2012年10月6日土曜日

ヒキ山と山ホコとヒゲコ[髭籠]



ヒガンバナ 10/2

「日文悠ニュース」第6
 
ヒガンバナ
ことしもいたち川べりのヒガンバナが咲きました。ただ例年なら彼岸の中日にはみごとに咲きそろっていたように思うのですが、ことしはすこしおくれたようです。北日本新聞が「いたち川沿いに咲き始めたヒガンバナ」の写真を報道したのは925日。「狂乱」ともいうべき、あの赤さは、この夏ついに見ることができませんでした。そのかわりというのか、102日になってもまだ、見る人の目を楽しませてくれます。
 
「庄川流域の食とことば」
毎日パソコンにむかっていますが、お年ごろですからブログの更新がはかどりません。その一方9月中は日本海文化悠学会の研修会など、いろいろ勉強になる機会があり、楽しませてもらいました。そのご報告をさせていただきます。
924日、富山市千代田町丸十で、「越のまほろば」公開講座が開かれ、「庄川流域の食とことば」と題して、富山大学教授中井精一さんが北陸地方の「雑煮」の実態について解説されました。社会言語学というのだそうですが、わたしには民俗学とのちがいもよくわかりません。ただ、雑煮の具材としてのガンモドキが地域によって「マルアゲ・マルヤマ・ヒリョーズ・へローズ・アブラゲ・アゲ・ツボー・アツアゲ・アブラアゲ・ガンモ・ガンモドキ」など、ちがった呼び名をもっていることに興味をひかれました。
 
富山で日本語学会の全国大会
中井先生のお話で、この112日から4日にかけて、富山大学五福キャンパス黒田講堂を主会場として日本語にかんする学会の全国大会が開催されることが分かりました。
112日、日本方言研究会第95回研究発表会を富山大学五福キャンパス黒田講堂で開催。午前の部は研究発表、午後の部は柳田國男没後50周年記念シンポジウム、「あいさつ表現の方言学
1134日、日本語学会2012年度秋季大会を富山大学五福キャンパス黒田講堂で開催。
二つの大会とも、会員だけでなく一般人も参加できるようです。全国組織をもつ学会が富山で大会を開くということは、めったにないチャンスです。
世話役の中井精一先生、たいへんご苦労さまです。大会のご成功をいのります。
 
「放生津八幡宮の曳山祭り」の話
928日、富山市茶屋町豊坂稲荷神社で、日本海文化悠学会の第5回研修会が開かれました。テーマは「放生津八幡宮の曳山祭り」、提案者は五十嵐顕房(豊坂稲荷神社宮司)さん。放生津の由来」「八幡信仰」「ヨリシロ・ヤシロ・神体」「ツキヤマ・ヒキヤマ・ヤマホコ・ヒゲコ」などについて、くわしく解説していただきました。
わたしははじめて聞く話がおおく、どれもみなおもしろかったのですが、さてそれではどんなことが分かったのかと考えてみると、あまりくわしすぎて混乱したままのような感じもします。「ヤマホコダシは、どこがどうちがうのか」、「ヒゲコは、どんな意味・役割をもっているか」など、もうすこしスッキリ整理できないかと考えました。
 
ヒキ・ヒゲとホコ
ヒキヤマ[曳山]をめぐって、いろいろなヨビナがあります。そのヨビナを語音別のグループに分け、それぞれの語音がもつ基本義から、そのヨビナ(ヤマ・ダシなど)の意味や役割などをさぐる方法もあると思います。
そこで、もういちど読みなおしてみると、ヒキ(曳山)とヒゲ(髭籠)とホコ[]3語はいずれもp-k音グループであり、同族語と考えられます。ヤマ(y-mダシ(d-sなどとは、あきらかに別のグループです。つまり、音声面からは無関係のコトバ。ただし、同一の事物を他の音声(子音)で表現することもしばしばおこることなので、ヒゲとダシが同義語となる可能性もあります。
 
折口信夫「髯籠の話」
ヒゲコ[髭籠]のことが気になって、ネットでしらべてみました。折口信夫「髯籠の話」紹介されていましたので、一部引用します(歴史カナヅカイのまま。下線は引用者)。
 
古代人の考へとしては、雲路を通ふ神には、必或部分まで太陽神の素質が含まれて居たのであるから、今日遺つて居る髯籠の形こそ、最大昔の形に近いものであるかと思ふ。木津の故老などがひげことは日の子の意で、日神ヒノカミの姿を写したものだと申し伝へて居るのは、民間語原説として軽々に看過する事が出来ぬ。其語原の当否はともかく、語原の説明を藉りて復活した前代生活の記憶には、大きな意味があるのかも知れぬ。
 
「日文悠ニュース」のこと
928日の研修会の席で、「日文悠ニュース」第6が配布されました。前回研修会(宮原利英氏提案「富山の金太郎伝説」)のあらまし、参加者の感想・意見、次回研修会の予告などがのっていました。「悠学会」が単なる同好会ではなく、「学会」の名にふさわしい研究会であるためには、やはりこうした「提案・討論の記録」(そして全会員への配布)が必要だと思います。
なお、この号の記事に「発音で、言葉の意味を再考する手法に興味を覚えた」とあり、そのご101日、事務局の五十嵐俊子さんから「(イズミの)ヰヒカ[井氷鹿]=井戸をヒク職人」説を会員に紹介したいというメールをいただきました。わたしがこの説を発表してから30年あまりになりますが、まだ公認されてはいません。積極的に反論された方もいません。悠学会の席で討論していただけるようになればと、ひそかに期待しています。
 


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