷は、殺と同系で、雪とも縁が近い。
suen
サン酸 1355 suensuan. ①す。すっぱい液体。穀物や乳を発酵校さっせたり、果物の汁を取ったりしてつくる。筋骨をスマートにし、体をやわらげる作用があるとされた。②すい。酢のような味がする。すっぱい。③酸性をおびた水素化合物。水にとけると、水素イオンを生じ、リトマス試験紙を赤くする。*スル・スリヘル・スッパイ・シビレル感覚。
ソン孫 345 suensun. ①まご。子の子。②祖先の血筋を引く者。//「子+糸(小さく細い)」の会意モジで、小さい子どもを示す。のち、右側に系をそえるが、系もまた、つないだ糸のこと。子の系統をひくいちだんと小さい子、すなわち、まごのこと。遜(遠慮する)・損(へらす)などと同系。*日本語のスナ[]は、「suna」の構造ですが、「suna」の構造と解釈することもできます。岩石が水流のスル・コスル作用を受けた結果としてうまれた微粒子。つまり、スナ[]は、セキ[]が水流によるソン[]をうけたソン[](子孫)に当たると解釈してよいかと思われます。スナハチ[即・則]も「スナ[]ハチ[]」=「ソン[]suenされた鉢」=「クホメられたナリモノ」=「スナで作られた、植物容器」。Aと呼んでもBとよんでも、その実態はそっくり同じということでしょうか。
ソン損 546 suensun. ①そこなう。一部分を穴をあけたり、こわしたりする。また、勢力を小さくしたりする。くぼませる。②減らす。また、減る。③へりくだる。うしろに下がる。④利益を失うこと。④周易の六十四卦の一つ。中の欠けたさまを示す。員は、口のまるくあいたカナエ[]の姿。損は、「手+員」の会意モジで、まるい穴をあけて、くぼめること。くぼめて減らす、の意を持つ。*スリ[]切れる姿。前項で、日本語スナ[]と漢語ソン[]との音韻対応関係について指摘しましたが、スネ[臑・脛]・スネル[]とソン[損」との対応関係を考えるのもおもしろいと思います。
suk
ソク速 1316 suksu. ①はやい。すみやか。はやめる。②まねく。せきたてる。//「辵(足の動作)音符束」の会意兼形声モジで、間のびしないよう、間をつめていくこと。促・縮などと同系。*やがて日本語サク[裂・割]・スキ[鋤・好・隙・透・漉・空]・スク[鋤・空・好・酸・透・漉・梳]・スグ[直・過]・セク[堰・急・咳]・ソグ[]などに通じると考えられる語音。
hiuer
スイ水704 thiuershui. ①みず。外枠に従って形を変え、低い所に流れる性質をもつ液体の代表。火に対して水といい、湯に対して水(特にっ冷たい水)という。また、柔弱なものの代表。②川や湖のある場所。③河川の名につけることば。④水星の略。⑤五行の一つ。方角では北。色では黒。十干では壬と葵。五音では羽に当てる。⑥割増金や手当。//水の流れを描いた象形モジ。追(ルートについて進む)・遂(ルートに従ってどこまでも進む)と同系。その語尾が-nとなったのが。*t-系の語音ですが、舌の先をごくウスクソリかえった姿にして、ハグキにスミこませ、シミこませる感覚で発声した語音です。あるいは、スミ[]こむ姿、スヒ[]こむ姿とも、解釈できそうです。スル[]・ソル[]行為の結果として、スリ[]キレル・スリカワル・ソリ[]オトス・ソリ[]リカエルなどの現象があらわれます。なお、日本語ミズ[]の歴史カナヅカイはミヅ[御津・産津]で、「ウミダスもの」の意をあらわします。イズミ[]も、もとイヅミで、「イヅ[]+ミ[]」の構造。
tsag
ソ祖 923 tsagzu. ①世代をかさねた昔の人。また、先祖のみたまや。②じじ。祖父。③はじめ。その仕事や教えをはじめた人。//「示(祭壇)+音符且」の会意兼形声モジで、世代のかさなった先祖のこと。ジョ[](力を重ねる)・ソ[](ヒモをかさねて組みひもを編む)などと同系。*日本語のツク[]・ツム[]などと通じあう感覚の語音ですが、ts-音なので、今回はとりあげません。
tsiek
ソク即 187 tsiekji. ①つく。すぐそばにくっつく。②すなわち。すぐさま。人がすわって、食物を盛った食卓のそばにくっついたさまを示す会意モジ。ソク[則・側]と同系。*はじめ (dzien) に記したとおり、今回は、マサツ音s-ではじまる語だけを採集することにしています。

まとめ
 どうやらs-音漢語をひととおり採集することができたかと思います。漢語の音節タイプの中で、s-音タイプはやや少数派かなと推測していましたが、じっさい採集作業をすすめた結果、s-sタイプがゼロとまでは予想していませんでした。日本語s-s音語では、上代日本語の段階で、2音節動詞5個(サス[刺・指・閉]・シス[]・シヅ[]・スス[]・セス[])、名詞多数(ササ[笹・酒・シシ[肉・獣]・サシ[]・サス[交叉]・スシ[])・スス[]スズ[]・スソ[]・セゼ[瀬瀬]、形容詞(サシ[])、形状言(ササ)などが成立していることにくらべて、意外な感じがします。
  s-音漢語の構造については、上古漢語の段階で、s-k, s-m, s-n, s-p, s-r, s-tなどの各タイプが成立していることからみても、s音のくりかえしをきらったためとは考えられません。それでは、いったいどんな理由、どんな事情があったのでしょうか?
