「時代別、国語大辞典、上代編」(奥付)三省堂、1967.
「学研・漢和大字典」藤堂明保編、学習研究社、1978.
「新華字典」商務印書館、1971.
「A. H. D. 」第3版、1993.
「インド・ヨーロッパ語の語根」(A. H. D.巻末フロク)
コトバ論議の裏方さん
ふだん会話している場合は、いちいちコトバの定義を考えて話すわけではありません。ふつうは、それでなんの不都合もありません。しかし場合によっては、どれだけ話しあっても、議論がうまくかみあわないことがあります。おんなじ用語を使いながら、年齢層がちがったり、立場がちがったりして、別々の解釈になっているような場合です。そんなときは、やはり国語辞典にどう解説されているかを基準にすべきでしょう。もちろん、辞典にある解説が絶対に正しいとはかぎりませんが、議論を交わす時の用語の定義が一致していないと、議論がかみあいません。まずは相互に共通理解できているコトバを使うことで、議論の成立・進行が保障されるわけです。そこで、辞典の解説がたよりにされる。つまり、辞典はコトバ論議の裏方さんということになります。
とりわけ、日本語と外国語の音韻を比較しようという場合は、どの辞典をたよりにすればよいか、大問題になります。
音韻面の解説が、辞典えらびの条件
コトバは、生きものです。時代の変化とともに変化し、また場所など環境の変化に応じて変化します。コトバの意味・用法も、そして発音も変化します。おなじ日本語でも、縄文時代・弥生時代から奈良時代・平安時代・江戸時代・現代へと変化。また現代でも、東北弁・関東弁・関西弁・九州弁など、それぞれ方言音に差がみられます。日本語と漢語と英語の音韻を比較するには、まず各言語の古代音をたしかめ、そのうえで意味・用法を比較するのが基本です。ぎゃくにいえば、それだけ語彙材料がそろった日本語辞典がないと、音韻比較の作業をはじめられないわけです。わたし自身は、各単語に音韻面からの解説がついている辞典をえらぶようにしています。
英語の辞典では、単語の語源や語(音)形変化などについて解説することが、まともな辞典であることの証明みたいになっています。その点で、日本語辞典はまだ国際的な水準に達していないように思われます。
単語家族まるごとで音韻比較
コトバは、孤独な存在ではなく、かならず親や兄弟があり、単語家族の中ではたらいています。したがって日漢英語音を比較する場合でも、単語を個別に比較するよりも、単語家族まるごと比較する方が、効率がよいわけです。この点からも、基本資料となる辞典が単語家族の視点で編集されていると、語彙体系の全体像がつかみやすく、好都合です。たよりになる辞典
日漢英の音韻比較作業をはじめて、40年ほどになります。もともと音韻論などとは門外漢でしたから、ずっと失敗の連続でした。たまたま、藤堂明保先生の「漢字語源辞典」(学燈社、1965)を手に入れ、「漢語を単語家族の連合集団としてとらえ、個々の漢字に単語家族の整理番号をつける」方式に感嘆。さっそく、その整理番号を手持ちの「新華字典」(1971年版)の漢字に付記したりしました。そのご1990年、水野信利さん(元富山東部中生徒。キリスト教大学院を経て学習研究者勤務)から「学研・漢和大字典」(藤堂明保編)を贈られ、漢語の音韻にかんしては、もっぱらこの辞典をたよりにしています。以下、わたしが平生利用させていただいている辞典の中から、いくつか紹介します。
①「時代別、国語大辞典、上代編」(奥付)三省堂、1967.
日本語の中核になっているヤマトコトバについて解説した辞典。語源・音韻変化・単語家族などにかんする解説も信頼できると思います。②「学研・漢和大字典」藤堂明保編、学習研究社、1978.
個々の漢字について、上古音から現代音までの変化を付記するとともに、音韻面から同系の語をあげるなど、単語家族の視点に立って編集された辞典。他言語との音韻比較に、安心して利用できます。
③「新華字典」商務印書館、1971.
中国では、小学生から大人まで、みんなが使っているといわれる辞典です。漢字の発音はローマ字で表記し、全体としてabc順に配列されています。
④「The American Heritage Dictionary of The English Language. Third Edition. 1993」
略称「A. H. D. 第3版」。1993年に、Ⅴ. H. Mair教授 からすすめられて、この辞典を利用するようになりました。
(ブログ「七ころび、八おき」8/30付「富山外專のころ②」参照)
⑤「インド・ヨーロッパ語の語根」(A. H. D.巻末フロク)
「インド・ヨーロッパ語の語根およびその派生語」について、40ページにわたり、一覧表式に解説。合理的・科学的で、しかも実用的。専門の学者・研究者はもちろん、日本の高校生でも利用できそうな、わかりやすい記述になっています。これと同じレベルまで、日本語や漢語の単語家族にかんする研究がすすめば、日漢英の音韻比較研究も世界レベルの普遍性・合理性・科学性・実用性をもつことができるだろうと思います。
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