 身近なところで、日本語の場合はどうだったのか、考えてみましょう。縄文時代から弥生時代・古墳時代・大和朝廷時代にかけて、日本語の基本音形がかなりはげしく変化したことが指摘されています。たとえば、現代語でサムイ[]samuiというところを、縄文人はチャップイ・チャップイといっていたとする説があります。縄文時代は、原始時代に近く、水田農耕がまだはじまっていない時代=弓矢がもっとも先進的な利器・武器とされた時代。栽培農耕といえば、タロイモをうえるために、竹や木のツエ()を地面にツキ立てアナをあけるくらいの作業でした。それがスキ・クワによるイネ農耕がはじまったことで、日本列島改
 造計画がすすめられ、やがて大和朝廷成立の日をむかえます。その変化の中で、コトバの面でも、ツク・ツエなどのt-(ハレツ音)からスキ・スクなどのs-(マサツ音)への音韻変化がおこりました。 
  これとおなじような変化が、漢語の世界でもおこったことが、十分推察できます。これまt-音で表現してきた「感覚」ですが、t-音からs-音に切りかえたほうが、より正確に「感覚」を表現できると確信したことによる音韻変化です。s-sタイプの音節がゼロというのも、そこまでは、できなかった」ではなく、「そこまでしなくてもよかった」からとも考えられます。
  具体的に見て、どんな音形のs-音漢語が成立し、どんな基本義をあらわしているか、また、s-音日本語とくらべて、どんな対応関係を示しているといえるでしょうか?今回とりあげたs-音漢語それぞれの項で、気づいたことを指摘してきましたが、あらためて総ザラエしておきましょう。
音形と意味との対応関係
 s-音漢語の音節は、基本的に「s+母音+子音」という音形構造となっており、これら3要素がそれぞれもっている基本義を総合したものが、その音節の基本義を構成することになります。現代漢語の実態は、「索suo・砂sha・殺sha・西xi・細xi」などのように、尾子音(k, r, tなど)が脱落したものも多数ありますが、その意味用法の面では、上古漢語時代の基本義がそのまま残されています。時間ゃ場所が変化したからといって、そのコトバの意味内容が変化するようでは、脱線・転覆のような事故がおこり、コトバによる意思流通回路機能しなくなります。その点から考えても、「音形と意味との対応関係」をたしかめておくことが作業の基本だと思います。
民族のカベを越える同音語
 上古漢語s-k音と日本語s-k音とを並べて、音形と意味との対応関係を観察してみました。国籍や民族のカベを越えて同音・同義語がうまれていることが見えてきます。
sag 素・酥…サク[裂・割・咲・避・離・放]
sak 索…サク[裂・割・咲・避・離・放]・サガス[]・サクル[決・刳]・サグル[]・ソグ[]
sam三・参…サム[覚・醒・冷・寒・褪]・サマ[様・態・狭間]・サマス[覚・醒・冷]・サメル[覚・醒・冷]・ハサム[]・ハサミ[挟・鋏]
sar砂‣//ser西・細…サル[]・ザル[]
sek塞…セク[堰・急・咳]
ser 西・細・晒…サル[去・曝]・サラ[]・サラス[]・サラニ[]・サラサラ[更更]・サラリ。
sieg 斯…サク[裂・割]・シク[敷・布]・セク[]・ソグ[]・シキリニ[]・シキル[重・仕切]
siep渋…シブ[]・シフ[]・シフ(不具・廃疾になる)・シホ[潮・塩]・シブル[]・シビレル[]
siog史・思・司・小・肖・消…サク[裂・割]・スク[鋤・送・漉・次・助・空]・スグ[過・直]・ソク[退](離れる)・ソク[]・ソグ[]・チヒサク[]・スコシ[]・スキ[隙・透・好・隙・漉]・スキマ[隙間]・ソコ[底・其処]
siok 息・宿・縮・粛・束…スク[鋤・送・漉・次・助・空]・スクム[]
suen 酸・孫・損…スナ[砂・沙]・スナドル[]・スナハチ[即・則]・スナホ[素直]・スネ[]・スネル[]
suk 速…スク[鋤・送・次・助・空]・スグ[過・直]・スクスク・スクナシ[]・スクム[]・スクメル[]
 次回は、ひきつづき「s-音英語の基本義」を取りあげる予定です。